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やっと出会えた「天職」が市役所の非正規職員 女性の投稿が賛否激論! 正規公務員からは「無責任で楽チン」と...(2)

「周囲の人は優しいし、ノルマはないし、仕事が面白くて仕方がない。何よりいろいろな条例や法律を知ることが楽しい」

   40歳独身。大学卒業後、新卒入社の会社でいじめられて病んで退職後、職を転々とした女性がようやく「天職」と思える仕事に出会った。市役所の非正規職員だった。

   しかし、いずれ退職しなくてはならない。正規職員を目指すには難関の「氷河期枠」の試験を突破しなくてはならない。どうしたらよいかという投稿が話題になっている。

   正規の公務員経験者たちからは、

「非正規の人は責任がなくて楽チンだ。それを『天職』というのはおこがましい」

と冷ややかな意見が相次いだ。

   一方、

「『天職』と思うのならぜひ氷河期枠に挑戦しなさい!」

と熱いエールを送る人も多い。専門家に聞いた。

  • 正規の公務員試験や氷河期枠に挑戦すべきか悩む(写真はイメージ)
    正規の公務員試験や氷河期枠に挑戦すべきか悩む(写真はイメージ)
  • 正規の公務員試験や氷河期枠に挑戦すべきか悩む(写真はイメージ)

「人は生涯にわたって天職探しの旅を続ける」

――確かに投稿者は「今の仕事が天職のようにやりがいがあり、楽しい。ずっと続けたい」と願っていますが、正規の公務員経験者からは「非正規で責任がないから楽しいのだ」と批判されていますね。

川上さん「まず整理しておく必要があるのは、正規か非正規かというのは雇用形態の違いであり、『天職』か、否かとは別次元の概念だということです。そのため、投稿者さんにとっての『天職』がどういうものなのかを考えるうえでわかりづらくなると思います。投稿者さんが『天職』だと感じている今の仕事には以下の特性があるようです。
・ルーチンワークの多い事務職
・いろいろな法律や条例を新しく知ることができる
・無理のない業務量に抑えられている
・自分の仕事に自信を持つことができる
・穏やかな人に囲まれている
投稿者さんにとって、これらの特性を同時に満たすことができる仕事であれば、今とは別の仕事であっても『天職』だと感じられる可能性があるのではないでしょうか。別の役所の非正規職員の求人も、これらの特性を同時に満たす仕事としてイメージしやすい一つなのだと思います。
しかし、民間企業の中にも上記の特性を満たす求人もあるかもしれません。雇用形態や公務員など、ピンポイントで条件を設定してしまうと、最初から選択肢を狭めてしまいます。まずは、投稿者さんご自身にとって、『天職』だと思える仕事とはどういうものかを洗い出して言葉にし、そのイメージを優先条件にしたうえで、できる限り幅広く求人情報を覗いてみてはどうかと考えます」

――なるほど。なぜ天職だと思えるのかを、しっかり考え抜いて、同じ条件の仕事を探してみては、ということですね。一方、「頑張って公務員試験に挑戦すべきだ」「氷河期枠にチャレンジすべきだ」という応援エールや、資格取得の勉強を始めては、というアドバイスも多く寄せられました。

川上さん「公務員試験や氷河期枠はもちろん、他の民間の求人であっても、少しでも『天職』に出会える可能性がありそうであれば、どんどんチャレンジして選択肢を増やしていくことが大切です。
資格は取得するだけでは仕事につながるとまでは言えませんが、資格勉強をすることで新たな知識が得られ、仕事能力を高める上でプラスだと思います。ぜひ、取り組んでみられるとよいと思います」

――一般論として、『天職』と思える仕事に出会った時、人がどうすべきでしょうか。

川上さん「『天職』だと確信できる仕事に出会える人は、必ずしも多くないように思います。それよりも、『天職』に出会いたいと思いつつ、この仕事のココは好きだけどココは好きになれない、といった葛藤を抱えながら仕事に従事している人が大半なのではないでしょうか。

投稿者さんが『天職』に出会えたことは、素晴らしいと思います。ただ、人は経験とともに生活環境が変わったり価値観が変化したりするものです。いま『天職』だと思う仕事が、10年後も20年後もそう思えるかは人によって異なります。人生100年時代と言われる中で、そうした変化を受け入れながら、生涯にわたって自分の『天職」を追い求めていくことになると思われます。

日本企業はメンバーシップ型と言われるように、得てして『仕事』よりも『組織』にコミットすることが求められる傾向があります。組織の一体感を高めるなどの良さがありますが、一方で組織に合わない人を排除し、必要以上に追い込んでしまうマイナス面もあります。
投稿者さんのように、社会に出てすぐに挫折を味わい、その後のキャリアを上手くデザインできずに悩んでいる人は、他にもたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。今回投稿者さんが『天職』と思える仕事を見つけられたことは、同じように苦しい思いをしてきた人にとっても励みになると思います」

「天職のツボを押さえておけば、迷うことはない」

――川上さんならズバリ、この女性にどうアドバイスをしますか。

川上さん「社会に出てすぐ挫折を味わった投稿者さんは、どんな仕事をやっても上手くいかず、社会の中に自分の居場所はないと絶望したこともあったのではないでしょうか。しかし、いま『天職』と思える仕事に出会えたことが、今後の人生や職業キャリアをデザインしていくための、大切な〈きっかけ〉になりつつあるということかもしれません。
しかし、その『天職』に今後も従事し続けることができるか、また今後もずっと『天職』だと感じられるかどうかはわかりません。先ほど、投稿者さんにとっての『天職』の条件と思われるものを5つ書き出してみましたが、そのようにコアとなる要素は何かをご自身なりにしっかりと把握しておかれることをお勧めします。
そうしておけば、今後の人生や仕事選びで、ご自身の内外にさまざま変化が生じたとしても、何を押さえながら前に進んでいけばよいのか、ポイントがイメージしやすくなると思います」

(福田和郎)