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ワークマン株が5%安 既存店売上高が3年5か月ぶりに前年割れを嫌気

   作業服チェーン最大手、ワークマンの株価が2021年3月2日、一時前日終値比5.0%(400円)安の7540円まで急落し、約10か月ぶりの安値をつけた。

   前日に発表した2月の既存店売上高が3年5か月ぶりに前年同月を下回ったことで成長の鈍化を懸念した売りが集まった。中長期的に成長を続けるとの見方は根強いが、一本調子の業績拡大がやや一服する可能性もある。

  • ワークマン株、好調だったが……(写真はイメージ)
    ワークマン株、好調だったが……(写真はイメージ)
  • ワークマン株、好調だったが……(写真はイメージ)

コロナ禍でも売り上げアップの「勝ち組銘柄」

   プロ向けの作業服から一般向けのスポーツ衣料などに守備範囲が広がっているワークマンは、コロナ禍にあってニトリや子供服の西松屋チェーンなどとともに「勝ち組銘柄」の一つとされてきた。

   日本全国にコロナ禍が直撃した2020年4月の既存店売上高は、前年同月比5.7%増。続く5月は19.4%増と驚異的な成績を収めていた。建設現場や工場が止まって作業服の売り上げが落ちても一般向け衣料の増加で補うという事態が起きていたためだ。

   当時は百貨店やショッピングモールの多くが休業するなか、郊外路面店の多いワークマンが営業を続けていたため、お客が流れてきたとされている。

   その後も快進撃を続け、既存店売上高はプラスを維持し続けた。2020年4~12月期単独決算は、純利益が前年同期比22.9%増の133億円と10期連続で最高益を更新。売上高にあたる営業総収入は16.1%増の831億円だった。

   そして年が明け、2月になって前年割れした。2月というと、前年がうるう年だったため営業日が1日少ないという「ハンディ」があった。比較的暖かい日が多く冬季の売り上げ比率が高い防寒衣料やウインドブレーカーなどが低調だったことも響いたとはいうが、いずれにせよ、うるう年のハンディだけではマイナス分を十分には説明できないとみた株式市場が敏感に反応し、急落したのだった。

店舗拡大と多様化 「#ワークマン女子」が好調

   ここでワークマンについて、おさらいしておこう。1980年に群馬県伊勢崎市に「職人の店ワークマン」1号店が誕生、1982年に株式会社「ワークマン」を設立。現場作業員の勤務時間に合わせて午前7時開店とする営業時間設定など顧客サイドに立った店舗運営で知られる。

   機能性が高くても低価格なプライベートブランド(PB)商品の開発に注力して支持を広げた。PBは顧客層を一般に拡大する原動力になるとともに利益率を高めることにも貢献した。2020年4~12月期においてPB商品は1539品目にのぼり、全店売上高の59.6%を占めた。

   2020年11月に宮崎県に出店し、全47都道府県での展開を達成。2020年末の店舗数は902。2018年に新業態としてアウトドアやスポーツ向け衣料が中心の「ワークマンプラス」を開店。店舗の改装転換を進めた結果、2020年末の902店のうち「ワークマンプラス」は269店にまで増えている。さらなる新業態として女性向けウエアの「♯ワークマン女子」を2020年10月、横浜市に開店している。

   大和証券が2月12日のリポートで「来期以降、『♯ワークマン女子』」の動向に注目」と記すなど新ジャンルでの成長に期待する見方は広がっている。

   ただ、従来からの店に一般客が増えることで店舗や駐車場が混雑し、「プロ」が敬遠する可能性も指摘されている。

   コロナの影響でアウトドア衣料が伸びることが予想されるなかで起きた2月の前年割れは、果たしてどの程度「異変」を示すものか。当面、株式市場では投資家の強気と弱気が交錯する展開となりそうだ。(ジャーナリスト 済田経夫)