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週刊東洋経済「コロナ後経済」を特集 エコノミストは「医薬株」 ダイヤモンドは「五輪後の不動産」に着目!

   「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパースンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする。

   「週刊東洋経済」(2021年8月21日号)の特集は「『コロナ後経済』の大難問」。ワクチン接種で経済最下位に沸く米欧中と、回復の鈍かった日本。そこへ変異型ウイルス「デルタ株」の猛威が襲った。今年度下半期の経済、社会、金融マーケットを展望している。

  • 週刊東洋経済は「『コロナ後の経済』の大難問」を大特集
    週刊東洋経済は「『コロナ後の経済』の大難問」を大特集
  • 週刊東洋経済は「『コロナ後の経済』の大難問」を大特集

投資2誌の編集長が注目「旅行」「消費」「変革」銘柄

「週刊東洋経済」2021年8月21日号
「週刊東洋経済」2021年8月21日号

   有力エコノミスト18人が日本経済を予測している。2021年度の実質GDP(国内総生産)成長率は、平均で3.6%のプラスと予測。22年度は21年度よりも消費の伸びが拡大するという見方と減速するとの見方に分かれている。財政政策については、「事業規模で30兆円、真水で10~20兆円」程度の財政出動を予想する人が多い。

   日本のIT環境や医療の効率性の悪さが明らかになり、改革の必要性を指摘している。嶋中雄二氏(三菱UFJモルガン・スタンレー証券)は「ワクチン・治療薬開発など、コロナ禍で日本の基礎科学技術力の弱体化が浮き彫りに。基礎・応用の両面で、国の資金投入やインセンティブによる研究開発の抜本支援を」と訴え、丸山義正氏(SMBC日興証券)は、「企業の設備投資意欲の持ち直しが限られる下で、人口減を補う生産性上昇をもたらせるか否か。柔軟な働き方に対応した人事制度の構築、高齢化社会とDXとの両立が必要だ」と説いている。

   東洋経済の2つの投資雑誌の編集長がコロナ後に狙える成長銘柄をセレクトしているのも見逃せない。「会社四季報プロ500」の島大輔編集長が着目するのは「旅行」「消費」「変革」だ。具体的には、アフェリエイト広告プラットフォームとEC関連の販促サービスを展開する「バリューコマース」、宿泊施設向けの予約管理システムを手掛ける「手間いらず」、中古ブランド品販売の「コメ兵ホールディングス」などに注目している。

   「株式ウイークリー」の山川清弘編集長は「変化に適応する勝ち組」に的を絞っている。秋以降に人の移動が戻ってくれば、レジャー需要が持ち直すとして、「東日本旅客鉄道(JR東日本))や中古車販売のガリバーを展開する「IDOM」、釣り具の「ダイワ」ブランドで知られる「グローブライド」、ハイテクでは「日立製作所」、エアコン世界首位級の「ダイキン工業」に注目している。

   一般記事では、ハウスメーカー最大手の大和ハウス工業へ、スーパーゼネコンの大成建設の村田誉之副会長(当時)が移籍した「異例人事の舞台裏」が興味深かった。大手ゼネコンから見たら「格下」のハウスメーカーへ転身した背景を探った。

   大和ハウスの20年度の売上高は4兆1267億円で、大成建設の1兆4801億円を大きく凌駕している。業容拡大を狙ううえでの課題が経験豊富な経営幹部の拡充だったという。副社長として招かれた村田氏のほかにも、野村不動産幹部や国土交通省の技術キャリアが招聘されているという。

   大和ハウスと大成建設の経営戦略上の意図は見えないが、新築工事のパイが縮小する建設業界の再編のきっかけになるのでは、と見る向きもあるようだ。

日本の製薬会社の凄い新薬

「週刊エコノミスト」2021年8月24日号
「週刊エコノミスト」2021年8月24日号

   「週刊エコノミスト」(2021年8月24日号)の特集は「上がる医薬株」。バイオで注目される日米企業を取り上げている。

   冒頭で紹介しているのは、兵庫県芦屋市に本社を置く従業員約800人の中堅製薬、JCRファーマから発売された新薬「イズカーゴ」だ。世界初の「Jブレイン・カーゴ技術」を用いたハンター病用の薬。この技術は、脳内への物質輸送を制限している血液脳関門を通過させて脳内に薬を届けるという。

   特定の酵素が生まれつき欠損しているか低下していることで、老廃物の分解・代謝が正常に行われないハンター病の治療に新薬が役立つと見られる。

   また、この技術を使えば、認知症など中枢神経への作用を求められる治療薬にも幅広く活用できる可能性があるという。

   同社は英アストラゼネカ製の新型コロナワクチン原液の受託製造も手掛けている。アストラゼネカのワクチンはJCRファーマが取り組んでいる遺伝子治療技術と共通するところがあり、またワクチン原液の製造がバイオ医薬品の製造工程と酷似していることから、同社に白羽の矢が立った。

