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橋本聖子「新会長」のセクハラ過去に海外メディアは意外にあっさり 気になるのはフクシマの......(井津川倫子)

   女性蔑視発言で辞任を表明した東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長の後任が五輪相の橋本聖子氏だと報じられています。

   森前会長のトンデモ発言や後任選びのドタバタぶりが世界的に注目を集めていたこともあり、海外メディアは人事決定前から「橋本氏有力候補」のニュースを相次いで速報しました。案の定、橋本氏の「キス強要セクハラ過去」も世界中に広がってしまいましたが、今のところ海外メディアは「意外な」反応を示しています。

  • 東京五輪・パラリンピックは開催できるのか!?(写真は、新国立競技場)
    東京五輪・パラリンピックは開催できるのか!?(写真は、新国立競技場)
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海外メディアが報じた、あの「28歳男性アスリートを急襲!」事件

新会長に就いた橋本聖子五輪相(官邸サイトより)
新会長に就いた橋本聖子五輪相(官邸サイトより)

   「透明性」を強調していたわりには、相変わらず「密室」で物事が決められていく東京五輪組織委の会長人事。高齢のお爺さんたちが次々と舞台に登場するたびに、日本スポーツ界を取り巻く「闇」を見せつけられるような気分になってしまいます。

   そんな沈滞したイメージを払拭する狙いでしょうか。「森会長の後任に橋本聖子五輪相」のニュースは海外でも大きく取り上げられています。

   

   

Tokyo Olympics to Pick Female Minister as Chief
(東京五輪組織委員会は女性大臣を会長に選ぶ:米ブルームバーグ通信社)

Officials hope selection of Seiko Hashimoto will draw line under row over predecessor's sexist remarks
(関係者たちは橋本聖子氏が前任者の「女性蔑視発言」騒動に一線を画すことを期待している:英ガーディアン紙)

   海外の報道は、橋本聖子氏の名前よりも「女性」「56歳」「元オリンピック選手」を強調しています。森前会長の「女性蔑視発言」とそれをめぐる関係者のドタバタぶりが日本社会の女性軽視ぶりをあぶり出していただけに、橋本氏の手腕よりも「女性」「若い」「元スポーツ選手」といった「プロフィール」が重要なのでしょうか。

   橋本氏といえば、2014年ソチ五輪の閉会式後の選手村で高橋大輔選手にキスを強要したスキャンダルが有名です。案の定、海外メディアは過去の「キス強要セクハラ」も紹介。なかには「橋本氏が男性アスリートを急襲した!」と、おどろおどろしく報じる記事もありました。

Ms Hashimoto is no stranger to controversy herself. In 2014, she faced a sexual harassment scandal
(橋本氏自身、騒動と無縁ではない。2014年にセクハラスキャンダルに見舞われている:AFP通信)

Hashimoto "pounced" on the athlete, then 28, which led to allegations of sexual harassment.
(橋本氏は、当時28歳のアスリートに「襲いかかり」、セクハラ騒動になった:スポーツメディアInside the games)

   「pounce on」「獲物に襲いかかる」「急襲する」という意味ですが、獲物を探していた橋本氏が無理やり高橋選手に襲いかかったような、何ともスキャンダラスな表現です。忘れられていた過去がほじくり返されて、しかも世界中に広がってしまった......。

   この先も「文春砲」が待ち構えているでしょうし、6人のお子さんの母親でもある橋本氏にとって、今回の会長職への就任は「貧乏くじ」になりそうな雰囲気が漂っています。

東京五輪に暗雲! 海外が注目するのは「Shimane」

   「女性蔑視発言の次は本物のセクハラか!」と話題満載の組織委員会の会長人事ですが、意外なことに、海外メディアはあまり「セクハラ事件」を問題視していないようです。橋本氏の過去のトラブルを報じつつも、東京五輪開催に向けた「課題」は他にあると指摘するメディアが目立ちます。

   米CNNテレビは、先日の宮城・福島両県で最大震度6強を観測した地震に触れ、「東京五輪が新たな苦境に陥った」と報じています。

An earthquake at the Olympic torch relay start point is just the beleaguered Tokyo 2020 Games' latest crisis
(五輪聖火リレーのスタート地点で起きた地震で、東京五輪は新たな危機に陥った)

   驚いたのは、島根県の丸山達也知事が、政府や東京都の新型コロナウイルス対策が不十分として、県内で行われる聖火リレーについて中止の可能性を示唆した発言を海外メディアが大きく取り上げたことです。

Shimane Governor threatens to cancel Tokyo 2020 Torch Relay visit over COVID-19 cases
(島根県の知事が、新型コロナ対策を理由に東京五輪聖火リレーをキャンセルすると脅している:スポーツ専門メディア)

   丸山知事は「脅す」意図で発言したわけではなさそうですし、「中止の可能性」に触れただけですが、五輪関係者は「脅威」だと捉えているのでしょうか?

   地震に代表される「自然災害」、なかなか収束のメドがつかない「新型コロナウイルスの感染拡大」など、東京五輪をめぐっては難しい「課題」が山積しています。土壇場に発生した「まさかの会長辞任騒動」のせいで、人々の「五輪離れ」がさらに進むなか、橋本氏の「過去のセクハラ騒動」など蒸し返している場合じゃない、他にやることがヤマほどあるだろう、というのが「国際的な常識」のようです。

   それでは、「今週のニュースな英語」は、「pounce」を使った表現をご紹介しましょう。物理的に「襲いかかる」という意味の他に、「ことばで責め立てる」「揚げ足を取る」といった慣用句もあるようです。

The dog pounced on her
(犬が彼女に襲いかかった)

He always pounces on someone's remarks
(彼はいつも人の意見を責め立てる)

Don't pounce on someone's slip of the tongue
(人の揚げ足を取るな)

   それにしても、次から次へと「襲いかかる」災難。麻生太郎財務相が「呪われた東京五輪」と発言して批判を浴びたこともありましたが、新会長にとって前途が多難であることだけは間違いないようです。(井津川倫子)