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今年はすでに6回も! みずほ銀行のシステム障害 問われる経営責任

   みずほ銀行でまたもシステム障害が起きた。2021年になって6回という異常事態だ。

   再発防止を誓いながら繰り返す姿はまさに、「メガバンクの名が泣く」(8月28日朝日新聞社説の見出し)というしかない。経営陣の責任論が再燃する可能性もあり、信頼回復が見通せない。

  • システム障害が続くみずほ銀行、問われる経営責任……
    システム障害が続くみずほ銀行、問われる経営責任……
  • システム障害が続くみずほ銀行、問われる経営責任……

顧客への対応でも不手際が目立った

   今回の障害は8月19日午後9時前、基幹システムと営業店の端末をつなぐシステムで発生した。東京都内にあるシステムのメインサーバーは、2つあるディスク装置の1つが故障すると予備の装置が作動することになっていたが、予備が起動せず、同じ拠点内にあるもう一つのサーバーへの切り替えにも失敗した。

   このため、さらに離れた災害時に備えた千葉県内のサーバーへの切り替えを図り、20日正午ごろ、すべての取引が正常化した。トラブル発生から14時間ほど経過していた。

   この間、みずほ銀行とみずほ信託銀行の国内の全520余の店舗の窓口で、営業開始の午前9時から、振り込みや入金などの取引ができなくなり、9時45分以降も融資や外為取引の一部ができない状態が2時間余り続いた。ATMやネットバンキングは通常どおり取引できた。

   このトラブルの「実害」としては、キャッシュカードの紛失登録手続きが遅れ、50万円が引き出される被害が出たほか、仕方なく他行などで代替手段を使った顧客が本来不要な手数料を支払ったケースも15件程度あったといい、いずれもみずほ銀行側が補償した。

   トラブル自体が問題なのはもちろんだが、顧客への対応でも不手際が目立った。これまでのトラブル続発の教訓で、事前に営業店への出勤指示やコールセンターの人員増を手配し、復旧遅れの場合の窓口での顧客対応の準備などもしていたが、一般への告知は、ホームページに事情説明をアップしたのが営業開始わずか30分前の8時半。知らずに来店した人も多く、認識の甘さは明らかだ。

今春のトラブル「二度と起こさない」と誓ったのに......

   じつは、この障害は21年になって5回目で、これとは無関係に3日後の8月23日にも6回目になるシステム障害が発生。全国で最大130台のATMが一時停止した。

   みずほ銀行の今年のトラブルは、2月28日に4318台のATMが停止したのを皮切りに、3月3、7、12日と立て続けにATMが停止、ネットバンキングや外貨建て送金などの取引ストップや遅れが起きていた。

   6回のトラブルはATM、ネットバンキング、外国為替などさまざまな取引にかかわるが、共通するのは、障害発生時のバックアップが機能しなかった点だ。いうまでもなく、銀行業務は預金、送金、融資のほか投資信託や保険の販売など多岐にわたる。

   顧客情報の管理、融資の審査、不正の監視など日々、膨大な情報を処理している。コンピューターのシステムである以上、一定のトラブルは起こりえる。発生に備えに、各金融機関は二重三重のバックアップ体制を敷いているが、みずほ銀行はうまく機能しなかった。

   金融庁は春のトラブルの際に数次にわたり銀行法に基づく「報告命令」を銀行と、親会社のみずほフィナンシャルグループ(FG)に対して出したのに続き、今回も同様に命令し、みずほFGなどは8月31日に報告書を提出した。

   春のトラブルでは、みずほは第三者委員会を設けて6月に報告書をまとめ、50項目以上にわたる再発防止策を発表し、みずほFGの坂井辰史社長は「二度とこのような事態を起こさない」と誓っていた。

   今回、8月31日の報告書では、19~20日のトラブルの引き金となったディスク装置の故障の理由を特定できず、「さらなる調査や確認が必要」とするにとどめ、継続して調査するとともに、バックアップに失敗した場合の復旧手順を整備する方針を示した。

苛立つ金融庁

   みずほFGは旧日本興業、富士、第一勧業の3行が経営統合して2000年に発足。みずほ銀行とみずほコーポレート銀行に再編した初日の2002年4月1日にシステムを統合したが、初日に障害が起き、250万件の口座振替などの遅れや誤処理が発生。11年3月には東日本大震災後の義援金の振り込みの集中に伴う大規模障害で給与振り込みなど116万件の遅延を起こした。

   3行統合の「寄り合い所帯」で、まとまりのなさが指摘され続けてきたところで、システムでも旧行の関係(興銀-日立製作所、富士-日本IBM、第一勧銀-富士通)を引きずり、19年夏稼働した新システムもこの3社にNTTデータを加えた4社が開発した。

   この複数社相乗りが、今回のトラブルに具体的にどうかかわるかは不明だが、三菱UFJFGが日本IBM、三井住友FGがNECと、それぞれ単独で委託しているのと比べ、システムが複雑になり、責任の所在もあいまいになりがちだとの懸念が絶えなかった。

   金融庁は春の障害に関する銀行側の報告を受け、異例の長期検査の最中での新たなトラブルに苛立ちを募らせている。春のトラブル、そして今回の対応、経営陣の役割を徹底的に検証し、最終的に業務改善命令を出すことになる。

   金融庁の動きとも連動して、経営責任の明確化は不可避だ。2002年のトラブルではシステム統合を指揮した特別顧問が、11年の際も当時の頭取が、それぞれ引責辞任した。今春の連続トラブルでは、発生前にみずほ銀行の藤原弘治頭取の会長就任を内定していたが、トラブルで撤回。一度は6月中に頭取退任の方向になったが、「再発防止のため当面の留任」として現在に至る。6月にこれを決めた際、坂井FG社長が6か月、藤原頭取が4か月、月額報酬を50%減額するなど、役員11人の減俸処分を発表している。

   しかし、「坂井社長の責任は特に思い」(金融庁幹部)との声もあり、原因究明調査、金融庁検査などを踏まえ、一定の時期に坂井氏を含む経営責任について、どうけじめをつけるかも今後の焦点になる。(ジャーナリスト 白井俊郎)