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30歳で「年収1000万円」のリアルな働き方は? 野村総合研究所、みずほ証券、伊藤忠商事、三菱重工業、第一生命保険ら若手の声

   コンサルタント、金融アナリスト、総合商社の営業、プラントエンジニア、操縦士、医師、弁護士......。30歳前後で年収1000万円を超える人々がいる。彼ら、彼女たちはどんな働き方をしているのだろうか。

   転職のためのジョブマーケット・プラットフォーム「OpenWork」を運営するOpenWork働きがい研究所が2021年6月30日に発表した「30歳で年収1000万円を狙える職種」という調査結果から浮かび上がる「年収1000万円」のリアルな現実とは――。

  • 年収がグンと上がる仕事はコレだ(イメージ)
    年収がグンと上がる仕事はコレだ(イメージ)
  • 年収がグンと上がる仕事はコレだ(イメージ)

野村総合研究所「うちより年収が高い会社はないのでは」

   「OpenWork」は、社会人の会員ユーザーが自分の勤め先の企業や官庁など職場の情報を投稿する国内最大規模のクチコミサイト。会員数は約400万人(2021年1月時点)という。

   OpenWorkに投稿された会社評価レポートのうち、「年収・給与」というキーワードをもとに、30歳前後で年収1000万円近くを得る職種・企業をピックアップした。職種別にみていくと――。

コンサルタントは若いうちから高待遇(写真はイメージ)
コンサルタントは若いうちから高待遇(写真はイメージ)

(1)コンサルタント

   職位によって大きく報酬が異なるコンサルティング業界だが、戦略系、IT系、外資、日系企業...。それぞれで若手のうちから高待遇人が多いようだ。

■シニアビジネスアナリスト、A.T.カーニー、女性
「年俸制。残業代なし。ベース報酬に加え、会社業績と個人成績に応じて年間ボーナスが出る。ランクが高い人ほどベース報酬に対してボーナスの掛け率が高い。たとえばベース報酬はアソシエイトで1300万円以上、マネジャーだと1600万円以上。社会人5年目の転職時に年収700万円だったが、1年後に1000万円、2年後に1300万円になった」

■ITコンサルタント、アクセンチュア、女性
「新卒入社6年目、29歳、マネジャー。年収1000~1100万円。ほぼ等級ごとに年収がアップ。昔は、スタッフは残業すればするほど稼げるといわれたが、最近は残業時間規制が厳しいため、スタッフで年収1000万円超は正直厳しいと思う」

■コンサルタント、ボストン・コンサルティング・グループ、女性
「新卒入社5年目、28歳、年収1000万円。基本給に賞与が加わる」

■コンサルタント、経営共創基盤、男性
「新卒入社だと5年目(マネジャー手前)で年収1000万円前後が相場。福利厚生はほぼないが、借り上げ社宅制度があるので多少節税できる」

■コンサルタント、野村総合研究所、男性
「年収は非常に高い。弊社より高い会社はあまり存在しないのではないか。上級専門職までは遅かれ早かれ必ず全員到達するのだが、上級専門職の給与レンジ(幅)は年収1400万円~1700万円ほど。早ければ34歳、遅くとも39歳までには上級専門職になれる。30歳で主任になり、年収1100万円~1250万円の給与レンジになる」

■マネジャー、アビームコンサルティング、男性
「入社6年目、30歳、年収1000万円。ベースはランクに比例。若手は残業手当プラスアルファがつく。賞与は年2回、昇給は1回」

三菱商事「海外駐在だと年収が2倍になるイメージ」

(2)金融系専門職(投資銀行部門のアナリストなど)

   企業の資金調達支援やM&Aのアドバイザリーなどを行う投資銀行部門は、金融機関の中でも高待遇である一方、激務であることも知られている。

■アナリスト、SMBC日興証券、男性
「若手の頃は住宅補助が75%出るのが非常にありがたかった。しかし、6~7年目で多くの人が昇格するが、昇格すると住宅補助が出なくなるうえ、みなし残業となる。そのため、残業の多い部署の人や、既婚で住宅補助をたくさんもらっていた人の場合、昇格前の給料水準に戻るまでに数年を要することになる。ただ、30歳までに年収1000万円を超えることができるため、同世代と比べれば給料はもらえている印象だ」

