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フジテレビ外資違反の「不透明」決着 総務省の弁明に霞が関からあきれ声

「あまりに、説明がひどすぎる」

   不祥事が続出する総務省情報流通政策局が、身内の総務省内や霞が関の他の省庁から猛烈な非難を浴びている。

   情報流通政策局は局長ら幹部がNTTなど関係業者から多額の接待を受けていたことが判明したばかりだが、今度はフジテレビを傘下に持つフジ・メディア・ホールディングス(FMH)の外資規制違反問題でも、ずさんな対応が明らかになった。

  • 外資規制に違反していたフジ・メディア・ホールディングス
    外資規制に違反していたフジ・メディア・ホールディングス
  • 外資規制に違反していたフジ・メディア・ホールディングス

外資比率、過去2年間にわたり違法状態

   総務省情報流通政策局は、FMHから内々に「相談」を受けていながら、厳重注意という「激甘」処分にとどめ、しかもFMHとともに違反の事実を隠蔽してきた。

   武田良太総務相は記者会見で、「当時の判断に問題はなかった」と釈明したが、あまりに稚拙な同局の対応に内心、はらわたが煮えくりかえっているだろう。

   まずは経緯を振り返ってみよう。

   FMHは2008年、総務相から放送法に基づく「認定放送持ち株会社」の認定を受けた。「認定放送持ち株会社」は外資比率を20%未満に抑えることを義務づけているが、FMHが14年9月に傘下企業の株主構成を確認したところ、過去2年間にわたって外資比率が基準をわずかに上回っていたことが判明した。

   ただ、FMHはすぐに所管の同局に報告せず、違反状態の解消を確認した14年12月になって、初めて同局放送政策課長に「相談」。それでも同局は認定取り消しなど厳しい処分は見送った。

   この判断は本当に「問題なかった」のだろうか。

   情報流通政策局は内閣法制局が1981年に示した見解を根拠に「FMHから報告があった時点で外資規制違反の状態は解消されており、放送法上、認定の取り消しができなかった」と弁明する。

   しかし、総務省が根拠にする見解は放送法のものではなく、旧郵政省が電波法の外資規制について内閣法制局に問い合わせたものだ。しかも、この見解をFMHに準用できると判断したのは法制局ではなく、同局の「独自見解」に過ぎない。

   まったく異なる法律の見解を準用する「ウルトラC」とも言える対応にもかかわらず、同局は高市総務相(当時)ら幹部に相談していなかった。さらに当時の局長や担当課長は「メモなども一切、残していない」と証言。当時、本当に内閣法制局の見解を根拠にしたのかさえ怪しい状況だ。

「波取り記者」が情報流通政策局を「接待漬け」?

   放送法の外資規制をめぐっては、情報流通政策局が2021年3月26日、違反を確認した東北新社の子会社の衛星放送事業認定を、5月1日時点で取り消すと公表したことは記憶に新しい。

   同局の担当者は「東北新社子会社は認定段階で外資規制に違反していたが、FMHの場合、総務省に報告した段階で、すでに違反状態が解消していたからだ」と、対応が分かれた理由を説明する。

   しかし、この担当者自身、仮にFMHが違反状態を確認した14年9月にすぐに報告していれば認定取り消しの対象になった可能性があることを渋々認めている。

   これが認められるのであれば、違反状態解消が確認されるまで内容を隠蔽していたほうが有利に働く。FMHと総務省の水面下の取引があったのではないか。こうした疑問が残るのもやむを得ないだろう。

   大手テレビ局は総務省記者クラブに通称「波取り記者」と呼ばれるベテラン記者を配置し、同局幹部の接待に明け暮れているのは知る人ぞ知る事実だ。総務省でも地方行政を担当してきた旧自治省系の、ある役人は「業者とナーナーの関係でやってきたから対応も、処分も甘くなる。一連の不祥事は(旧郵政省の)情報流通政策局の自業自得だ」と吐き捨てた。(ジャーナリスト 済田経夫)