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作業着スーツのオアシススタイルウェア 関谷CEOに聞いた「学生服」市場進出への勝算

   「作業着スーツ」でワークウエアのすそ野を一気に広げた株式会社オアシススタイルウェア。2021年の新たな挑戦に、学生服市場への参入を掲げた。4月に始まった新学期から、東京都内のインターナショナルスクールが採用している。

   作業服スーツの生みの親でもあるオアシスライフスタイルグループCEO(最高経営責任者)の関谷有三さんに、学生服市場に挑戦する狙いや意気込みを聞いた。

  • ヒット商品になった作業着スーツを応用。2021年は学生服市場への参入を宣言したオアシスライフスタイルグループの関谷有三CEO
    ヒット商品になった作業着スーツを応用。2021年は学生服市場への参入を宣言したオアシスライフスタイルグループの関谷有三CEO
  • ヒット商品になった作業着スーツを応用。2021年は学生服市場への参入を宣言したオアシスライフスタイルグループの関谷有三CEO

多くの人が不自由を感じる学生服市場に勝機あり

   ――学生服を次の挑戦のテーマに選んだ理由を教えてください。

関谷有三さん「もともとスーツと作業服の『垣根を壊す』という、アパレルでも異端児的な扱いを受けながらチャンレンジを続けてきました。そこでさまざまな取引先ができ、(新しいチャレンジとして)いろいろなお話をいただいた、その中に何度か学生服の話がありました。学生服のマーケットは寡占化した状態ですが、その参入が難しい状況を打破したいと思いました。 自分自身も(高校時代は)学生服を着ていましたが、重たいし、着る時期は成長期で、活動して汗をかくことが多いのにもかかわらずなかなか洗えない。そのうえ(購入・クリーニングなど維持費用の)コストが高い。制服について多くの人が不自由を感じているのになぜ改革されてこなかったのか。不思議に思いませんか。そこに挑戦する意義があります」

   ――学生服は、オアシススタイルウェアの革新的な「ワークウェアスーツ」に次ぐ取り組みになりますが、インターナショナルスクールの採用にあたっては、どのような経緯があったのですか。

関谷さん「取引先の百貨店から2年ほど前にアイデアとして提案がありました。ワークウェアスーツの生地として開発した『ultimex(アルティメックス)』に自信があったので、これはイケると思いました。この生地は、ストレッチ性やはっ水性に優れるなどの高機能と、水洗いができ、また速乾性を併せ持っています。汚しても、家庭で洗えて毎日着られる。学生服の素材として申し分ありません。
ただ、新しいところに発注しようという学校がなかった。そこに昨年(2020年)11月、東京都港区のマリーインターナショナルプライマリースクールという新設校から申し込みがあったんです。学校側が本当にいいと判断してくれて、採用していただけることになりました」
マリーインターナショナルプライマリースクールで採用されたWWSの学生服
マリーインターナショナルプライマリースクールで採用されたWWSの学生服

学生服は「半値ぐらい」にできる

   ――「ワークウェアスーツ」はブランド化されていますが、学生服もこのブランドから発売されるのですね。

関谷さん「今年(2021年)2月、ワークウェアスーツの略称の『WWS』を『WWS/ダブリューダブリューエス』として新ブランドを設立しました。『TPOを選ばない、普遍的でシンプルなデザインの商品を提供する』というコンセプトのもと、スーツに次ぐ商品として学生服を選んだのです。 『ワークウェアスーツ』は、新型コロナウイルスによる感染が拡大した20年度には、毎日でも洗えて清潔に保てることから感染症対策として注目され、前年度の400%を超え、導入企業は900社にのぼります。頻繁に洗えることは、学生服にとっても大きな武器といえます」
作業着スーツはコロナ禍の2020年度、前年の400%超の売り上げを記録した
作業着スーツはコロナ禍の2020年度、前年の400%超の売り上げを記録した

   ――少子化社会です。子どもが減るなか、学生服市場のビジネスをどのように考えているのでしょうか。

関谷さん「スーツもどんどん市場が小さくなっていますよね。その中で、水道事業の作業着をカッコよくしようとの発想から、『スーツに見える作業着』という、アパレルの新しいスタイル、ジャンルを生み出そうと挑戦してきました。注目が集まり、品質をわかってもらって売り上げを伸ばしてきたのです。(どの市場でも)イノベーションによっては、まだまだ開拓できる。学生服市場は縮小する可能性はありますが、シェアを奪っていけると思っています。わたしたちはスーツが売れない時代にスーツで売れた会社。それはイノベーションによるものであり、学生服市場の問題は縮小ではなく、長い間イノベーションが起きていないことだと思っています」

   ――学生服の売上目標はどのくらいでしょう。

関谷さん「スーツが年間10億円の売り上げがありますので、ゆくゆくはその半分の5億円くらいになることを目指しています。スーツが3年間で900社以上の導入実績をつくれましたので、その手法にならったPRで広めていく考えです。
学生服の価格は、原材料の値上がりや少子化に伴う少量多品種の生産が増加していることから上昇傾向で、公正取引委員会が2017年11月に公開した『公立中学校における制服の取引実態に関する調査報告書』によると、平均価格は男子生徒用が3万3000円、女子生徒用が3万2000円です。オアシススタイルウェアでは、その半額くらいでできるとみています」

   プロフィール
関谷 有三(せきや・ゆうぞう)
オアシスライフスタイルグループCEO(最高経営責任者)

   1977年、宇都宮市生まれ。大学卒業後、経営危機に直面していた実家の水道工事店を引き継ぎ、2006年にオアシスソリューションを設立。事業の多角化を図る中で、台湾のタピオカミルクティーの人気店「春水堂」誘致に成功し、タピオカブームの火付け役になった。
2016年、「スーツに見える作業着」を開発。17年12月、アパレル会社、オアシススタイルウェアを設立。水道事業のオアシスソリューション、飲食部門のオアシスティーラウンジ、オアシススタイルウェアによる「オアシスライフスタイルグループ」を構成。その代表取締役CEOを務める。
著書に、「なぜ、倒産寸前の水道屋がタピオカブームを仕掛け、アパレルでも売れたのか?」(2021年3月、フォレスト出版)がある。