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暴走するバッハ会長よ、五輪選手の心の叫びを聞け! 錦織圭、大坂なおみ、セリーナ、モーガン...(1)

「鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス」(徳川家康)

とばかりに、誰が「東京五輪中止」を言い出すかを待つチキンレースになってきたが、IOC(国際オリンピック委員会)のトーマス・バッハ会長は、依然として崖っぷちギリギリまで突っ走る考えのようだ。

   しかし、その足元で五輪選手たちがついに声を上げ始めた。

  • 「聞く耳を全く持たない」バッハIOC会長
    「聞く耳を全く持たない」バッハIOC会長
  • 「聞く耳を全く持たない」バッハIOC会長

仰天!WHOが日本当局のコロナ対策は素晴らしいと絶賛?

   「ナントカの耳に念仏」「聞く耳を持たない」とはこの人のためにある言葉だろうか。IOCバッハ会長は5月10日、何が何でも東京五輪を開く姿勢を明らかにした。

   スポーツ報知(5月11日)「バッハ会長『すべての人に安全な五輪を提供する』悲観論のなか、強硬姿勢変わらず」が、こう伝える。

「IOCのバッハ会長が東京五輪の中止論を打ち消した。5月10日、IOCの公式サイトで『私たちは、世界中の科学的および医学的専門知識に引き続き導かれ、全ての人のために安全な東京五輪・パラリンピックを開催する』と、改めて強い意欲を示した。米メディアから〈ぼったくり男爵〉と呼ばれるなど批判が集まるバッハ会長は、新型コロナの感染拡大で緊急事態宣言が延長されたのに伴い、今月17、18日に予定していた来日を延期。中止論の高まりが抑えられないなか、強硬な開催姿勢を明確にした」

   そして、バッハ会長が「科学的および医学的専門知識に導かれる」根拠として引き合いに出したのが、世界保健機関(WHO)で緊急事態対応を統括するマイケル・ライアン氏の東京五輪に対する絶賛の発言だった。スポーツ報知がこう続ける。

「WHO のライアン氏が5月7日の記者会見で、東京五輪の感染症対策を評価したことを引き合いに出し、『WHOによる非常に励みになる発言は、アスリート、世界中の代表団、組織委員会、すべての日本人、そしてIOCとIPC(国際パラリンピック委員会)に明確なシグナルになる』と、世界中から送られる悲観的な視線を意に介していないようだ」

   いったい、ライアン氏はどんな発言をしたのだろうか。5月7日ジュネーブ発のロイター電によると、こんなトンデモ発言をしたのだった。ロイター通信はこう伝える。

「日本政府は5月7日、東京都、大阪府、京都府、兵庫県に出している緊急事態宣言の延長を正式に決定。ライアン氏は同日、記者会見で『五輪開催がわれわれの希望だ』とし、日本国内の新型コロナの陽性率は横ばいになっていると指摘。日本当局はこれまでのところ、『非常に体系的でリスク管理されたアプローチ』を適用しており、東京都にはウイルスを拡散させる社会的交流を避けながら、どのように大会を開催するかを決定する『高い能力』があるとした。その上で『IOC、東京都、日本政府がリスクをどのように管理するかについて正しい判断を下すと確信しており、リスクを確実に管理するために現在、懸命に取り組んでいる』と語った」

   耳を疑う発言だ。ライアン氏は日本に来て、日本当局のコロナ対策の実態をしっかり調べたうえで、日本国民が恥ずかしくなるほどの高い評価を下しているのだろうか。なるほど、こんな人物を緊急事態対応の最高責任者にしているから、WHOが今回の新型コロナウイルスのパンデミックを招いたと言われるのか、と思いたくなる。

IOCの暴走が止まらないのはカネ、カネ、カネ

東京五輪は開けるのか(新国立競技場)
東京五輪は開けるのか(新国立競技場)

   では、なぜこうもIOCの暴走が止まらないのか。朝日新聞(5月11日付)「五輪開催にIOC突進、放映料権料にらみ? 無観客でも収入確保」がカネの面から、こう指摘する。

「批判を浴びても東京五輪開催に突き進むIOCの本音は、どこにあるのか。まず大きいのが、テレビ局からの放映権料だ。IOCは、2032年までの夏冬6大会の米国内での放映権について、米NBCと76億5000万ドル(約7780億円=当時)の契約を結ぶなど、収入の約7割をテレビ放映権料から得ている。たとえ無観客でも大会が開かれれば、放映権料を受け取ることができる。IOCは支出の約9割を、世界各国の五輪委員会や競技団体への分配などに使っている。仮に大会が中止になり、放映権料を払い戻すことになれば、特にマイナー競技の団体は分配金が減って資金難に陥る可能性がある」

   また、五輪組織委員会や東京都にも引くに引けない事情がある。

「また、東京都との関係では、IOCは組織委に850億円の拠出金を支払っている。しかし、大会が中止となって放映権者が放映権料の返還を求めた場合、組織委は拠出金をIOCに払い戻さなければならない契約になっている。大会が中止になった場合、IOCだけでなく、組織委や東京都も大きな減収に直面する」

   しかし、このカネの問題は、たとえ中止になっても、IOCも下手に組織委に「返還せよ」と言いにくい事情もあるようだ。スポーツジャーナリストの二宮清純氏が、5月11日放送の日本テレビ系「スッキリ」の中で、こう解説した。

中止した場合に発生すると言われる「違約金」について二宮氏は、
「開催都市契約の中に違約金の条項はないが、違約金と賠償請求はまた別。正確に言うと、中止の権限を持っているのはIOC。もし日本側が中止をする場合は『開催権返上』という言い方が正しい。違約金という項目はないが、スポンサーはすでにIOCにおカネを払い込んでいる。だから、開催権返上を申し出たところ(東京都か日本政府)に賠償請求をする可能性はゼロではない。しかし、それをやったらスポンサーのブランドイメージが傷つくし、IOCにとっても今後五輪の立候補都市がなくなります。こうした情報を、私が喋るのではなく組織委員会が国民に説明するべきなのです」

(福田和郎)