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【SDGsニュース】SDGs「行動の10年」なのに...... 半数以上の企業が「取り組んでいない」

   企業のSDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)への取り組みが活発になってきている一方で、「取り組んでいない」企業が50.5%と半数にのぼることが、帝国データバンクの調査でわかった。積極的な企業は39.7%だった。2021年7月14日の発表。

   SDGsは2015年9月の国連サミットで、世界193か国が産官学民などのステークホルダーとともに同意した「2030 年アジェンダ」に掲載されている世界共通の目標。2030 年の SDGs 達成に向けて、20年1月からは「行動の 10 年(Decade of Action)」に位置付け、取り組みの加速が期待されている。

  • SDGs、半数が「取り組んでいない」
    SDGs、半数が「取り組んでいない」
  • SDGs、半数が「取り組んでいない」

中小企業、社会的責任よりも自社の業績アップ

   調査によると、自社でのSDGsへの理解や取り組みについて、「意味および重要性を理解し、取り組んでいる」企業は14.3%で、前回調査(20年6月)から6.3ポイント増えた。また、「意味もしくは重要性を理解し、取り組みたいと思っている」は 25.4%で同 9.0 ポイント増。合わせて、「SDGsに積極的」な企業は前回から15.3ポイント増の39.7%となり、より大きく増えた。SDGs に対する企業の取り組みや意識は前年より大きく拡大している。

   取り組んでいる企業からは、

「取り組むことで今まで見えなかった課題が見えてきた。社会貢献のみならず新たな顧客サービスを生み、ひいては業界全体の発展につながると思う」(缶詰・瓶詰食品卸売、広島県)
「今まで取り組んでいた内容をSDGsの項目に落とし込んだことで意識するようになった」(特殊産業用機械機器具卸売、埼玉県)

   と、前向きな声が聞かれた。

   その一方で、「言葉は知っていて意味もしくは重要性を理解できるが、取り組んでいない」が41.4%となり、前回から8.5ポイント増で4割超となり、全体で最も多かった。また、「言葉は知っているが意味もしくは重要性を理解できない」は9.1%で、合わせて50.5%と半数を超える企業が、SDGsの存在を知りつつも「取り組んでいない」ことがわかった。

「中小企業にとって社会的責任の比重は自社の業績に比較して明らかに低く、明確な対応をとるレベルではない」(一般製材、愛媛県)

   といった声があった。

建設業や卸売業などで取り組み不足

   SDGsへの企業の意識を規模別にみると、「大企業」ではSDGsに積極的な企業が55.1%で、半数を上回った。一方で、「中小企業」では積極的な企業は 36.6%で、大企業より18.5 ポイント下回り、さらに「小規模企業」では31.6%で大企業より23.5ポイント下回っている。

   中小企業と小規模企業ではSDGsに取り組んでいない企業がいずれも 5 割を上回るなど、大企業と中小企業、小規模企業の間には、大きな意識の差が表れた。

   中小企業からは、

「目標が壮大過ぎて、取り組みようがないというところが正直なところ」(食料品加工機械製造、大阪府)
「自社業務の延長線上の事には取り組めるが、コスト人的資源などから新たな取り組みへのハードルが高い」(はつり・解体工事、千葉県)

   といった声が多かった。

   業界別にみると、積極的な企業は「金融」が 56.0%で最も高かった。次いで、「農・林・水産」が55.6%で半数を超えた。一方で、SDGsに取り組んでいない企業は「卸売」が52.9%で最も高く、「運輸・倉庫」が51.0%、「サービス」の50.8%、「建設」50.4%の4業界が5 割を超えた。

SDGsの「17の目標」
SDGsの「17の目標」

注力する目標は「働きがいも経済成長も」

   調査では、SDGsの「17の目標」の中で現在力を入れている項目(複数回答)を聞いたところ、目標の「8」に掲げられている「働きがいも経済成長も」が32.0%で最も高かった。企業にとって取り組みやすい目標であることが、割合が高い一因とみられる。

   次いで、「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」が22.3%、「つくる責任つかう責任」の20.9%が 2 割台で続いた。実際の企業活動と結びつきやすい項目では割合が高い一方で、「飢餓をゼロに」(4.8%)や「安全な水とトイレを世界中に」(6.3%)など 7 項目では 1 割未満にとどまった。

   また「わからない」とした企業も32.1%となり、SDGsの取り組みが浸透していない様子もうかがえる。

   現在力を入れている項目を前年と比べてみると、近年注目が集まっている再生可能エネルギーの利用なども含まれる「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」が 6.4ポイント増で最も増加していた。次いで、「つくる責任つかう責任」(6.1ポイント増)や「働きがいも経済成長も」(4.9ポイント増)、「気候変動に具体的な対策を」(4.8ポイント増)などで前年からの増加が目立っている。

   また、SDGsに積極的な企業の景況感を表す「SDGs景気DI(総合)」をみると、2021年6月のSDGs景気DI(総合)は41.1と、全体の景気DIを上回る水準で推移した。17目標別では、「産業と技術革新の基盤をつくろう」や「人や国の不平等をなくそう」が高かった。

   なお、調査は2021年6月17日~30 日に実施。対象は全国2万3737 社で、有効回答企業数は1万1109 社(回答率 46.8%)。SDGsに関する調査は2020年6月に続いて2回目。