J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

「オレオレ詐欺」騙しの手口、最多は「会社で横領バレた! 補填のために...」(鷲尾香一)

   警察庁は2021年2月4日、2020年の特殊詐欺発生状況を発表した。詐欺としての認知件数、被害額とも大幅に減少しているものの、被害者のほとんどは高齢者であり、なかでも女性被害者が多いという構図に変化はない。

   詳しく見てみよう。

  • もしかしたら、騙されたかも……
    もしかしたら、騙されたかも……
  • もしかしたら、騙されたかも……

2020年の被害額277億8000万円

   2020年の特殊詐欺発生状況は、認知件数1万3526件と前年同期比3325件(19.7%)減少、被害額も277億8000万円と前年同期比38億円(12.0%)減った。直近10年間では、件数では2017年の1万8212件をピークに3年連続、被害金額(実質的な被害金額、以下同じ)は2014年の565億5000万円をピークに6年連続で減少した=図1参照

   特殊詐欺とは、「被害者に電話をかけるなどして対面することなく信頼させ、指定した預貯金口座への振り込みその他の方法により、不特定多数の者から現金などを騙し取る犯罪」をいう。

   警察庁では2020年から特殊詐欺を、

  • (1)オレオレ詐欺
  • (2)預貯金詐欺
  • (3)架空料金請求詐欺
  • (4)還付金詐欺
  • (5)融資保証金詐欺
  • (6)金融商品詐欺
  • (7)ギャンブル詐欺
  • (8)交際あっせん詐欺
  • (9)その他の特殊詐欺
  • (10)キャッシュカード詐欺盗

――の10類型に分類している。

   類型別の認知件数では、預貯金詐欺が4118件で最も多く、次いでキャッシュカード詐欺盗2833件、オレオレ詐欺2264件の順となっている=図2参照

   預貯金詐欺は従来オレオレ詐欺に含まれていた犯行形態を2020年1月から新たな手口として分類したもので、親族、警察官、銀行協会職員などを装い、「あなたの口座が犯罪に利用されており、キャッシュカードの交換手続きが必要である」などの名目で、キャッシュカード、クレジットカード、預貯金通帳などを騙し取る(脅し取る)もの。

   また、キャッシュカード詐欺盗は警察官や銀行協会、大手百貨店などの社員を装って被害者に電話をかけ、「キャッシュカードが不正に利用されている」などの名目により、キャッシュカードなどを準備させたうえで、隙を見るなどし、キャッシュカードなどを窃取するもの。

   類型別の被害総額では、架空料金請求詐欺が79億6000万円、次いでオレオレ詐欺67億2000万円、預貯金詐欺54億4000万円の順となっている=図3参照

女性被害者が多いのは「預貯金詐欺」

   オレオレ詐欺の手口としては、「会社でのトラブル・横領等の補填」といった損失補填金などを名目としたものが最も多く、全体の60.6%にのぼっている。架空料金請求詐欺では有料サイト利用料金等を名目としたものが52.0%と半数を超えている。また、還付金詐欺では、医療費の還付を名目としたものが61.3%と最も多い。

   被害者の属性では、特殊詐欺全体では女性73.6%、男性26.4%と圧倒的に女性被害者が多い。

   ただ、類型によっては男女比の濃淡がある。女性の被害者割合は預貯金詐欺で83.7%、オレオレ詐欺80.1%、キャッシュカード詐欺79.6%、還付金詐欺66.8%で高くなっている。

   一方、男性は交際斡旋詐欺で91.3%、ギャンブル詐欺70.4%、融資保証詐欺69.7%で高くなっており、架空料金請求詐欺では男性47.5%、女性52.5%、その他の特殊詐欺では男性58.1%、女性41.9%と拮抗している。

   被害者の年齢階層別では、80歳以上が46.4%と最も多く、次いで70~79歳が32.4%、60~69歳が6.8%となっている。65歳以上の高齢者の割合は85.7%を占める=図4参照

   特に、預貯金詐欺では98.4%、キャッシュカード詐欺では96.7%、オレオレ詐欺では94.2%、還付金詐欺では87.6%が65歳以上の高齢者となっており、このうち預貯金詐欺では84.0%が、オレオレ詐欺では79.7%が女性となっている。

   言い換えれば、65歳以上の女性は、特に預貯金詐欺とオレオレ詐欺の被害者になる可能性が高く、十分に注意が必要ということだ。また、類型別の年齢階層別に被害者を見ると、預貯金詐欺の被害者の51.0%が80~89歳の女性で、圧倒的に高い比率となっている。

   特殊詐欺全体では件数、被害金額とも減少傾向にあるものの、高齢者が被害者となる、もしくは高齢者を狙ったケースが圧倒的となっており、被害を防ぐ対策を一層充実させていく必要がありそうだ。(鷲尾香一)