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飲食店への「協力金」以前の分を支払わずに「先払い」ってアリか!東京都は「飲み屋街一揆」寸前の怒り

   全国で新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。特に東京都は新規感染者が4000人を突破。先週(2021年7月26日週)の2倍というペースで急増中だ。

   そんななか、緊急事態宣言下の飲食店に酒類提供禁止などを要請するために、協力金の「前払い」が始まった。しかし、それ以前の協力金が支払われる前に「先払い」するという。

   飲食店からは、

「前の協力金はいつもらえるのか。子どもだましではないか!」

と、怒りの声があがっている。なぜ、こんな呆れた事態が起こっているのか。

  • ちぐはぐな対応の東京都庁
    ちぐはぐな対応の東京都庁
  • ちぐはぐな対応の東京都庁

東京都「国の指示だから仕方なく」と弁明

   東京都の大混乱ぶりをNHK(7月26日付)「時短要請などの協力金 支給順番が逆転も 〈先渡し〉で東京都」が、こう伝える。

「東京都は今の緊急事態宣言に伴う時短要請などの協力金を一部今週(7月26日)から先渡しする一方、以前の要請分の中には申請受け付けが始まっていないものもあり、支給の順番が逆転することになります。東京都は、7月12日からの緊急事態宣言のもとで時短営業などを行った飲食店への協力金を、一部今週(7月19日)から先渡しします。都の要請に全面的に応じることを誓約した場合、要請の期間中に先に支給する仕組みです。今回から導入され、先週受け付けが始まりました。
一方で、6月21日から7月11日までのまん延防止等重点措置に伴う要請分については受け付け開始時期がまだ決まっていません。また、これより前の今年5月12日から6月20日までの3回目の宣言に伴う要請分の申請は7月26日から受け付けが始まります。その結果、要請の時期と支給の順番が逆転することになります。東京都は『国が先渡しを速やかに行うよう求めているため、その手続きを優先している。態勢をさらに強化し、これまでの要請分もなるべく早く支給できるよう作業を急ぐとともに、事業者が混乱しないよう丁寧に説明したい』としています」
「なんだか、ややこしい」東京都の協力金の対象期間と申請受け付け
「なんだか、ややこしい」東京都の協力金の対象期間と申請受け付け

   なんだか、非常にややこしいがこういうことだ=図表参照

(1)前回(3度目)の緊急事態宣言時での飲食店の時短営業などに伴う協力金の申請受付を7月15日から行う予定だったが、7月26日に遅らせる。
(2)その代わり、今回(4度目)の協力金の支払いを優先して先払いするために、申請の受付開始を7月19日に早める。つまり、3度目より4度目のほうが早くなり、逆転してしまった。
(3)なぜ、そんな面倒なことをするかというと、「国の指示だから」というのが東京都の言い分だ。
(4)一方で、前回の緊急事態宣言の後にあった「まん延防止等重点措置」(6月21日~7月11日)時の協力金については、申請開始の時期さえ決まっていない。

   それなのに、今回の協力金を最優先させるわけだから、混乱が必至というわけだ。

   それもこれも、何が何でも飲食店の協力を得ようとする、政府の焦りからきた混乱だ。過去3回の宣言やまん延防止等重点措置で効果がなかったことにイラだった西村康稔経済再生担当相は7月8日、「協力金の前払いを可能とする仕組みを導入する」とする一方で、要請に応じない事業者には「命令、過料の手続きを厳格にして対応していく」と明言。「アメとムチ」を使い分けて、実効性を上げていく考えを示した。

西村悪代官「アメとムチ」政策の「アメ」だけが残り

飲み屋街に賑わいが戻るのはいつのことか
飲み屋街に賑わいが戻るのはいつのことか

   ところがその後、西村大臣は「ムチ」の政策で「悪代官」の猛批判を浴びて、相次いで撤回に追い込まれ、結果的に「先払い」という「アメ」だけが残った。その「アメ」も混乱を招いて不評を買った。こんな状態で本当に「先払い」ができるのだろうか。

   前回どころか前々回の分まで支払ってもらっていない飲食店の怒りを、時事通信(7月24日付)「協力金、本当に『先払い』? ちぐはぐ対応、飲食店憤り 東京」が、こう伝える。

「4度目の緊急事態宣言が出ている東京都内では、宣言が発令された7月12日以降、営業時間短縮要請などに応じる飲食店に対し、協力金を速やかに支給する『先払い』制度が導入された。ところが、この支給を急ぐあまり、5、6月分の申請受け付けが後回しになる事態が生じている。飲食店からは『子供だましだ』と怒りの声が上がっている」

というのだ。当然だろう。時事通信が続ける。

「先払い制度は、長引く休業や時短要請で苦境が続く飲食店への協力金支給が遅いとの批判を受け、今回の緊急事態宣言発令に先立ち政府が導入を決定。誓約書の提出を条件に先払い分として日額4万円を一律支給し、足りない場合は審査を経て追加支給する。速やかな支給により、要請を拒む飲食店をなくしていくのが狙いだ。
しかし、作業を優先するため、5月12日~6月20日分の申請開始日は当初予定していた7月15日から同26日に延期。6月21日~7月11日分については、いつから申請を受け付けるかさえ決まっておらず、逆転現象が生じた格好だ」

