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ドコモ、au、ソフトバンク大手3社独占「プラチナバンド」を楽天にも! 携帯電話業界がどう変わる?

   なかなかつながりにくい携帯電話......。それが楽天モバイルや多くの格安スマホの弱点だった。

   それは、「プラチナバンド」と呼ばれる非常につながりやすい電波を、携帯電話大手3社のNTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクが独占してきたからだった。

   その3社独占の構図に風穴を開ける動きが加速している。携帯電話業界はどう変わるのか。

  • 携帯電話がさらに安くなるとうれしいが……
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総務省「つながりやすい電波を平等に配分せよ」

   携帯電話大手3社の「プラチナバンド」独占体制に総務省がメスを入れる動きを始めたことを朝日新聞(2021年5月19日付)「携帯プラチナバンド再配分を検討 総務省部会が骨子案」が、こう伝える。

「建物が密集した場所でも携帯電話がつながりやすい周波数帯『プラチナバンド』について、総務省の有識者会議は5月18日、再配分を検討すべきだとする案を示した。これまで携帯電話大手3社(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)が独占しており、新規参入した楽天モバイルが割り当てを求めていた。4社での再配分が決まれば、競争が激しくなりそうだ」

   電波は携帯電話やテレビ、消防無線や衛星通信などに使われる。使用できる周波数に限りがあるため総務省が免許を与えて管理している。一般的に周波数が低いと山や建物などの障害物があっても遠くまで届き、周波数が高いと扱える情報量が多いという特徴を持つ。その中でも700~900MHz(メガヘルツ)帯の周波数は、ビルを回り込む形で進むので、地下やビルの陰でもつながりやすいうえ、情報量も適度に多く、携帯電話にとって非常にバランスがよく、「プラチナバンド」と呼ばれる。

   周波数は5年ごとの免許制で、割り当てられた携帯大手などが継続使用してきた。プラチナバンドについてはNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社が独占している。

楽天モバイルは風穴を開けられるか!
楽天モバイルは風穴を開けられるか!

   楽天モバイルは総務省の電波政策懇談会で、「公正な競争が実現されにくい」として、3社の持ち分を再配分するよう求めていた。これに対して、総務省の電波政策懇談会は、

「これまでプラチナバンドの周波数については例外的な特別扱いをしてきたが、公正競争の確保とモバイル市場の活性化のために、再配分を検討すべきだ」

という案を示したのだった。

   朝日新聞がこう続ける。

「懇談会の作業部会がこの日示した骨子案によると、全周波数帯に共通する新たな割り当てルールを整備する。プラチナバンドも『公正・中立に審査し、再割り当ての検討を行うべきだ』との考え方だ。8月までに報告書をまとめる。利用者への影響などを見定め課題を検討するため、議論の場を新たに設ける。楽天モバイルの内田信行技術戦略本部長はこの日の会見で、携帯大手各社が従来型の3Gサービスを終了するいまが割り当てを見直す『絶好の機会』だと主張した。再配分の重要性を改めて強調し、今後の議論を急ぐよう訴えた」

   これ対して、独占してきた携帯3社はどう反応したか。総務省が公開している電波政策懇談会の公式サイトによると、NTTドコモの担当者はこう発言した。

「既存周波数の再配分は影響が非常に大きいと考える。これまでのシステムの運用がどうだったのか、検討の深堀りを行う場の設定が必要だ」

   また、KDDIの担当者もこう発言した。

「周波数の再編では、既存免許人の移行にかかる費用や期間の見極めが重要である。ユーザー影響、経済合理性や日本の将来5G展開影響も見極めたうえで慎重に判断されるべきだ」

   要するに、自分たちもかなりの資金をプラチナバンドの維持や構築に投入している。電波政策懇談会で性急に再配分を決めずに、別の場で慎重に議論を進めてくれと抵抗の姿勢を示したのだった。

   ソフトバンクの担当者は発言しなかった。

談合体質を破壊!「ここは楽天に頑張ってもらいましょう」

   今回の総務省有識者会議の動きについて、ネット上では大手3社独占の構図に風穴を開けるものだとして、歓迎の声が多い。

   フリーランスジャーナリストの山口健太氏は、こう指摘した。

「楽天によれば、最も順調に再配分が進んだ場合、2023年内には部分的にプラチナバンドを利用したサービスを始められるとの見通しです。これまで楽天のエリア外ではKDDIのローミングでつながっていましたが、これは段階的に終了し、楽天の自社エリアのみになります。しかし楽天が保有する1.7GHz(ギガヘルツ)帯は屋内など入り組んだ場所に届きにくく、エリア内なのにつながらないとの報告が増えています。かつてソフトバンクは2012年にプラチナバンドのサービスを開始したものの、『つながりにくい』との評価を覆すのに長い時間がかかりました。他2社は消極的な姿勢ですが、楽天が第4のキャリアとして成長するためには避けて通れない道でしょう」

   ほかにもこんな声が。

「楽天の参入によって3社横並びが崩れたことは確かだ。いろいろ問題もあるのだろうが、談合体質を破壊し、日本を活力ある社会にするために、ここは楽天に頑張ってもらいましょう」

「楽天にも分配して競争を加速させたほうがいい。ソフトバンクが新規参入して時間規制かけ放題を始めて期待したが、iPhoneの独占発売後はここ10年くらい競争がかなり生ぬるくなったからね。その点、楽天の参入で再び活力が戻るのを期待する」

   これに対しては、こんな懐疑的な指摘も。

「昔のソフトバンクが楽天のような感じだった......。楽天もそのうち通信事業のうまみを経験して、気がついたら4社横並びの競争レス状態にならなければいいが」
電波は誰のもの?
電波は誰のもの?

   一方で、テレビの電波の改革もすべきだという意見も多かった。

「3社独占だった携帯の電波にメスが入るのは、競争が活発化するという意味ではいい刺激です。ただ、総務省はなぜ携帯に関してはこれだけ意欲的に改革していくのに、テレビは放置するのか。テレビは携帯以上に電波が独占されている」

「いっそテレビ向けの電波の帯域を半減させて、電波を携帯に割り当ててほしい。いまやテレビより携帯のほうが国民にとってずっと重要なインフラだし、影響力が大きいメディアだと思う」

「民放大手に地デジ、BS、CSと3波も与える必要あるのだろうか? 最初は野球が延長してもBSで放送して、地上波でドラマを定時で始められるからと言っていたが、蓋を開けてみれば3つとも同じく延長もしくは中継を打ち切っている。要らないなら返して欲しいね」

「NHKも見直す点はあるが、BSなどの内容は充実している。しかし、民放の東京キー局のBS、CS枠は通販や行事イベント番組ばかりで、あまりに内容がなさすぎる。電波の既得権確保だけが目的になっている。テレビ局の電波は抜本的に減らして、ぜひ携帯電話に回して欲しいものだ」

(福田和郎)