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罪深き新型コロナウイルス 経営者はアスリートたちの愚直な努力から勝ち進むための「極意」を学べ!(大関暁夫)

   コロナ禍2年目を迎えた昨今の最大話題は、あと2か月に迫った東京五輪・パラリンピックを開催すべきか否か、という議論です。

   マスコミ各社の世論調査にみる国民の意見の大勢は、感染拡大の第4波が猛威を奮う現状を鑑みて、「中止か再延期」。私の周囲でも「中止派」が大勢を占めているのですが、個別に話を聞いてみると、

「できることならやって欲しいが、今はちょっと」

というのが本音のようでもあり、新型コロナウイルスの罪深さを改めて実感させられるところです。

  • 世界中のトップアスリートが東京に集まるはず……
    世界中のトップアスリートが東京に集まるはず……
  • 世界中のトップアスリートが東京に集まるはず……

劇的な復活! 池江選手に勇気をもらった

   かく言う私も「できることならやって欲しい中止派」です。現実に目を向ければ、感染拡大防止の観点から「中止やむなし」と思いながらも、「できることならやって欲しい」と思っているわけなのです。

   なぜ、「できることならやって欲しい」のか。それは、アスリートたちが真っすぐにガンバル姿に勇気や元気をもらいたい、ということがありますし、国民の多くが同じように「今は中止が望ましいが、できることならやって欲しい」思っているとするならば、それはまた同じ理由によるのではないかと思います。

   そんな状況下でオリンピック中止論議に水を差すがごとく、ここにきてアスリートたちのガンバル姿に勇気や元気をもらう、という場面が目立ってきています。これが「できることならやって欲しい」機運を静かに搔き立てていくのではないか、とも思っています。

   その一つが、競泳の池江璃花子選手の東京五輪代表選出という、あまりに劇的な出来事でした。それは4月に行なわれた、東京五輪代表選考を兼ねた日本選手権でのこと。池江選手は出場した4種目すべてで優勝し、リオデジャネイロ五輪に続いて2度目の代表権を獲得したのです。

   池江選手が白血病であることを公表したのは、2019年2月のことでした。その後10か月に及ぶ入院と抗がん剤治療を乗り越えて、再びプールに戻ってきました。東京五輪が1年延期されたことで、一度はあきらめざるを得なかった代表の座を手に入れるチャンスが再び巡ってきたのです。

   それにしても、あまりに驚異的な復活劇です。想像を絶するほどの苦難を乗り越えて、再び五輪代表の座を勝ち取った彼女はこう言いました。「努力は必ず報われると思いました」。スーパーアスリート奇跡の復活に、観る者が勇気と元気をもらった瞬間でした。

マスターズ優勝の松山選手にみる愚直な努力の姿勢

   池江選手の感動の五輪内定から1週間後、今度はプロゴルファーの松山英樹がゴルフの4大メジャー大会である「マスターズ」でアジア人初の優勝を遂げました。優勝の瞬間を伝えたテレビの衛星生中継では、実況のアナウンサーも解説の中島常幸プロもそろって涙でしばし声にならないという「放送事故レベル」の感激にむせぶほどの、国内全ゴルフ関係者およびゴルフファン念願の快挙でありました。

   松山プロの優勝は、言ってみれば執念のメジャー制覇でした。彼はアマチュアゴルファーとしてならした父の影響で、子どものころからメジャー大会で優勝することを夢見、常に人一倍の努力を続けてきたといいます。

   アマチュアとして注目されはじめた大学時代には、周囲は強くプロ入りを勧めていたものの、稼ぐためではなくメジャー制覇できる実力づくりに集中したいと、アマチュアを貫いたストイックさは特筆に値します。

   2011年にマスターズに初出場してアマチュア優勝を飾ると、プロ転向後の2014年からは主戦場をアメリカに移し、ひたすらメジャー制覇に向けた孤独な闘いを続けたのです。

   決してあきらめないその愚直な努力姿勢は、過去にメジャー挑戦を試みたどの国内トッププロの比ではありませでした。その努力で得られたものが自信でした。ホールアウト後のインタビューでの「勝つと決めていました」との言葉は、彼の優勝はその自信のなせる業であったことを如実に表していました。

   彼の大先輩であり全米オープン2位惜敗の経験を持つ青木功氏が、「彼の優勝はツキもあったが、ツキを呼び込むほどに誠実な練習があったということ」と語った言葉に、何より「愚直な努力は必ず報われる」ということを改めて感じさせられた次第です。

ノルマをコツコツとクリアしてきた「二刀流」大谷翔平選手

   もう一人、今注目のアスリートは、米大リーグエンゼルスの大谷翔平選手です。故障から完全復活した今シーズンは投打に大活躍を見せ、今や全米中の注目を集め、球界の大ヒーローで「野球の神様」ベイ・ブルースと並び評されるほどの注目を集めているのです。

   彼もまた愚直な行動の人であり、努力の人です。高校時代から、過去に誰も夢見ることすらなかったメジャーでの投打二刀流を志し、自分の立てた長期、中期、短期の目標とノルマをコツコツとクリアし続けて一歩一歩、夢の実現に向けて歩みを進めてきたアスリートなのです。

   渡米前の日本ハムファイターズ時代には、先輩からの食事の誘いにも「僕はまだ練習があるので」と断り、あくまで自分の志すものへ向けた取り組みをブレることなく愚直に進めてきた、それが今まさに開花に向かいつつあると言えるのです。

   アスリートと経営者は似たところがあると常々思っています。共に、努力なく栄光を手にする天才は存在せず、止むことのない愚直な努力を続けられる者が結果を手にすることができるのだと。

   一流のアスリートたちが栄光を手にする陰でどんな努力を続けていたのかを知ることで、勇気や希望をもらうと同時に、経営者とっては勝ち進むための行動指針をも与えてもらうことになるのではないでしょうか。

   東京五輪「中止」派の私ですが、コロナ禍に苦しむ経営者が多い今、彼らに勇気と希望と同時に行動指針への気づきを与えてもらう意味からは、「できることならやって欲しい」という思いも複雑に交錯しています。(大関暁夫)