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雑談、プレゼン...... 朝礼に通じる「話し方」のコツ【朝礼のネタ本はこれだ!】

   会社で朝礼があり、毎日何かを話さなければならない役職者にとって、ネタ探しは大変だろう。そんな人のために、5月は「朝礼のネタ本」を随時紹介していきたい。

   朝礼に役立つ、さまざまな本を紹介してきたが、「話し方」というアプローチから参考になりそうな本を探してみた。

   本書「世界最高の話し方」は、朝礼に限らず、多くのビジネスシーンで使えると思った。

「世界最高の話し方」(岡本純子著)東洋経済新報社
  • リーダーは「オーラ」をまとっている……(写真はイメージ)
    リーダーは「オーラ」をまとっている……(写真はイメージ)
  • リーダーは「オーラ」をまとっている……(写真はイメージ)

相手に「関係」「関心」「価値」あるネタを

   著者の岡本純子さんは、1000人以上の社長、企業幹部の話し方を変えた「伝説の家庭教師」と呼ばれる。読売新聞社、電通パブリックリレーションズを経て、株式会社グローコムを立ち上げ、エグゼクティブ向けのコミュニケーションコーチをしている。

   「話し方」全般について、50のルールを挙げている。その中から「朝礼」に役立ちそうなものを紹介しよう。

   まずは、ネタ探しのコツから。雑談のネタ探しも朝礼のネタ探しと同じだ。相手に「関係」「関心」「価値」のある3つのネタが喜ばれる。

(1)「大ヒット商品の法則」で、相手が喜ぶ話のネタを見つける
   相手に「関係」のある5つの切り口だ。「身近」で、その「悩み」や「損得」に関わり、「便利」で「影響」を及ぼすネタだという。

(2)「スキャンダルの法則」で、相手の「関心」をわしづかみにする
    流行、有名、苦労・失敗・葛藤、感情、告白、変化といった要素のあるネタだ。こんな例を挙げている。

「大ヒット中の映画〇〇は絶対見ないと損」
「トヨタの次世代カー」
「感染者が半分に減った」

(3)「おれ、すごいぞ」ではなく、「あなたはすごい」を伝える
   聞き手が耳にしたいのは、「話し手の価値」ではなく、「聞いている自分の価値」だ。「徹底的な相手目線」を貫き、脱「自己アピール」の話し方を、と説いている。

   これらの前提として、岡本さんは「何を話したかは忘れても、何を感じたかは一生残る」と書いている。興味のない話をすれば共感は生まれない。人は「自分が聞きたい情報だけ」を受け入れるからだ。昔話、説教、自慢話は厳禁だ。

「結論 → 理由 → 事例 → 結論」という展開で

   次が「話し方」だ。アメリカの子どもが必ず学ぶ超基本として、「結論 → 中身 → 結論」の「ハンバーガー話法」があるという。これを基に岡本さんが勧めるのが、「結論 → 理由 → 事例 → 結論」という展開だ。「理由」の冒頭では「なぜなら」、「事例」の冒頭では「たとえば」という、ひと言を添えれば、わかりやすい。

   このほかにもいくつか朝礼の参考になるルールがあると思った。たとえば「丸めない数字でインパクトを出す」というものだ。「大まかな数字」ではなく、「四捨五入をしない正確な数字」を入れると、規模感とインパクト、「できる人」というイメージが生まれる。

   岡本さんはかつて、人前に立つことが大の苦手だったそうだ。渡米して名門アクティングスクールで学んだことが、「プライドを捨てて、恥をさらしバカになれ」ということだった。

   トヨタ自動車の豊田章男社長が社内報の中で、「すごいプレゼンをする秘訣は何か」と聞かれて、こう答えたことを紹介している。

「唯一のアドバイスは、人前に出ていくと『恥ずかしい』とか、やっぱり人間だから『いいカッコしたい』っていうのが出るんだよ。それさえ捨てりゃラクだよ(笑)」

   「カッコつけるのをやめる」というプレゼンのコツは、朝礼にもあてはまるだろう。

   声のメリハリやアイコンタクトの重要性にも触れている。全体の7割以上の時間は聴衆を見て話すようにとアドバイスしている。手元原稿から目が離せないという人に、以下の「4つの場面」だけは聴衆を見て、と勧めている。

(1)冒頭の30秒
(2)情報が少なく、読み上げる必要があまりないページやスライド
(3)強調したい言葉やメッセージ
(4)「さて」、「ところで」などと接続詞を使って、場面を転換したいとき

リーダーが「カリスマオーラ」をまとうテクニック

   時には、社長や取締役、本部長といった会社の幹部が朝礼やプレゼンをする場面もあるかもしれない。そんなときリーダーが「カリスマオーラ」をまとうテクニックがあるという。

「自信があるフリをするだけで、自信はできる」 「しっかり胸を張って話す」
「語尾が大事。『と思います』『と考えています』という2つの言葉を極力減らす」
「ひとときの沈黙を活用する」

などだ。

   最後に、岡本さんはこれまでに会った日本のリーダーで、最も印象に残っている3人として、ソフトバンクの孫正義社長、日本電産の永守重信会長、ZOZOの創業者、前澤友作氏の名前を挙げている。

   3人に共通しているのは、コミュニケーションを大事にし、言葉というより、ある種の「気」を発しているところだという。元気、妖気、意気、鬼気、熱気、本気......。優れたリーダーほど、「感情」と「熱気」を操り、その「エネルギー」で人を動かします、と書いている。

   上に立つ人ほど、人前で話す機会は多い。岡本さんの仕事のニーズが尽きないわけだ。

   5月は「朝礼」をめぐり、参考になりそうな本を紹介してきた。知れば知るほど「朝礼」は奥が深い世界だと思った。(渡辺淳悦)

「世界最高の話し方」
岡本純子著
東洋経済新報社
1540円(税込)