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業績も坂道を上る! 乃木坂銘柄「KeyHolder」を買う(慶応義塾大学 八田潤一郎さん)【企業分析バトル】

   【2本目】株式銘柄の分析方法はさまざまあるが、我々学生だからこそできる分析はないのだろうか――。

   トレンドを意識した分析は大きなヒントになる。少なくても金融のプロや投資家に学生が勝てる一つの強力な武器になるはずだ。そこで、今回は学生(若年層)のあいだで人気の事柄から、株式の銘柄選びをしてみたい。

  • アイドル銘柄を狙う!(写真はイメージ)
    アイドル銘柄を狙う!(写真はイメージ)
  • アイドル銘柄を狙う!(写真はイメージ)

アイドルと銘柄選び

   今回は若年層にも人気のあるアイドルという切り口で探してみたい。アイドルグループの人気ランキングで必ず見かけるのは、秋元康先生の手掛ける坂道グループであろう。坂道グループとひと口に言っても、乃木坂46、欅坂46、日向坂46があり、それぞれのカラーを持つ。

   いずれにしても、近年の写真集の売り上げ部数ランキングにも裏付けされているように、どのグループも男女問わず、人気のある国民的アイドルグループといえる。

   さて、坂道グループをけん引してきた乃木坂46と秋元康氏をキーワードに銘柄を探すと一つの銘柄が浮かび上がる。それが今回の主役KeyHolder(4712)だ。

◆ 変革を遂げた事業構成
   まずはKeyHolderがどのような会社なのか、押さえておく。前身のアドアーズにおいて半世紀にわたり総合エンターテインメント施設の運営を中心に行っており、現在のKeyHolderのアイドルを中心とする総合エンターテインメント、映像制作や広告代理店などの事業構成にシフトしたのは、ごく最近のことだ。
   2018年に前述のアドアーズ売却や20年に不動産事業などを手掛けるキーノートも株式交換によって譲渡した。他方、子会社や合弁会社を相次いで設立、株式取得による子会社化、業務提携などをここ数年で矢継ぎ早に行い、目まぐるしく変化している。
   特筆するべきなのは、秋元康氏の当社特別顧問就任、SKE48事業の承継、そして何よりノース・リバーの連結子会社化(併せて同社が50%の持分を保有する乃木坂46 合同会社を持分法適用会社化 )だ。
ひと言でまとめると、秋元康氏の手掛けるアイドルグループを筆頭とする総合エンタメを軸に事業ポートフォリオの入れ替えを行ったのだ。このスピード感で事業転換を進めていることは驚きだ。

図1 グループ体制(出典:2020年12月期 決算説明会資料)
図1 グループ体制(出典:2020年12月期 決算説明会資料)

「V字回復」に注目

   次に、なぜ注目するのか。収益がV字回復したことが最大の要因だ。前述したように、ここ数年、事業ポートフォリオの入れ替えに注力しているため、主力事業のグループアウトや先行投資によって、収益状況は厳しいと言わざるを得なかった。

   しかし、20年通期連結業績の実績と来期のガイダンスを見る限り、赤字を脱却し、大幅な黒字転換したうえに、来期以降も黒字化が定着したとみえる。つまり、ポートフォリオ入れ替えや先行投資の効果が着実に表れた結果といえよう。

●映像制作
秋元康先生の番組企画「日向坂ですちょっといいですか?」や3坂道共演ドラマ「ボーダレス」の制作

●デジタル・コンテンツ
ゲームアプリ「乃木恋」の運用

●広告代理店
SKE48や乃木坂46の起用
また、以上に挙げた例を筆頭にアイドルを核としたグループシナジー効果が表れており、収益を押し上げる一因となっているはずだ。

図2 業績(出典:2020年12月期 決算説明会資料より業績関連資料2枚抜粋)
図2 業績(出典:2020年12月期 決算説明会資料より業績関連資料2枚抜粋)

   もっとも、売り上げと利益両面における最大の貢献がノース・リバー(乃木坂LLC、持分法適用会社)によるものである点は強調しておく。

   昨年(2020年)開催されたエースメンバー白石麻衣さんの卒業コンサートではチケット販売数22万9000枚、推定視聴者数68万7000人、今年のデビュー9周年記念ライブでは2日間合計視聴チケット販売数24万1585枚、推定視聴者数72万人と報道されている。

   デビューから10年という節目の年を迎えようしているが、圧倒的人気を誇っているのだ。コロナ渦でライブや握手会の在り方も大きく変化しているが、決算説明会資料では「有観客興行の可能性及び配信ライブ等の機会を最大化、ECサイトを通じた物販及びモバイル会員向けのコンテンツの充実化を図る。」という方針を打ち出している。

KeyHolderの株式や資本の動きが活発なワケ?

