J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

IT技術者が病んでしまうワケ? どうする「メンタル不調」疲れても働きつづける日本人への警告【尾藤克之のオススメ】

   IT業界に朗報! コロナ禍のなか、メンタルヘルスに配慮しながら、業績をアップできる組織には何か必要か?

   IT事業について、現場・人事・経営者の3つの視点を兼ね備えた著者が、キャリア・メンタル双方の側面から、組織づくり・管理法を提案する一冊です。

「IT技術者が病まない会社をつくる」(浅賀桃子著)言視舎
  • キャプション 働きつづけて、疲れきって……
    キャプション 働きつづけて、疲れきって……
  • キャプション 働きつづけて、疲れきって……

メンタル不調はなぜ発生するのか?

   IT業界のイメージは3K(キツい、厳しい、帰れない)と言われています。厚生労働省の「平成29(2017)年 労働安全衛生調査(実態調査)」によると、過去1年間にメンタル不調により連続1か月以上休ました従業員は全体で0.4%。産業別にみると、IT業界が含まれる情報通信業が12%と最も高い割合になっています。

   著者の浅賀桃子さんは、最近の傾向について次のように解説します。

「長時間労働の問題が際立っています。2014年に成立した『過労死等防止対策推進法』に基づく『過労死等防止対策白書』が厚生労働省より、2016年に初めて公開されました。正雇用従業員(フルタイム)の月間時間外労働時間が2時間と回答した企業の割合は情報通信業では、53.7%となっており、業種全体の平均値(25.4%)を大きく上回っています」
「また、1か月間での最長時間外労働時間に関しての調査では、80時間を超えていると回答した企業の割合が一番多かったのが情報通信業(44.4%)です。現在に至るまで、長時間労働が最も低い業種のひとつであり続けていることは間違いないといえます」

   IT技術者がメンタル不調に陥りやすい理由は何でしょうか? 同じ業種でも全員がメンタル不調になるわけではありません。なにか特徴があるようにも感じます。 浅賀さんは、

「IT技術者にみられるストレス要因には次のものがあげられます。人手不足、長時間労働(休めない)、ドッグイヤー(技術革新が早い)、下請け構造、厳しい納期、顧客の無理な要求、顧客からの強いプレッシャー、コミュニケーションや人間関係などです。さらに、病みやすいタイプが存在します。それが『執着気質』、責任感が強く完璧主義な傾向のことです」

とみている。

「責任感が強すぎるので無理をしてしまう傾向にあります。自分自身の心身の状態に気づかないか、気づいていたとしても対処せずに仕事に取り組んでしまうのです。不調に気づいた時には、すでに悪化しているケースが少なくありません」

会社はあなたを守ってはくれない

   日本人はよく働きます。その結果、働きすぎてしまうきらいがあります。組織に属し、仕事に従事するうちに、自分の生活が仕事だけになっている人がいます。そんなふうになると、人生はとてもつまらなくなってしまいます。すでに人生を楽しめなくなっている証拠です。

   しかし、このような人が報われることはありません。尽くしてもイヤな仕事を率先してやっても、心身ともに疲弊し、ストレスをためているケースが少なくありません。頑張っているが、だんだん空回りしてきます。最終的には働けなくなり、会社にも家族にも迷惑をかけてしまいます。

   組織や仕事の命ずるままに仕事をしてくると、このような不幸を生み出します。「ミスが目立つようになる」「重大な事故を引き起こす」「体調不良からカラダを壊す」など、問題が表面化したときには、すでに影響が出はじめているかもしれません。

   そして上司には、こう言われるでしょう。

「どうしてこうなるまで放っておいたんだ」
「なんでもっと早く報告しないんだ」
「自己管理の問題だ。無理するからこうなるんだ」

   ひとつ言えることは、会社はあなたを守ってはくれないということです。

   これは、異性関係に置き換えるとわかりやすいと思います。片方(あなた)が好意を抱いていても、相手(会社)にはそれに応える義務はまったくありません。相手が振り返ってくれないことで、悩み苦しんでも誰も助けてはくれないのです。

   本書を通じて、会社や仕事との関係、自らが置かれた状況を客観視することで見えてくるものがあるように感じます。コロナ禍の中、メンタルヘルスに配慮しながら、業績をアップできる組織には何が必要か? そのヒントが提案されています。(尾藤克之)