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西武ライオンズ180億円投じたメットライフドーム竣工 後藤オーナーが「ボールパーク」宣言!

   プロ野球パ・リーグの埼玉西武ライオンズは、本拠地メットライフドーム(埼玉県所沢市)で約3年間にわたった改修工事を終え、2021年のシーズン開幕を控えた3月8日に竣工式を行った。後藤高志オーナーや辻発彦監督らが出席。後藤オーナーは、スタジアムの「ボールパーク」化を宣言した。

   プロ野球界では近年、野球場の試合観戦を中心に多角的な楽しみ方ができる施設に変えるボールパークがトレンド。西武ライオンズでは球団40周年記念事業として取り組み、ドームと近隣の施設を含め、新たなエリアに生まれ変わろうとしている。

   今季のメットライフドームは、ICT(情報通信技術)を活用して「スマートスタジアム」化を推進。「新しい観戦体験」を提供したいという。

  • 新メットライフドーム元年に日本一を目指す!(竣工式に出席した、後藤高志オーナー=右=)と辻発彦監督)
    新メットライフドーム元年に日本一を目指す!(竣工式に出席した、後藤高志オーナー=右=)と辻発彦監督)
  • 新メットライフドーム元年に日本一を目指す!(竣工式に出席した、後藤高志オーナー=右=)と辻発彦監督)

外野芝生席を座席に、グループ席もバージョンアップ

   メットライフドームの改修は、ネット裏のグループ席をバージョンアップ。2020年の「ネット裏スペシャルシート」が、L字型4人掛けシートとテーブルを備えたボックスタイプの「ネット裏テーブル4」に生まれ変わった。また、ネット裏席の上段には「パーティーテラス」を新設。6~8人用の「屋外スイートルーム」のコンセプトで設計されたもので、ゆったりと観戦を楽しめる。

   外野席は、スタジアムができた1979年以来ファンに親しまれていた芝生席を座席付きに変更。シートは折りたたみ式でクッションを採用。足元も広く応援で立ったり座ったりするファンに配慮した。

   また、カップホルダーは通路に面したシートにも足元に備える気配りを示した。飲料カップをホルダーに預けフラグを思い切り振って応援できるのはファンにとってはうれしい変化に違いない。内野席には投球練習をするリリーフピッチャーを間近にみられる「ブルペンかぶりつきシート」を新設。選手との距離を縮めプレーをより身近に感じられるようにしている。

ネット裏上段に新設された「パーティーテラス」
ネット裏上段に新設された「パーティーテラス」

チーム育成も地域との連携も「強化する」

   観客席のシートバリエーションを多彩にしてさまざまな楽しみ方をできるようにしたほか、飲食エリアを充実させ、子ども用のミニ遊園地を建設。ドーム前広場を刷新し、西武球場前駅前にメーンゲートを設置。その傍らで咆哮する全長約7メートルの白い巨大なライオンのオブジェ「SPIRIT of KING」が、ボールパークの誕生を印象づける。

全長約7メートルのライオンのオブジェ「SPIRIT of KING」
全長約7メートルのライオンのオブジェ「SPIRIT of KING」

   改修工事は「チーム育成の強化」も目的。トレーニングセンター(室内練習場)、若獅子寮(若手選手寮)、二軍用のCAR3219(カーミニーク)フィールド(第2球場)などの建て替えを含め、総額180億円が投じられた。米大リーグではマイナーは別組織であり、NPBでも一軍と二軍が共に練習する施設は珍しいという。

   後藤オーナーは「だれもがエンジョイできる球場ができた。小さいお子さんは観戦以外でも楽しめる。遊具は試合のない日にも使えるように考えている」と、でき栄えに満足した様子。「性別、年代を問わずあらゆる世代の方にプロ野球やコンサートなど、あらゆるイベントを楽しんでいただける」と胸を張った。

   また、辻発彦監督は「昨年はリーグ3連覇を逃し悔しい思いをした。新メットライフドーム元年に日本一を目指したい」と宣言。3月26日の公式戦開幕日は新球場にオリックスを迎え撃つ。

   西武ライオンズがボールパーク化を推し進める、もう一つの理由に球場周辺地域の活性化がある。少子高齢化が進むなか、1か所でさまざまなレジャーを楽しめるようにすれば、集客率を高めることができる。

   この春に完成する「西武園ゆうえんち」のバリューアップ、2020年代半ばに予定されている所沢駅周辺の再開発と連携した、相乗効果を狙っている。西武ホールディングス社長であり、西武鉄道会長でもある後藤オーナーは、

「所沢市が東京のベッドタウンから、生活する、学ぶ、働くという、リビングタウンに大きく変貌することを期待している」

と、声を強めた。

日本ハムは新球場建設中

   プロ野球界では、米大リーグにならってスタジアムのボールパーク化の動きを強めている。

   横浜DeNAベイスターズが進めているのは「コミュニティボールパーク」化構想だ。2016年に友好的TOBで本拠地、横浜スタジアムを子会社化してから本格化した。

   両翼外野席の後方にウイング席を増設しキャパシティを上げながら、グループ席を設けてシートバリエーションを増やしている。また、グラウンドを開放してだれでも無料でキャッチボールができるイベントなども行っている。

   北海道日本ハムファイターズでは、本拠地となる新球場を核とするボールパーク建設計画が進行中。札幌市の東側に隣接する北広島市に2023年開業予定の「エスコンフィールドHOKKAIDO」。開閉式のドーム球場で、周囲には商業施設やホテル、レストランや温浴施設などが設けられ、球場を中心とした一大レジャー施設の趣だ。

   ヤクルトスワローズの本拠地、神宮球場も、東京オリンピック・パラリンピックを契機にした明治神宮外苑の再開発で生まれ変わる計画がある。

   福岡ソフトバンクホークスの福岡PayPayドームは、2019年の福岡移転30周年記念事業として大規模なリニューアル工事を実施。世界最大の大きさを誇る大型映像装置のパーツを入れ替え、場内スピーカーを一新し、最先端のビジュアル効果と音響を演出するエンターテインメント空間を実現している。

   読売巨人軍と親会社の読売新聞社、東京ドームは2020年7月、新型コロナウイルス対策のほか大型ビジョンの増設など約100億円をかけた大改修を発表した。ビジョンは2023年の開幕に向け工期を2回に分けて面積を約3.6倍に拡大。国内最大の大きさになるという。

   東京ドームは開場から30年以上を経過しており施設の老朽化が取り沙汰されている。2021年1月には三井不動産がTOBにより子会社化。読売新聞社とともに施設の向上を目指すとみられる。東京ドームはスタジアム周辺でホテルや遊園地、商業施設を運営しており、ボールパーク化にはふさわしい施設がそろっている。