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国内企業4割以上が「東京五輪開催を望む」 驚きの調査結果に「企業の道義はどこへ」「当然の判断だ」と賛否両論(1)

   いったい東京五輪・パラリンピックは開催できるのか――。IOC(国際オリンピック委員会)が判断時期としていた3月上旬が迫っているが、「女性差別発言」騒ぎで東京五輪のトップの座が空白という異常事態が続いている。

   そんななか、東京商工リサーチが、国内企業を対象に開催に賛成か反対かを聞いたアンケート調査を、2021年2月15日に発表した。当初の予定通りの開催を望む企業は7.7%しかいなかったが、「無観客」などの条件付も含めると開催に賛成する企業が44%に達した。

   開催に「反対派」は56%ということだが、この数字をどう見るか。ネットの意見は大きくわかれた。

  • 東京五輪は開けるのか?(東京五輪・パラリンピック組織委員会公式サイトより)
    東京五輪は開けるのか?(東京五輪・パラリンピック組織委員会公式サイトより)
  • 東京五輪は開けるのか?(東京五輪・パラリンピック組織委員会公式サイトより)

「開催反対」大企業より中小企業にやや多く

   東京商工リサーチの「東京五輪・パラリンピックに関するアンケート調査」は、2020年8月に発表した同じ内容の質問の調査に続く2回目。調査は21年2月1日~8日に、全国の企業にアンケートを実施。1万1432社から有効回答を得た。

   東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗前会長の「女性差別発言」が報道されたのは調査期間後半の2月5日で、辞任は調査終了後の12日だから、「森問題」のゴタゴタはあまり反映されていない可能性がある。

   調査によると、「予定通りの開催」を求める声は7.7%にとどまり、前回調査(2020年8月)の22.5%から14.8ポイント下落した。「観客席を間引いて開催」は19.3%(前回18.4%)、「無観客開催」は16.8%(同5.3%)で、条件付き開催と合わせても「今夏の開催」は43.9%(同46.3%)と半数に満たなかった。

   一方、「中止」(22.9%)と「開催延期」(33.0%)は合計56.0%(前回53.6%)で、前回調査を2.4ポイント上回り、今夏の開催に6割近くが反対する結果となった=図1参照

(図1)どれだけの企業が開催を望んでいるか?(東京商工リサーチ調べ)
(図1)どれだけの企業が開催を望んでいるか?(東京商工リサーチ調べ)

   企業の規模別にみると、大企業(資本金1億円以上)で、今夏の開催に否定的な見方(中止+開催延期)は52.9%、中小企業(資本金1億円未満、個人企業など)は56.5%となり、中小企業のほうに「開催反対論」の声が高かった。

大半の企業が「あきらめ」を織り込んでいる

   また、通常の開催ではなく、中止や延期、無観客での実施となった場合、会社の経営にどのような影響があるかを聞くと、最も多い答えは「影響はない」(71.1%)で7割を超えた。「悪い影響が多い」(26.6%)は全体の4分の1だった=図2参照

(図2)中止や延期、無観客で実施する場合、どんな影響が出るか?(東京商工リサーチ調べ)
(図2)中止や延期、無観客で実施する場合、どんな影響が出るか?(東京商工リサーチ調べ)

   「悪い影響が多い」と答えた会社にどのような影響が出るかを聞くと、最も多いのが「取引先の売り上げに直接的な影響があるため、自社にも間接的な影響がある」(68.5%)が7割近くに達した=図3参照

   つまり、直接的に自社に悪影響が出るのは3割以下にとどまり、全体からみると、経営に直撃を受ける企業は約8%ということになる。ただし、「その他」では、「心理的に消極的な行動になりやすい」や「株が下がり景気が冷え込む」「国内全体の失望感」など景況感の落ち込みを懸念する声が少なくなかった。

   東京商工リサーチには、こう分析する。

「『今夏の開催』と回答した企業は、『無観客開催』などの条件付きを含めても43.9%と半数に届かなかった。特に、『予定通り開催』は前回調査から14.8ポイントも下落し、7.7%にとどまった。一方、『無観客開催』は11.5ポイント増の16.8%に達した。すでに予定通りの五輪開催は無理とみている企業が多いことを示唆している。中止や延期などの影響については、71.1%が『影響がない』と回答している。期待とは裏腹に、中止や条件付き開催による経済的な恩恵については、大半の企業が『あきらめ』を織り込んでいるとみられる」
(図3)悪影響の内容は?(東京商工リサーチ調べ)
(図3)悪影響の内容は?(東京商工リサーチ調べ)

   今回の調査は「企業」の見方だが、「個人」はどう見ているのか。東京商工リサーチと似たような質問方法で、読売新聞が行った世論調査(2月8日発表)がある。それによると、「観客を入れて開催する」(8%)と「無観客で開催する」(28%)を合わせると、合計36%が開催に前向きだった。しかし、「再び延期する」(33%)と「中止する」(28%)を合わせると、今夏開催に反対派は合計61%だった。これは企業調査の56%より多い数字だ。

   一方、単純に開催に賛成か反対かを聞いた調査では、圧倒的に多くが「反対派」だ。ヤフーニュース「みんなの意見」で行ったアンケートでは2月16日11時30分現在(32万9950票)、「中止」(77.3%)と「再び延期」(13.8%)の合計で「開催に反対」が91.1%、「開催」が7.5%という結果になった。

(福田和郎)