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海外メディアが速報 大阪の聖火リレー「中止」! 英紙特派員は「東京五輪は奇怪」と痛烈批判(井津川倫子)

   東京オリンピック大会組織委員会が、大阪府内全域で公道を走る五輪聖火リレーを中止すると発表し、海外メディアも相次いで速報しています。

   代わりに万博記念公園をグルグル走るという「代替案」も驚きですが、新型コロナウイルスの感染が収まらない中での強行策。ある海外メディアの日本特派員は、東京五輪は日ごとに「grotesque(奇怪)」になっていると痛烈に批判しています。

  • 大阪の聖火リレーは中止に……(写真は、東京五輪公式サイトより)
    大阪の聖火リレーは中止に……(写真は、東京五輪公式サイトより)
  • 大阪の聖火リレーは中止に……(写真は、東京五輪公式サイトより)

大阪は「医療が崩壊寸前」なのに聖火リレー??

   大阪府内全域で、公道での中止が決まった東京五輪聖火リレー。各自治体で予定されていた出発式などのセレモニーもすべて幻になってしまったとのニュースが、海外を駆け巡りました。

Tokyo Olympic torch relay taken off streets of Osaka
(東京五輪の聖火リレー、大阪での公道で中止:AP通信)
torch relay:聖火リレー
take off:廃止する、連れ去る

Osaka has canceled the upcoming public Olympic torch event amid a surge in Covid-19 cases
(コロナウイルスの急激な感染拡大なで、大阪で予定されていた五輪聖火イベントがキャンセルされた:CNNテレビ)
upcoming:予定されていた、もうすぐ
surge:急増、急上昇

   公道での聖火リレー中止の背景には、新型コロナウイルスの感染拡大が「surge(急増)」したため、医療現場が逼迫していることがあります。沿道での「密集」を避けることが目的ですが、海外メディアは大阪府の吉村洋文知事が「医療非常事態宣言」を発出したことに注目しています。

   "Medical systems in Osaka are on the verge of collapse," Yoshimura said
(「大阪は、医療システムが崩壊する寸前だ」と吉村知事が語った:AP通信)

   「on the verge of」は、「今に~しそうだ」「~の寸前だ」という意味の慣用句です。大阪の危機的状況がひしひしと伝わってきますが、海外から見たら、「なぜ医療が崩壊寸前なのに聖火リレーなんてやっているの?」と不思議に思えることでしょう。

   そもそも、「密集」を恐れて聖火リレーを中止するくらいなら、200以上の国から数万人ものアスリートや関係者が一斉に訪れるオリンピック本番はどうするのか、と疑問視するメディアもありました。海外メディアのストレートな指摘に、五輪関係者はどう答えるのでしょうか?

アスリートにワクチン優先接種「東京五輪は奇怪」の怒り

   さらに海外メディアを困惑させているのが、日本でのワクチン接種の遅れです。諸外国と比べても「格段に遅れている」ことが、相次いで報じられています。

Japan's vaccination drive is far behind that of most major economies
(日本のワクチン接種は、他の主要国に比べて格段に遅れている:英紙ガーディアン)

Japan was the last G7 nation to begin its vaccination
(日本はG7の中で最後にワクチン接種を開始した)

   そんななか、日本政府が東京五輪・パラリンピックに出場する日本代表選手を対象に、新型コロナウイルスワクチンの優先接種を可能とする方向で検討に入った、というニュースに驚きが広がっています。

   五輪選手は6月下旬までに2回の接種を終わらせる日程を想定していると報じられていますが、諸外国が優先している医療従事者や高齢者への接種を差し追いて、五輪選手を優先するのかと、批判されているのです。

   英紙ガーディアンの東京特派員はツイッターで、「医療従事者や高齢者よりも五輪関係者を優先するなんて『グロテスク』だ」と痛烈に批判しています。

The Tokyo 2020 Olympics grow more grotesque by the day
(東京五輪は日に日にグロテスクになる一方だ)

   「grotesque」(グロテスク)は、「怪奇だ」「異様だ」という意味ですが、かなり強烈な表現です。確かに、ワクチン接種も進んでいないのに、聖火リレーや五輪開催にこだわり続ける日本政府や五輪関係者の姿が「異様」に映ることは否定できませんし、我々日本人にとっても十分「異様」な状況です。

   東京五輪をめぐってはこれまでも「異様」続きでしたが、私には今回の「アスリートワクチン優先接種」が「地雷」に思えてなりません。医療現場や高齢者施設で働く「エッセンシャルワーカー」や重症化リスクが高い高齢者よりも、健康で若いアスリートを優先するといったメッセージ、日本国内はともかく国際的な共感を得られるわけがありませんし、逆にアスリートや関係者への圧力につながりかねません。

   「On the verge of collapse」(今にも崩壊寸前)なのは、大阪の医療現場だけではなく東京五輪そのもの、ではないでしょうか?(井津川倫子)