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「聖火リレーを中止する」島根県知事の爆弾発言に共感の声!コロナ優先「高齢者が多く気を抜くと医療崩壊する」(1)

「聖火リレーの中止を検討する」
「そして五輪の開催に反対したい」

   島根県の丸山達也知事(50)の「爆弾発言」が全国に波紋を広げている。東京都や政府の新型コロナウイルスの対策が不十分ななか、東京五輪を開く危険性を訴えたのだ。

   聖火リレーは一つの県でも反対すると、成り立たなくなる。東京都や政府、五輪組織委は対応に大わらわだが、ネット上には、

「政府に忖度せず、言いづらいことをよく言ってくれた。本当に県民のことを思う素晴らしい知事だ。他の知事たちも後に続いてほしい」

という共感の声があふれている。

  • 丸山達也・島根県知事(公式サイトより)
    丸山達也・島根県知事(公式サイトより)
  • 丸山達也・島根県知事(公式サイトより)

「東京都はオリンピックを開く資格がない」

   主要メディアの報道を総合すると、島根県の丸山達也知事(50)が「聖火リレーの中止を検討する」と表明したのは2021年2月17日、県体協や県市長会、県町村会などのメンバーでつくる「聖火リレー島根県実行委員会」の席上だった。

   丸山達也知事は「中止」の理由として、時おり涙ぐみながら、

「東京都や政府が適切な新型コロナウイルス対策を行っていない。政府の認識は危機的だ。東京都は(五輪を)開く資格がない」

とまで痛烈に批判した。

   そして1か月をめどに、コロナ禍への必要な対応がなされない場合、正式に中止を決定するとした。

   丸山知事が特に問題にしたのが、新型コロナウイルスの感染「第3波」以降、東京都が感染経路を調べる「積極的疫学調査」を簡略・縮小化したことだ。これは1月22日、東京都が医療体制の逼迫化にともない、保健所の負担を減らすために、感染経路を追跡する「積極的疫学調査」の対象者を高齢者など重症化リスクのある感染者に絞ったことを指す。

   具体的には、調査対象を医療機関や高齢者施設の関係者に限定。それ以外は、誰が濃厚接触者に当たるかの判断は感染者本人や企業、学校などに任せることにした。それまでは感染者の家族までが「濃厚接触者」として検査していたのに対象外となったため、都内の新規感染者数は減少傾向になっている。このため、医療専門家の一部からは、

「東京五輪を前に、コロナが収束しつつあるという印象を与えるためでは」

という批判の声もあるほどだ。

   丸山知事はそのことを指摘し、東京都の感染者の数字が低く出ていることに不信感をあらわにした。また、厚生労働省も「積極的疫学調査」に積極的な姿勢を見せないと批判した。そのうえで、

「都内で適切な医療を受けられずに自宅で亡くなった人が増えている。(そんななかで)感染拡大を助長する世界的なイベントを開催することは理解できない。東京五輪開催に反対せざるを得ない。プレイベントである聖火リレーにも県として財源や人員を充てられない」

と述べた。

   また、

「こうした政府や東京都の対応不足により、感染者が少ない島根県の飲食店や宿泊業界も大打撃を受けている。それなのに緊急事態宣言地域ではないため国の支援が手薄になっているのは不公平だ」

と憤ったのだった。

   ちなみに、島根県が五輪関係にかける予算は約9000万円で、そのうち聖火リレーには雑踏警備や交通誘導など約7200万円を計上している。五輪関係のほとんどが聖火リレーの負担になるわけだ。

島根のドン・竹下亘氏「知事に注意したい」と凄む

   丸山知事は福岡県広川町出身で、1992年に自治省(現総務省)に入省。2013~15年に島根県庁に出向した。環境生活部長や政策企画局長を務めた。19年4月、保守分裂の知事選に無所属で出馬。自民党の中堅・若手県議の支持を受け、地元選出国会議員やベテラン県議の支援を受けた自民推薦候補を破って当選した。公選制度になって以来、島根県出身者以外の知事は初めてだ。

   丸山知事の発言に、東京都の小池百合子知事は17日、戸惑いの表情を見せた。報道陣の取材に、

「島根から何か問い合わせは入っていないようです。(丸山知事が都のコロナ対応を猛批判したことについて)都としてはしっかり対応しています。これから大会を盛り上げていく必要があり、47都道府県がしっかり連携しながらやっていくことが、これからの一歩につながります」

と述べ、聖火リレー実施の意義を強調した。

   一方、五輪組織委員会は「寝耳に水」だ。リレーは全国47都道府県を一筆書きで描く計画で、福島県を3月25日にスタート。島根県は山口県から引き継ぎ、5月15~16日に県内を走り、岡山県に引き渡す。各都道府県の実行委員会との共催事業なので地元の了解なしに進められず、一か所だけ跳ばす事態は想定していない。

聖火リレーのコース(東京五輪組織委公式サイトより)
聖火リレーのコース(東京五輪組織委公式サイトより)

   組織委員会の中村英正・開催統括は記者団に、

「(丸山知事の発言について)照会中だが、都道府県の実行委とは実施運営について調整を図ってきた。国や東京都とワンボイスになって、聖火リレーをこういう形でやっていくということをきちんと説明できれば、皆さんに歓迎されるのではないか」

と述べた。

   政府も不快感をあらわにした。そうでなくても、組織委の森喜朗前会長が女性差別発言で辞任し、混迷に拍車をかけている。47都道府県を回るはずの聖火リレーが一部でも中止になれば、一層のイメージダウンは必至だ。

   加藤勝信官房長官は17日の記者会見で、

「(聖火リレーについて)組織委で都道府県実行委員会と協議し、感染防止策を含めて検討が進められている。東京五輪は引き続き安全、安心な大会の開催に向けて準備を行っていきたい」

と、火消しに努めた。

   激怒したのは「島根県のドン」で、先の知事選で自分が推す候補が敗れて丸山知事に煮え湯を飲まされた自民党竹下派会長の竹下亘衆院議員(島根2区)だ。2月18日、首相官邸で菅義偉首相と面会後、記者団に、

「丸山知事の発言は不用意だ。注意しようと思っている」

と語った。

   この発言にはネット上で「いったい何様のつもり!」という怒りの声が殺到している。

(福田和郎)