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コロナ禍で生活保護の申請急増! 原因はコロナ禍なのはわかっているけど......(鷲尾香一)

   新型コロナウイルスの感染拡大による雇用の悪化が、人々の生活に深刻な影響を与えていることが明らかになった。厚生労働省によると、生活保護の申請件数が暦年の2020年に加え、20年度でも増加に転じた。

   厚労省が2021年6月2日に発表した20年度の生活保護の申請件数は、速報値で22万8081件となり、前年度比で5039件(2.3%)増加した。生活保護の申請件数の増加は、リーマン・ショックによる世界金融危機の影響が出た09年度以来、11年ぶりだ。

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2回目の緊急事態宣言の解除後も増える申請数

   厚労省が2021年3月に発表した20年の生活保護申請件数も、22万3622件と前年比1672件(0.8%)増加していた。

   生活保護の申請件数は、政府の緊急事態宣言と密接な関連がある。20年に入り、新型コロナウイルスの感染拡大が始まり、3月に生活保護申請件数は2万1030件と前年同月比7.4%に増加した。そして、4月に緊急事態宣言が出されると、申請件数は2万1486件と同24.9%と大幅に増加する。

   5月に緊急事態宣言が解除されると、申請件数は1万7981件と同9.7%減少に転じ、夏場は新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着いていたことから、8月までは前年同月比で減少が続いた。

   しかし9月に入り、感染が再び拡大の兆しを見せ始めると、生活保護の申請件数は前年同月比で増加に転じた。11月までは前年同月比で3%未満の増加で推移したものの、12月に感染が急激に拡大すると、申請件数も同6.5%増と急増した。

   21年1月に2回目の緊急事態宣言が出されると、申請件数は2万件を超え、2万61件と前年同月比7.2%に増加した。2月も申請件数は1万7424件と件数こそ2万件を割り込んだが、前年同月比では8.1%と大幅増加となった。

   3月18日に2回目の緊急事態宣言は解除されたものの、申請件数は2万2839件と同8.6%増と大幅な増加が続いた。そして、4月23日に政府は3回目の緊急事態宣言を出しており、今後も生活保護の申請件数は増加傾向を辿る可能性がありそうだ=表1参照

   生活保護受給世帯も申請件数に連れた動きとなっている。ただ、基本的には申請件数が増加しても、申請が受理され、需給が開始しないと受給世帯数は増加しない。

審査基準の緩和で申請しやすく

   世帯数の推移をみると、2020年1月、2月と減少し、その後は緩やかな増加傾向を辿っている。

   ただ、前年同月比の動きでみると、2019年12月から20年12月は0.1%減から0.1%増の間での動きとなっていたが、21年に入ると、1月は前年同月比0.2%増、2月は同0.3%増、3月は0.4%増と、増加の一途を辿っている=表2参照

   これは新型コロナウイルスの感染拡大による雇用の悪化を受けていることに間違いはないが、加えて、生活保護申請に対する審査基準が緩和されたことが大きいと思われる。

   世帯類型別では、高齢者世帯が91万1167世帯と全体の55.8%を占め、前月よりも1万1535世帯(0.7%)増加、前年同月比では5140世帯(0.6%)増加しており、日本の高齢者の貧困状態が進んでいることが鮮明になっている。

   加えて、高齢者、母子家庭、障害者・傷病者の世帯を除いた、一般世帯にあたるその他世帯が24万7682世帯と前月比で99世帯増加しており、前年同月比では6521世帯(2.7%)と大幅に増加している。

   これは、一般世帯が新型コロナ禍の影響を受け、生活保護受給に至っていることの表れでもあり、今後の動向が非常に危惧される。(鷲尾香一)