■アナリスト、バンク・オブ・アメリカ・エヌ・エイ東京支店、女性
「1年目でもボーナスが400万円ぐらい出たと記憶しています。基本給約800万円+ボーナス400万円=年収1200万円でした。また、賃貸を法人契約にすると手取りが税金分浮くので、ほとんどの社員が利用していました」

■アソシエイト、みずほ証券、男性
「アナリストのうちは、基本給月27万5000円+残業代+ボーナス=年収600万円前後。また、借り上げ社宅制度が利用でき、家賃11万円くらいのマンションに月1万1000円で住むことができる。GIB(グローバル投資銀行部門)コースやGMK(グローバルマーケッツ部門)コースで入社した者は、アソシエイト昇格後に3~4年目から基本給とは別に毎月特別職務給が支給されるようになり、年収が1000万円前後となる。私が所属する部門は業績がよかったため、4年目で年収が1200万円を超えた。また、家賃補助は独身者で月5万円、既婚者で10万円ほど支給される」

■アナリスト、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、男性
「ベース+ボーナス。ベースは日本企業でいう給与であり、年功序列で横並びと思われる。ボーナスは賞与であり、評価によってかなり差がある。年次にもよるが、同じ役職でも5倍程度差があるといわれる。アナリスト(1~3年目):ベースは年収900~1000万円、アソシエイト(4~7年目):ベースは年収1500~2000万円、ヴァイスプレジデント(8~10年目):ベースは年収2000~3000万円」

(3)総合商社の営業職

   年功序列の年収カーブが色濃く残る日系企業の中でも、総合商社はかなりの高待遇で知られる。特に、海外駐在の場合は手厚い手当によって十分に年収1000万円を超えてしまう。

■伊藤忠商事、男性
「給料は日系企業の中ではかなりもらっているほうだ。大手商社間ではあまり差はないと思うが、30歳で年収1000万円を超える。海外駐在になると、住居・海外駐在手当などがつき、かなり手厚い。年功序列。30歳前後までは同期の間に差は付かないが、その後大きく差がつく」

■三井物産、男性
「ストレートに23歳で入社すれば、20代での年収1000万円は確実。管理職になる入社10年目までは毎年昇格し、少なくても年収1300~1500万円までは誰しもが届く。年収の中でボーナスの占める割合が大きい。人事制度が改定され、今後いかにメリハリがついた評価になるかは期待」

■三菱商事、男性
「28歳、額面年収は1200万円前後。海外駐在の場合、手取り年収が2倍になるイメージ。ボーナスの割合が非常に高く、管理職になると年収の半分以上がボーナスとなる。また、最速31歳くらいで管理職になると、年収はさらに上がっていく」

■住友商事、男性
「入社8年目。海外駐在であれば、海外手当+税金の会社負担により手取りで年収1250万円程度+家賃補助(月30万円)。国内勤務であれば、額面年収1200万円(ボーナス込み)といったところ。10年目まではほとんど同期の間で差がつかない」

(4)プラントエンジニア(海外駐在)

   石油や液化天然ガス(LNG)などの大規模プラント建設を技術力で支えるプラントエンジニア。海外赴任となった場合、商社同様のかなりの高待遇になるようだが、口コミからは激務であることがうかがえる。

■千代田化工建設、プロジェクトエンジニア、男性
「入社4年目、海外現場赴任、年収900~1000万円。海外赴任すると、多くの残業代および海外赴任手当が含まれるため、日本オフィス勤務時の2倍以上の年収になる」

■日揮グローバル、エンジニア、男性
「海外の現場に行けば20代でも年収1000万円は超える。お金を使う機会がないので、同年代の中では給与、貯金額はトップクラスに。しかし、その分残業が多く、プライベートは皆無である。そして、日本に帰国後は高い税金が待ち受けているため、5年目でも入社時より手取りの給与は低くなるケースも。日本での給与の低さに不満を持つ社員は多いように感じる」

■三菱重工業、エンジニア、男性
「新卒入社7年目。年収1000万円。海外勤務。働いた分だけもらえます。長時間残業だが、みなし残業はありません。ただ、拘束時間が長いため、休みがなかなかとれない。海外に行けば、その分手当がつくため、毎月ボーナスのような感じで給与がもらえる」

大和証券「成果をあげればあげた分給与に反映される」

(5)フルコミッション型営業職(証券、保険、不動産)

