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富士フイルム株はいつ仕込むべきか?(北海道大学 とがぴさん)【企業分析バトル】

   【再投資3本目】現在、2021年7月21日夜に執筆しています。まず、現在のマーケットのおさらいをしておきたいと思います。ここ1か月間の米国10年債利回りの推移を見てみると1.47%から1.21%へと2.6%ほど下落。これは株価にとってポジティブなはずですが、日経平均株価の反応は鈍く下落傾向が続いています。

   低金利下での株価の伸び悩みは、典型的なリスクオフを体現しており、これが一過性のものなのか、それとも株価が冴えない状況がしばらく続くのか慎重に見極めていきたいところです。

   さて、このような相場の地合いもあり、ここまで右肩上がりで株価を伸ばしていた銘柄も一たん調整に入り、チャートだけ見ると絶好の買い場を提供しているように見える銘柄がいくつかあります。今回はそのような株の中でも、以前から注目していた富士フイルム株に焦点を当てて記事にしていきたいと思います。

  • 昔は社名のとおりフィルムの会社だった……(写真はイメージ)
    昔は社名のとおりフィルムの会社だった……(写真はイメージ)
  • 昔は社名のとおりフィルムの会社だった……(写真はイメージ)

磐石な事業ポートフォリオが魅力

決算資料より筆者作成
決算資料より筆者作成

   富士フイルムホールディングスの事業はヘルスケア&マテリアルズソリューション、ドキュメントソリューション、イメージングソリューションの3つから構成されています。ヘルスケア&マテリアルズソリューションでは主に医療機器や高機能材料を、ドキュメントソリューションでは主にオフィス・プリンターサ―ビスを、イメージングソリューションでは主にカメラなどを取り扱い、販売しています。

   2021年度3月期の売上高構成比は、円グラフのようになっており、非常にバランスの取れた事業ポートフォリオを築けていることがわかります。

   富士フイルムは、その名にあるようにフィルムを主力事業とする会社でした。しかし、2000年代にはデジカメの普及とともに、写真フィルム市場は年20%を超えるペースで縮小していき、主力事業の構造改革に着手しなければならなかったという歴史があります。

   そこで、当時の古森重隆社長は医療や製薬分野のM&Aに着手し、既存のフィルム技術を生かした新規事業育成を始めました。2010年3月期には一時赤字に転落する場面がありましたが、その後業績は安定し始め、その後さらなる医療分野への投資を加速させました。

   現在の事業ポートフォリオはこのような構造改革の賜物であり、困難な状況でも経営の舵取りができる稀有な企業であることがわかると思います。

   今後も医療分野への投資を引き続き行い、イメージング事業の縮小をヘルスケアマテリアルズで補っていく戦略のようです。

「買い材料」満載も気がかりなことが......

   チャートを見ると年初来から高値を更新し続けており、今回の調整局面で入るのも悪くないような気がします。また、7月19日にキヤノンが連結業績予想を上方修正しているのですが、その内容を見てみるとヘルスケア部門の売上が伸びていること、オフィス向けプリント市場の回復などが盛り込まれています。これは同様の事業を抱える富士フイルムにもポジティブな材料になると考えています。

googleより富士フイルムの株価を引用
googleより富士フイルムの株価を引用

   しかし、買いたい材料は山ほど出てくるのですが、個人的に引っかかっている部分が一つあります。

   それは、売上高と営業利益が横バイなのに対して、株価だけが上がっていることです。現在の富士フイルムの予想PER(株価収益率)は24.7倍と若干の割高感を感じさせる中で取引されています。過去の業績が少しでも右肩上がりの成長をしてくれていたら思い切って買うことができるのですが、どうもこの点が腑に落ちず、あと一歩踏み出すことができません。

   非常に悩ましいところなのですが、今回買いは見送って、次回の決算を待ちたいと思います。

富士フイルムホールディングス(4901)
年初来高値(2021年7月13日)   8428円
年初来安値(2021年1月 4日)    5385円
直近の株価(2021年8月 2日) 8002円
購入を見送り

北海道大学 とがぴ
北海道大学工学部3年。新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに投資を始め、現在は米国株に幅広く投資している。趣味はYouTube鑑賞で米エンゼルスの大谷翔平選手の活躍をハイライトで見るのが毎朝の日課。今まで投資研究会で培ってきた知識や経験を活かせるように頑張ります!
埼玉県出身。
◆企業分析バトル カブ大学対抗戦のルール
・月額200万円を投資金額の上限とするバーチャル投資です。
・投資対象は新興市場を含む、国内の上場企業の現物取引です。
・運用期限は最長で6か月。銘柄選定の最終月は10月になります。
・順位は11月末時点で、投資した銘柄(企業)の売買や配当で得た収益の騰落率で決めます。
学生投資連合USIC

「学生の金融リテラシー向上」を理念に全国26大学1000人以上で構成。企業団体・官公庁との勉強会の開催、IRコンテストの運営、金融情報誌「SPOCK」を発行する。
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