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日経平均株価30年6か月ぶりの3万円超! バブル崩壊の「ピークを知る」アナリストたちが分析する

   2021年2月15日の日経平均株価の終値は、前週末(12日)比564円08銭円高の3万84円15銭となり、1990年8月のバブル経済期以来、約30年6か月ぶりの高値になった。

   この日、取引開始前に発表された2020年10~12月期の国内総生産(GDP、速報値)が市場予想を上回るなど、新型コロナウイルスの感染拡大で沈んだ経済の回復に期待が高まったことが相場を押し上げ、バブル崩壊後の最高値を更新したとみられる。

   「株価3万円」を専門家はどう見ているのか。主要メディアの報道などをみると――。

  • 株価の歴史的な高値が続いている
    株価の歴史的な高値が続いている
  • 株価の歴史的な高値が続いている

日本単独の株高ではない。もっと上昇する?

   時事通信(2月15日付)の「政策後退懸念くすぶる」によると、第一生命経済研究所の主任エコノミスト藤代宏一氏は、こう分析した。

「新型コロナウイルスの感染拡大が収束して経済は正常化に向かう、というのが市場ではメインシナリオになっている。一方で、経済正常化による金利上昇が株安のリスクとして挙げられることも多くなってきた。経済指標に改善が見られる中、政策面での支援が後退することへの警戒感が今後もくすぶりそうだ」
「米国では1月に失業率が6.3%まで低下した。労働市場が予想より早く改善し、米連邦準備制度理事会(FRB)が緩和政策からの出口を示唆するシグナルを出す可能性がある。金融引き締めによる金利上昇への懸念が今年後半にも強まるかもしれない。耐久消費財の動向も不透明要因だ。自動車や情報通信機器の販売は足元好調だが、需要の先食いもあると考えられる。日本株を主導している製造業で需要の先食いの反動が出てくる恐れがあり、注意深く見たい」

   ブルームバーグ(2月15日付)「日経平均30年半ぶり3万円回復、景気期待や業績改善 -輸出や金融主導」によると、JPモルガン・アセット・マネジメントの前川将吾グローバル・マーケット・ストラテジストは、

「新規の新型コロナ感染者が減る中でワクチンも日米で普及し、これから経済活動は正常化する。(そうした環境下で)米国はさらに財政刺激策に踏み込んでいくため、春から夏にかけて景気や企業業績の見通しが一段と強くなるなら買っておこうと考える投資家が増えている」

と指摘する。

   取引開始から広く買いが先行し、先物主導で日経平均株価はあっさり心理的節目の3万円台を上回った。大台を一時回復した後は伸び悩んだものの、米先物高も追い風となって午後には再び高値圏で強含んだ。

   この点について、東海東京調査センターの平川昇二チーフ・グローバル・ストラテジストは、こう述べた。

「米国株は景気・業績の拡大を織り込んでいる。イエレン財務長官の発言も、民主党は予定どおり1.9兆ドル規模の経済対策を通したいのだと受け止める」

   また、3万円の大台を回復した日本株について、日興アセットマネジメントのチーフ・グローバル・ストラテジスト、ジョン・ベイル氏はこう評価した。

「1980年代のバブルの記憶と、90年代の大部分を通じて持続した高いバリュエーションは薄れつつある。それは過去10年間の株式市場の姿が合理的なバリュエーションや利益の改善、配当の急増による株主還元の進展により、株式市場の本当の姿に近いということに気づいたからだ」

   取引開始前に公表されたGDP速報値が市場予想を上回ったことが高値に押し上げたが、日興アセットのベイル氏は、

「企業がリモートワーク機能の構築とハイテク製造能力の拡大に資金を費やしたため、民間設備投資は非常に強力だった。(1~3月期のGDPは市場予想で再びマイナス成長が見込まれているが)海外需要の強さなどを背景としてGDPには今後改善の余地が多くある」

