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「Olympig」演出で辞任!まだまだ出てくる? 「五輪内部告発」に橋本新会長は戦々恐々(井津川倫子)

   開催まであと4か月ちょっととなった東京オリンピック・パラリンピックに新たな騒動が勃発です。開閉開式の演出を統括するクリエイティブディレクターの佐々木宏氏が、タレントの渡辺直美さんを「Olympig(オリンピッグ・豚)」として演出する提案をしていたことが報じられ、辞意を表明しました。

   仲間内のLINEメッセージが暴露された形のこのスクープ。好感度抜群のタレントを巻き込んでいるだけに、衝撃度は森喜朗元会長の「女性蔑視発言」を超えるかもしれません。

   それにしても、あきれるほどトラブル続きの東京オリンピック・パラリンピックですが、麻生太郎財務相の「呪われたオリンピック」発言を「放言」だと笑えなくなってきました。

  • 相次ぐ辞任騒動で、橋本聖子会長は戦々恐々
    相次ぐ辞任騒動で、橋本聖子会長は戦々恐々
  • 相次ぐ辞任騒動で、橋本聖子会長は戦々恐々

世界が嘲笑! 日本を代表するクリエイターが......

   またもや痛烈な「文春砲」が炸裂です! ネットでこのスクープが話題になると、週刊誌発売前にも関わらず、海外メディアが相次いで速報しました。

'Can't be taken back': Fresh Tokyo blow as ceremonies chief resigns over derogatory 'pig' idea
(「取り返しがつかないこと」演出統括が軽蔑的な「豚」企画をめぐり辞任して東京五輪に新たな打撃:米Foxニュース)
derogatory:軽蔑的な、見下す、侮蔑するような

Tokyo Games creative head resigns over 'Olympig' remark
(東京五輪のクリエイティブ統括が「オリンピッグ」発言で辞任する:ロイター通信)

   渡辺直美さんにピンクの「豚」の仮装をさせて、「オリンピック」と「ピッグ(豚)」をかけるという驚きの「Olympig(オリンピッグ)」構想は、仲間内のLINEで披露したネタだったそうですが、笑えないセクハラオヤジギャグとしか思えないレベルの低さです。

   何よりも、これが日本を代表するクリエイターの発想として世界に広まってしまったことが、恥ずかしくてたまりません!

   とりわけ海外では、容姿をネタにするのは御法度です。職場でも「スタイルが良い」とか「ちょっと太っている」といった会話は全力で避けますし、話の流れで少しでも容姿に関係しそうになると、全員が一致してあわてて話題を変えるほどです。

   禁断の「容姿ネタ」に加えて、今回は対象が女性タレントだっただけに、先日の森元会長の「女性蔑視発言」に続くジェンダー問題にまで発展しています。

   佐々木氏といえば、電通出身の超有名クリエイターです。佐々木氏が率いた電通の100%子会社「シンガタ(2019年解散)」は日本一のクリエイター集団と称されて、次々と華々しい企画を発信していましたが、「お値段が超高い」ことでも有名でした。

   ソフトバンクやサントリー、トヨタや資生堂といった日本を代表する企業をクライアントに抱えていた佐々木氏でしたが、残念ながら今回の「Olympig(オリンピッグ)」騒動でクリエイターとしての評価は地に落ちてしまったのではないでしょうか。

   身から出たさびとはいえ、佐々木氏にとっても日本にとっても、あまりにも情けない幕引きでした。

反森派の反撃か! まだまだ出てくる? 「東京五輪内部告発」

   報道によると、佐々木氏の「Olympig(オリンピッグ)」ネタがLINEで披露されたのは昨年3月のことでした。さらに佐々木氏の謝罪文を読むと、この「Olympig(オリンピッグ)」ネタは身内のブレストで出した「思いつき」レベルのもので、メンバーに不適切だと指摘されて直ちに謝り撤回していた、という認識だったようです。

   それでは、なぜ今になって、1年も前の「内輪ネタ」が蒸し返されて、文春にスクープされてしまったのでしょうか?

   私は、森元会長の辞任が引き金を引いたと思っています。佐々木氏は、電通と森元会長という「二大勢力」を後ろ盾にしており、昨年(2020年)12月には佐々木氏を総合統括にする「新体制」が発表されていました。

   週刊文春の記事でも詳細に報じられていますが、東京オリンピック・パラリンピックの開閉会式演出をめぐっては、責任者が次々に交代したり辞任したりするなど混乱を極めていたようです。実際、私の知人にも関係者がいるのですが、昨夏の段階で「森会長(当時)と佐々木氏が全部決めてしまう......」と嘆いていたくらいですから、森氏と佐々木氏への不満は相当広がっていたことでしょう。

   森元会長の勢力が衰えたとたん、降ってわいてきた「Olympig」の内部告発。この調子だと、「反森派」からの「内部告発」はさらに続くかもしれません。

   海外メディアも「Tokyo Olympics hit by another scandal(東京五輪は新たなスキャンダルに見舞われている)」「it is yet another setback(また新たな妨げだ)」と報じていますが、IOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長も組織委員会の橋本会長も、相次ぐ騒動にきっと頭を抱えていることでしょう。

   それでは、「今週のニュースな英語」は、「setback」(失敗、妨げ)を使った表現を取り上げます。進捗の妨げになるような時に使う表現ですが、後ろ向きのイメージです。「ちょっとした」「一時的な」「深刻な」といった形容詞を付与すると、応用範囲が広がります。

There has been a setback in our plans.
(私たちの計画に妨げがあった)

There has been a slight setback in our plans.
(私たちの計画に、ちょっとした妨げがあった)

There has been a temporary setback in our plans.
(私たちの計画に一時的な妨げがあった)

There has been a serious setback in our plans.
(私たちの計画に深刻な妨げがあった)

   東京オリンピック・パラリンピックを、何としてでも開催したいIOCや組織委員会にとって、最大の「setback」は国民の支持を失うことです。「Olympig騒動」で、「もう、五輪はうんざり」とあきれた人も多いのではないでしょうか。橋本新会長のいばらの道はまだまだ続きそうです。(井津川倫子)