   契約件数や売り上げに応じてインセンティブ報酬が得られる営業職では、年齢にかかわらず個人の成績によって年収1000万円を目指すことが可能だ。しかし、好成績を維持できなければ給与が下がる厳しさも伴う。

■大和証券、営業、女性
「成果をあげればあげた分給与に反映される。評価は適正だと思う。20代のうちに年収1000万円になる可能性が十分にある」

■野村證券、営業、女性
「入社1年目:年収300万円+インセンティブ。入社5年目:年収1000~2000万円。営業職はインセンティブが高いので 、とりあえず2000万円くらいの年収を目指すよう指導されました。会社が大きく、健康保険料負担が安くなるよう総務が尽力してくれるので、額面に対してもらえる金額が多かった。一般的に手取りは額面の80%ほどと言われますが、85%以上もらっていたように記憶しています」

■プルデンシャル生命保険、営業、男性
「1年目年収1000万円。当初2年間は研修期間とされ、20代で入社しても、40代で入社しても、同じように補給金が支払われる。2年間かけて補給金がシュリンク(縮小)して、研修期間後は、完全フルフルコミッションの世界へ移行する。初年度はお預かりした保険料の約40%が初年度手数料として、2年目から4年目までは6%が継続手数料として手元に入ってくるイメージ。1度契約をお預かりしても、4年後にはそこからあがる報酬がなくなるので、常に営業をし続けることが必須になってくる」

■第一生命保険、営業、女性
「20代前半でも年収400~500万円。20代後半で年収1000万円超えの人もいる。資格を維持できればたくさんもらえる。維持できなければ下がる。ずっとやり続けなくてはならないのが少しつらい」

■大和ハウス工業、営業、男性
「固定給のほかに賞与とインセンティブがある。インセンティブの割合が非常に高く、よく契約を結ぶ営業マンだと20代で年収1000万円以上いくケースはある。ただ、継続してその収入をキープできないため、翌年まったく仕事がきまらず税金に苦しめられる者もいる」

医師「大学病院の給与は高くないが外勤で稼ぐ」

年収が上がるとやる気が出る?(イメージ)
年収が上がるとやる気が出る?(イメージ)

(6)難関資格専門職(医師、パイロット、弁護士、会計士)

   資格取得に難関国家試験のパスを必要とする職種では、その専門性から報酬も高くなる。

■医師、自治医科大学、女性
「大学そのものの基本給は高くはないが、外勤が解禁となる3年目以降は確実に年収1000万円前後に到達するのではないか。大学病院としては平均的」

■医師、聖隷福祉事業団、男性
「30歳、年収1200万円(当直代込み)。年功序列による昇給」

■副操縦士、ジェイエア、男性
「年齢と年次で決まる。ボーナス込みで年収1000万円。ST(乗れる制度)はワンワールドとJAL便のみ。住宅手当はほぼないが、会社の借り上げ社宅(独身者用)は結構キレイで新しい部屋。2万~2万5000円の費用負担あり。育休制度はしっかりあるが、パイロット不足のため、取ろうとすると渋られる」

■弁護士、毛利・友常法律事務所、男性
「アソシエイト、25~40歳:年収1200~1500万円。顧客への請求は、作業弁護士の単価×時間(タイムチャージ制)。年次が上がると若干単価が上がっていく(年収額に反映)」

■会計士、有限責任監査法人トーマツ、男性
「マネジャーになると、残業代は出ないが、年収1000万円は超えてくる。SS(編集部注:マネジャーの下のシニアスタッフ)でも残業多めなら年収1000万円近くはすぐにいく。優秀な人は20代で年収1000万円超えも可能」

   今回の調査について、OpenWork(オープンワーク)の大澤陽樹社長は、こうコメントしている。

「30歳で年収1000万円を超える職種というテーマで分析しました。年収・給与がすべてとは思いませんが、じつは、OpenWorkのデータで一番閲覧されるのが、〈年収・給与〉に関する項目なのです。仕事を選ぶうえで多くの人にとって重要な指標であることは間違いありません。
一方で、年収が高いからといって生きがいが得られるとは限りません。当社の口コミをある研究機関に調べてもらったところ、働きがいは待遇面だけでなく、企業風土や成長環境とも強い相関がありました。年収だけにとらわれず、自分にとって働きがいは何か、それを満たす職業・仕事は何か、を考えることが大切でしょう」

(福田和郎)