   新型コロナウイルスに対する「国産ワクチン」の開発がヤマ場に差し掛かっていることを、前田雄樹氏(AnswersNews編集長)がリポートしている。国内では現在、アンジェス、塩野義製薬、第一三共、KMバイオロジクス、武田薬品工業が国産ワクチンの治験を進めている。

   最も実用化に近いのが、武田薬品だという。同社が開発しているのは米ノババックスが創薬した「組み換えたんぱくワクチン」と呼ばれるタイプ。武田薬品がノババックスから製造技術の移転を受け、山口県光市の自社工場で年間2億5000万回分の生産を計画している。通常の冷蔵庫の温度で保存でき、扱いやすいそうだ。

   コロナ克服にはワクチンだけでなく治療薬も欠かせない。中外製薬が申請していた「抗体カクテル療法」(製品名・ロナプリーブ)が7月19日、特例承認された。米リジェネロン・ファーマシューティカルズが開発。中外が国内で販売する。基礎疾患を持つなどリスクの高い軽症~中等症の患者に投与することで、入院や死亡のリスクを70%低下させた。国内メーカーでは、塩野義製薬が7月に経口薬の初期の治験を始めた。

   海外メーカーとの規模の差が語られる製薬業界だが、日本勢の健闘を知り、少し明るい気分になった。

「五輪後の不動産マンション 売りどき・買いどき」を特集

「週刊ダイヤモンド」2021年8月21日号
「週刊ダイヤモンド」2021年8月21日号

   「週刊ダイヤモンド」(2021年8月21日号)は「五輪後の不動産マンション 売りどき・買いどき」と題した特集を組んでいる。海外の投資マネーが日本の不動産市場に流れ込み、とりわけマンション価格が上昇してきた。しかし、今、流れが変わろうとしている。

   不動産の5大リスクを指摘している。「ポスト五輪」「ポストコロナ」「米国のテーパリング(量的緩和の縮小)と利上げ」「火災保険の制度変更」「少子高齢化・人口減少」だ。

   そして、東京・湾岸のタワーマンションを今買うべきではない、という専門家の声を紹介している。東京五輪・パラリンピックの選手村は終了後、晴海フラッグという分譲マンションとして売り出される。分譲4145戸、賃貸1487戸の巨大マンション群だ。

   平均坪単価は300万円前後。一般的なマンションより部屋が広く、最多供給面積は85平方メートル。東京・銀座に近い都心ながら4900万円台の分譲もあり、値頃感のある新築物件として注目されている。コロナ禍で販売を停止していたこともあり、3000戸以上が売れ残っているが、今年11月の販売再開とともに、数カ月で売り切れると見られる。

   この大量供給により、引き渡しが始まる2024年には中古タワマンが大量に売りに出て、価格が下落するのではと見る専門家もいる。素人が湾岸タワマンで安易に売却益を見越すような買い方をすると危ないというのだ。

   首都圏の「駅徒歩1分以内」のタワマンと地方主要都市のタワマンの騰落率ランキングも掲載している。首都圏ではほとんどの物件が値上がりしている中で、JR中央線の国分寺駅、立川駅、八王子駅で値下がり物件が集中している。コロナ禍で地価が下落に転じたのが理由と考えられる。

   台風や豪雨などによる水害が多発している。楽天損害保険はハザードマップを基に水災リスクを4つに分け、笠井保険料に地域差を設けた。この取り組みが業界全体に広がろうとしており、「住宅負け組」が生まれるかもしれないという。

   最もリスクが低いA区分から高いD区分まであり、保険期間10年の場合で1.5倍の差がある。水害の多発で損保会社の収支が大きな打撃を受けたため、23年度から大手を含む損保各社が水災リスクに応じた地域料金を導入する見通しだ。水害ハザードマップが「住宅格差」を生むことになりそうだ。

   同誌の第2特集も「不動産投資の今と裏」と不動産関連の特集だ。総資産100億円超という専業不動産投資家の玉川陽介氏が頼れる金融機関を格付けしている。意外なことに東の横綱がスルガ銀行だ。玉川氏は「スルガ問題は過去のもの。厳格な審査体制。不動産を理解しており低金利。使い勝手良し」と評価している。ちなみに西の横綱は、大阪厚生信用金庫だ。

   不動産投資家による覆面座談会もおもしろい。住友不動産販売が属人的に仲のいい不動産業者に物件を卸すのを辞めたのは、社員個人へのキックバックを防止するためではないか、とか、オープンハウスが急成長している秘訣とか、火災保険の悪意ある請求の流行などを取り上げている。サラリーマンで不動産投資をしている人には、見逃せない内容になっている。(渡辺淳悦)