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定年男性は要注意! 生活習慣の変化が火災のきっかけになる?(鷲尾香一)

   住宅火災での死者の約7割が65歳以上の高齢者となっている。

   こうした状況に対して、総務省は「高齢者の生活実態に対応した住宅防火対策のあり方に関する検討部会」を行い、2021年6月18日に報告書を発表した。

  • 住宅火災での死者の約7割が65歳以上の高齢者だ
    住宅火災での死者の約7割が65歳以上の高齢者だ
  • 住宅火災での死者の約7割が65歳以上の高齢者だ

同居者がいる世帯のほうが死者数が多いワケ?

   住宅火災による死亡者を年齢階層別に見ると、59歳未満の死亡者数が減少しているのに対して、60歳以上の年齢で死亡者が高止まりしており、特に、70歳以上の高齢者で死亡者数が増加している=表1参照

   また、特徴的なのは全年齢層で同居者のいるほうが、一人暮らしよりも死者数が多い点だ。その格差は、70歳以降に大きくなる。

   高齢者の同居者のいる人と一人暮らしの人を比較すると、2014~18年の合計では世帯数で独居26.5%、非独居73.5%、死者数で独居40.3%、非独居59.7%となっている。報告書には詳細な分析が書かれていないものの、類推すると、同居者がいる世帯のほうが火を使うケースが多いためだと思われる。

   住宅火災の出火原因別死者数では、「こんろ」による出火がもっとも多いものの、その件数は年々減少している。2019年には1818件の出火があった。次いで「電気関係」が19年に1633件の出火原因となっている=表2参照

   なお、電気関係とは、出火原因が「電灯・電話等の配線」「配線器具(テーブルタップ等)」「電気機器」「電気装置(コンデンサ等)」の合計だ。

   「たばこ」が出火原因となった火災も1420件にのぼるが、年々減少している。これは、喫煙者の減少に起因している。「ストーブ」による出火は842件と、こちらも減少傾向を辿っている。

   出火原因別の死者数で見ると、「たばこ」は2014~18年合計で681人(男性 514人女性 167人)となっている。このうち、男性では65~69歳99人、70~74歳70人、60~64歳67人、75~79歳64人と65歳以上の高齢者だけで316人と全体の61.5%を占める。

   女性では75~79歳33人、70~74歳27人、85歳以上26人、80~84歳25人と65歳以上の高齢者が131人で全体の78.4%を占めており、高齢者の男女合計では447人と全体の65.6%を占めている。

「電気関係」の出火原因、増える傾向

   「ストーブ」は2014~18年合計で555人(男性 314人女性 241人)。このうち男性85歳以上83人、75~79歳52人、80~84歳51人、70~74歳44人で65歳以上の高齢者だけで255人と全体の81.2%を占めている。

   女性は85歳以上78人、80=84歳57人、75~79歳38人で、65歳以上の高齢者だけで207人と全体の85.9%を占める。男女の高齢者合計は462人と全体の83.2%を占める。ストーブによる火災による死亡者は、そのほとんどが高齢者によるものだ。

   ストーブの種類としては、電気ストーブと石油ストーブが概ね45%ずつを占めている。また、寒冷地は石油ストーブ、それ以外の地域は電気ストーブによるものの割合が高く、地域差が見られる。

   「こんろ」は、男女で傾向が異なる。女性は高齢化に従って死者数が増加するのに比べて、男性では65~69歳で急に死者数が増加する。これは、定年退職などで料理をするようになるなど、生活習慣が変わることに起因しているのではないかと思われる。

   「電気関係」は、他の要因と異なり近年増加傾向にあり、高齢化するに従い大幅に増加している。また、男性では60~64歳で急に死者数が増加しており、「こんろ」と同様に男性の生活習慣が定年などを契機に、変化することに起因しているのではないかと思われる。

   総務省の同検討部会は、近年の住宅火災による年齢階層別死者数は、65歳以上の高齢者の占める割合が約7割と高水準で推移していることから、高齢者の死者数の低減を図ることを目的に、高齢者の生活実態などに対応した効果的な防火対策について検討した。

   その結果、火災警報装置が付いた安全性の高い機器の使用を促進して、出火危険を低減させることが必要であり、その周知についても、高齢者が参加しやすい行事への参加や高齢者と接する機会の多い事業者など、さまざまな関係団体などとの連携強化が重要であることを明らかにしている。

   また、早期覚知、初期消火および早期避難対策についても、こうした検討結果を周知するとともに、住宅における火災危険の排除を高齢者や高齢者家族が自ら行えるような、新たな仕組みの構築を今後実施する必要があるとしている。(鷲尾香一)