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外国人選手や記者はルール無視のやりたい放題!? 「穴」だらけの水際対策でお先真っ暗な東京五輪(2)

   新型コロナウイルスの感染が猛烈に広がるなか、東京五輪・パラリンピックの開幕まで1週間に迫った。海外メディアの中には「ゴジラ変異株の誕生か!」とまで危機感を募らせるところもある。

   しかし、外国選手団らの入国ラッシュがピークを迎えるにつれ、水際対策のザル状態が明らかになってきた。感染防止対策の要である「バブル方式」が崩壊しているのだ。

   大丈夫か、ニッポン!

  • 「違反者は厳しく処分する」という丸山珠代五輪担当相だが…
    「違反者は厳しく処分する」という丸山珠代五輪担当相だが…
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ルールを守らない外国選手と海外メディア記者

   プレーブック違反といえば、こんなケースが横行している。TBS記者が、海外メディアが多数宿泊するホテルに行くと、記者たちがコンビニに買い出しに来ていた。英国の記者に聞くと、「ホテルから徒歩15分圏内であれば、外出できるというルールがある」と悪びれずに話したが、もちろん嘘で、そんな規定はプレーブックに記載されていない。

   NHK記者が選手村に近い東京・築地の場外市場に取材に行くと、数人のアフリカ人選手が散策していた。どこの国から来たのか聞くと、「2時間ほど前に入国したばかり」とのこと。入国後すぐにバブルの外に出たわけで、市中の散歩を禁じたプレーブック違反だ。

大集団が食事をする選手村ダイニングルーム(組織委公式サイトより)
大集団が食事をする選手村ダイニングルーム(組織委公式サイトより)

   朝日新聞が空港を取材しても、ルールなど守られず、大混乱状態だった。「来日選手団、不完全なバブル 空港予定把握しきれず、ホテル『入国何日目か不明』」(7月15日付)によると、こんなありさまだ。

「成田空港第1ターミナルの北ウイング。多くの選手団が乗った旅客機が到着すると、マスクと防護服を身につけたリエゾンと呼ばれる誘導役が出迎えた。手には『Tokyo2020 Athletes(アスリーツ)』と書かれた案内の紙。他の乗客と一緒に降りてくることも多い。『降りてくる乗客にバンバン声をかけて選手、関係者を見つけて。混じっているから』。経験の浅いリエゾンにベテランから指示が飛ぶ。
水際対策の現状について、国の担当者の1人は『選手団と一般客の完全な遮断は不可能だ』と認める。空港関係者は『選手団の突然のキャンセルや予定にない来日はしょっちゅう。急に予定のない数十人規模が来たこともあった。組織委やホストタウンなど、どこが予定を把握しているのか、よくわからない』と明かした」

「空港が大変なことになっている!」

   朝日新聞は、こう指摘する。

「7月13日に成田空港に到着した南アフリカのラグビー選手団21人は、搭乗機内に感染した乗客がいたことが判明。選手ら計18人が濃厚接触の候補者となり、一時滞在施設に移った。21人は全員陰性だった。今回は機内での濃厚接触疑いだったが、空港内で一般客と選手が混じることで、リスクはさらに高まる。ブラジル選手団があらわれると、ボランティアなど約50人が手を振って迎えた。一団は専用ルート内を進むが、一般客とスマホで自撮りをしたり、グータッチしたりする場面もあった」

   そして、「密」になった大混乱の中を選手村や、それぞれの宿舎先に向かうわけだが、宿泊施設では感染症対策の甘さが指摘されている。朝日新聞がこう伝えた。

「空港を出て、大会関係者らが向かうのが、滞在先のホテルなどだ。『(出入りする大会関係者がそれぞれ)入国何日目なのか、ホテルの側では把握していない。そもそも我々の仕事ではないですし』。大会関係者を受け入れる都内のホテル支配人は打ち明ける。このホテルには現在、海外メディアやスポンサー企業など計93人が宿泊。大会関係者は最大で約200人まで増える見通しで、ホテル全体の半分を占める。
プレーブックでは、入国から14日までは公共交通機関が使えないうえ、事前に申請した場所以外は行けないなどの制限がある。ただ、誰が14日以内の人なのか見分けがつかない。
玄関には組織委から派遣された警備員がおり、大会関係者の行動を見ているが、『全員をチェックするのは現実的でないのでは』と支配人は見る」

   事実上、野放しだというわけだ。

組織委責任者も「感染が悪化したら中止だ」

選手村住居棟と送迎バス。移動は専用車両だけのはずだが守られるか?(組織委公式サイトより)
選手村住居棟と送迎バス。移動は専用車両だけのはずだが守られるか?(組織委公式サイトより)

   7月16日付の朝日新聞「天声人語」によると、6月のニューヨーク・タイムズの記事にこんな記述があったという。

「東京で感染が拡大すれば、『ゴジラ変異株』と呼ばれるかも」

   大会組織委の感染対策責任者も危機感を募らせる。感染状況が悪化したら、五輪を中止すべきだと発言したというのだ。朝日新聞(7月16日付)「『医療の状況次第では五輪の中止を』組織委座長が考え」が、インタビューを伝える。

「組織委で感染症対策にあたる専門家の円卓会議で座長を務める岡部信彦・川崎市健康安全研究所長は、朝日新聞の取材に『感染が拡大し、『第4波』に見舞われた際の大阪府のように、東京都で入院すべき人が入院できないような状況になったら大会の中止も考えるべきだ』との考えを明らかにした。
岡部氏は政府の新型コロナウイルス対策分科会メンバーで、内閣官房参与も務める感染症の専門家。必要な医療が受けられない状況になれば、『五輪をしている場合じゃない』と述べ、会期中であっても政府や組織委に中止を求める考えを示した」

   岡部氏は政府分科会の尾身茂会長ら有志25人とともに6月、無観客で五輪を開催するように求める提言を出した。提言では大会期間中に医療がひっ迫する恐れが高まった場合、「時機を逃さずに、強い対策を躊躇(ちゅうちょ)なくとってください」と求めていた。それを実行するつもりのようだ。

(福田和郎)