   ここまでみてきたように、ポートフォリオ入れ替えや先行投資により、コロナ禍の影響を受けつつも業績は好調だとわかる。一方で事業転換や投資は莫大な費用を要する。ここでは財務についてみていこう。CF計算書をみると、2019年に引き続き20年も積極的な投資活動を行っていると確認できる。

   この点は営業キャッシュフロー(CF)の増大や貸借対照表(BS)において「新株予約権の行使及び新株式の発行による資本金、資本準備金の増加」を確認できることから特段問題がないと私は判断する。とりわけ、新株予約権と新株式については掘り下げてみていく。

   同社は第一興商とSMEJ Plusに第三者割当増資と資本業務提携を締結し、「戦略的パートナーとのアライアンス」と位置付けている。また筆頭株主であるJトラストが保有する株式の一部をミクシィ、フジパシフィックミュージック他3社に相対取引により譲渡している。

   さらに2018年まで遡ると特別顧問も務める秋元康氏などを割当先とする第2回新株予約権発行を行っており、行使価格や条件はこれからの株価上昇を予感させる。

   それではなぜ、株式や資本の動きが活発なのか――。その答えは同社の中長期戦略の「エージェント構想とファンクラブプラットフォーム」にあるのではないか。

   同社はアイドル以外にも日本レコード大賞において新人賞を受賞したNovelbrightをはじめとする、人気急上昇中の新人アーティストを多くマネジメントする。それらで培ったノウハウと資本業務提携先を活かし、「今後の新進気鋭アーティストの早期獲得と運用を実施するための"エージェント構想"」と「"エージェント構想"を活かすためのファンクラブプラットフォームを構築」すると説明している。

   最後に株価水準についてみていく。先の株式会社ノース・リバーの株式取得に関わるリリースにより、20年6月に2000円を突破する。その後21年1月に800円台の直近安値を境に現在は戻り基調だ(株価は株式併合考慮済)。大手の同業他社にあたるアミューズ(4301)と予想PER(株価収益率)、実績PBR(株価純資産倍率)の観点で比較した場合、KeyHolderの株価に特段割高感はない。

   新型コロナウィルスで大きく変わるエンタメ業界。その中でも恐れず、変化を遂げている同社はアフターコロナ銘柄としても期待できる。坂道グループ同様、株価も坂道をすでに上り始めているのだ。

   したがって、6月9日、始値と同じ1000円で500株を購入した。

KeyHolder(4712)
年初来高値(2021年5月10日)    1148円
年初来安値(2021年1月15日)      817円
株式取得時の株価(2021年6月9日)  1000円
取得株数                500株

八田 潤一郎 (はった じゅんいちろう)
慶應義塾大学 八田 潤一郎 (はった じゅんいちろう)
慶応義塾大学法学部政治学科2年。学生投資連合USIC代表。
小学生の時に株式投資を始め、アベノミクス相場で大きく資産を増やすも、2015、16年のチャイナショック、18、19年の米中貿易摩擦を経て、機関投資家や地合いの影響を比較的受けにくいニッチな小型銘柄の長期投資にシフト。20年のコロナショックで分散投資とリスクヘッジの重要性を認識し、FX、不動産、暗号通貨、コモディティ、デリバティブを新たに運用しながら、毎日勉強中。金融を学ぶ「おもしろさ」、投資の「楽しさ」を多くの人に知ってほしいと願う。
◆企業分析バトル カブ大学対抗戦のルール
・月額200万円を投資金額の上限とするバーチャル投資です。
・投資対象は新興市場を含む、国内の上場企業の現物取引です。
・運用期限は最長で6か月。銘柄選定の最終月は10月になります。
・順位は11月末時点で、投資した銘柄(企業)の売買や配当で得た収益の騰落率で決めます。
学生投資連合USIC

「学生の金融リテラシー向上」を理念に全国26大学1000人以上で構成。企業団体・官公庁との勉強会の開催、IRコンテストの運営、金融情報誌「SPOCK」を発行する。
http://usic2008.com/