   対応に追われる東京都では、「複数の協力金の申請期間が重なると、事業者側も混乱し、結果的に支給の遅れにつながる」と釈明した。これに対し、都の休業要請に応じている中野区の居酒屋経営者は時事通信の取材に、こう激怒した。

「これまでの協力金も出ていないのに、まるで子供だましではないか。酒を提供しているのに協力金を受け取っている店もある。矛盾を正してほしい」

と憤ったのだった。

飲食店「やっていること支離滅裂じゃないですか!」

   インターネット上では、批判の声が巻き起こっている。日本総合研究所調査部マクロ経済研究センター所長の石川智久氏は、こう指摘する。

「先払い制度は飲食店が少しでも早く給付を受けて、厳しい状況から脱するのが目的ですが、5月、6月分が遅れては当然意味がありません。こうしたことが起きるのも、飲食店の事情ではなく、行政側の都合を優先しているからとみられます。スピードを優先し、不正受給は後から摘発するようにすべきです。また、そもそもの制度設計に問題がなかったか検証する必要があります。今回の飲食店向け給付金には、企業の規模などによって損得の差が大きくなっています。感染症はいつ起きてもおかしくありませんので、今回の対応を踏まえて恒久的な制度も作る必要があります」

   ほかにも、こんな批判が多かった。

「多少の順番の違いはあったとしても原則は、申請順に支払われるべきだと思います。後から申請した協力金が、先に支払われるのは、公平性に欠けると思います。申請済みの案件も先払いにするべきです」
「アメリカはスピードを重視して先に支払い、不正があれば回収するというやり方をしています。そのあたりはキッチリと国民に社会保障番号を付けているアメリカならでは。やはり日本は何かにつけて遅れていますね。こういう時こそ、マイナンバーカードに登録しているか否かをうまく活用すればよいのに」
「こういう正直者がバカを見るような制度は、国民の納税意欲が削がれ不満が高まっていく。即刻やめて申請された順に支給していくように改めるべき」
「これも役所の自己都合だ。法人税の納付の時にもコロナによる減免/納税猶予措置があるというので税務署に問い合わせると、審査に時間がかかり、しかも審査に落ちた場合には本来支払う税金だけではなく、延滞金まで請求されるとのこと。一瞬耳を疑った。自分たちの審査に時間がかかるだけなのに、それに対して延滞金を課すのかと」

   飲食店からは、こんな怒りの声が。

「やっていること支離滅裂じゃないですか! 今までの協力金の精算がすべて終わっていて、『じゃあ今後は前払いにします』なら分かるが、今までのが支払われていないのに、これから前払いってアリですか? うちは4月の協力金まだもらえていないです。もちろん5月も」
「うちは2月、3月分だけ支給され、1月分は飲食店として認めないため、2月、3月分を全額返金してください、と電話が来ました。飲食店として10年以上やっていますし、保健所等への登録に不備はないし、正当にやってきたのに...。4月以降は審査中のままです。もうわけがわかりません」
「うちは4月11日までの分がずっと審査中なのに、昨日、4月12日以降の審査が通ったと連絡がきました。なぜ前の分より先に? 担当者次第なのかな?」
「5月の給付金の申請開始が8月になるって...。本来は5月にあるべきだった売り上げだよ。『そんな時のために余裕ある資金繰りするのが経営者だろ』という人もいるが、サラリーマンだって5月分の休業手当が9月以降の支払いになったら文句をいわんのか? こういうことをやっていてどうなるかというと、単純に『もう従わない』となるだけだよ。世の中の30%のお店が拒否したら、もうみんな従わなくなる。従っている店のほうがバカだとなる」
「友人の店舗やその他数社分を代理で書類作成して、提出していますが、すでに入金されているはずの協力金が払い出されていません(4~5月分)。こちらが東京都の自粛要請と手続きを守っても、都自らが設定したルールを都自らが守らず、順番を飛ばして先行給付するのは、どう考えても異常です」

「税金なのだから、ちゃんと審査するのは当たり前」

気持ちよく飲める日がくるのか(写真はイメージ)
気持ちよく飲める日がくるのか(写真はイメージ)

   一方で、こんな意見もあった。

「子供だましだろうが何だろうが、飲食店は国から支援金が出ているだけまし。税金なのですから、ちゃんと審査するのは当たり前です。そんなにすぐには右から左へと出されては困ります。飲食店1件につき、協力金の総額は最低でも1000万円になるのではないでしょうか。これだってサラリーマンを含め、これから増税という形でとられることになるでしょう。そんなに年収のあるサラリーマンなど多くはないのに...」
「(協力店の)ステッカーを貼りながら8時過ぎても営業している店の対策はないのですかね。うちの近所でもお客さんたちが夜遅くまで騒いでいます。こういった店は取り締まることができないのですか」
「協力金を申請しながら闇営業している店の多いこと。東京都も抜き打ちで見回りして違反店からは協力金没収とか、強い対策をしないと、現状はルール破ったモン勝ちの状況になっていますよね」

(福田和郎)