とした。

バブル時は土地を買った。今は健全な企業を買う

   ロイター通信(2月15日付)の「日経平均3万円:今回は日本単独の株高でない、なお上値余地」によると、三菱UFJモルガンスタンレー証券のチーフ投資ストラテジスト、藤戸則弘氏は30年前との違いをこう説明した。

「30年前は日本単独のバブルだったのに対し、今回は世界全体の流動性相場であることが異なる」

として、次のように指摘する。

「(80年代バブルと現在の違いは)景気悪化による金融緩和策と財政出動という仕組みは同じだが、前回は円高不況克服という日本単独のものだったのに対して、今回はコロナ禍克服のために、日銀、FRB(米連邦準備理事会)、ECB(欧州中央銀行)と世界3極がいずれも超緩和策を打ち出し、各国が巨額の財政出動を行うなど、世界的な潮流となっていることが根本的な相違点だ。現在のPERはS&P500で23倍、日経平均は24倍にすぎない。コロナ禍に対してイノベーション対応した企業の業績は好調だ。それらを買っている訳で、単に土地持ち企業を買っていた過去とは異なり、今は理性的な動きと言える」

   そして、今後の日本株の見通しについて、

「業績好調な業種は来期もさらに収益が上向くだろう。加えて、ワクチンの接種が始まれば、今後はコロナ禍で低迷した企業の業績回復も見込まれる。さらなる上値余地があるのではないか」

とみている。

世界経済はどこへ向かうか
世界経済はどこへ向かうか

   また、岡三オンライン証券のチーフストラテジスト、伊藤嘉洋氏は「3万円」という水準について、

「かつてのバブル崩壊時の下げ局面とは逆方向の大台突破であり、上値追いの期待ができる。現在の株高の背景には新型コロナウイルス感染拡大の終息と景気回復への期待感があり、今後は企業業績の回復が焦点になる」

とし、今の株式市場の特徴をこう指摘する。

「日経平均株価は1990年から暴落したが、今は『いつか来た道』を逆にたどっている状況だ。過去に経験した水準なので手探りではなく、投資家の不安も多くはない。ただ、今後は企業業績との兼ね合いで、数字でしっかり景気回復を確認できるかどうかが、上値を追うポイントとなりそうだ」

   そして、今後の株式市場のリスクについて、

「以前のように借金までして株を買ったり、PER(株価収益率)が全体的に40~50倍まで上がってきたりしたら警戒しなければならない。また、以前は指数銘柄だけで日経平均が1万円も上がったこともあった。そうした指数寄与度の高い銘柄群の異様な急騰にも注意が必要だろう」

   ロイター通信の取材に、岡地証券の投資情報室長、森裕恭氏もこう指摘した。

「日本株市場は以前よりも健全になった。企業業績に従って株価が上昇しているだけで、バブル色は薄い。一方、ゲームストップ株の件をみる限り、米国株こそバブルの色彩を強めてきた様子だ。バブルの最大の特徴は、実態の裏付けが乏しいものが買われる、あるいは実態から極端に乖離(かいり)して買い進まれることだ。日本では80年代の土地持ち企業、ITバブルの情報通信株、米国でもかつてはエンロンのケースがあった。
ところが、現在の日本株はそうした事象が起きていない。というよりも、バブル当時の経験が活かされているためか、コンプライアンスが厳しくバブルが起きにくくなっている。相場の姿として健全だ。かつてのような、本質的な意味でのバブル相場は起きないとみている」

   2017年に「日経平均株価3万円への道」を掲げたマネックス証券は、いわゆるトランプ相場」に振り回されたこともあり、2018~19年前半までは波乱含みの展開が続いたとしながら、「それでもわれわれは(株価3万円の)旗を降ろさなかった」と胸を張った。

   チーフ・ストラテジストの広木隆氏は、こう述べている。

「ここから上は事実上の真空地帯。戻り待ちの売りなんか出てこない。新たな視界が開けた今、上昇ピッチが加速する可能性は低くない。持たざるリスク、FOMO(fear of missing out=取り残される恐怖)、そんなことを心配できる日が来るとは。感慨ひとしおだ」

(福田和郎)