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アプリの乱立に終止符を打つか!? イオンが「トータルアプリ」をスタート

   流通大手のイオンが2021年9月、スマートフォンでイオングループのさまざまなサービスをまとめて使えるトータルアプリ「iAEON」(アイイオン)のサービスを開始した。

   発表前に日本経済新聞の1面で報じられ、華々しくスタートしたものの、普及に向けては課題が山積している。

  • トータルアプリ「iAEON」は全国のイオンの店舗で使える(写真はイメージ)
    トータルアプリ「iAEON」は全国のイオンの店舗で使える(写真はイメージ)
  • トータルアプリ「iAEON」は全国のイオンの店舗で使える(写真はイメージ)

イオンで使えるアプリは50種類以上もある

   「アイイオン」の機能で目を引くのは、スマホ決済「AEON Pay」(イオンペイ)だ。利用者がイオンマークの付いたクレジットカードやデビットカードをアプリに登録すると使用できる。スマホの画面に表示されるバーコードを、全国のイオンのグループ店舗で提示すれば、決済できる仕組みだ。

   他にも、アプリに「お気に入り店舗」を登録すると、その店舗のクーポンやキャンペーン情報を取得できる機能もある。

   イオンはグループ内に小売りや金融、エンターテインメントなど多様な業態を抱える。主力の小売りだけでも、前身のジャスコ時代から買収で規模を拡大してきた経緯もあり、各地域でイオンブランド以外も含めてさまざまなグループ企業が店舗を営業している。

   これまでグループをトータルでカバーするスマホアプリは存在せず、各企業がそれぞれ展開しているのが実態だ。アプリストアで「イオン」を検索すると、「イオンお買い物」「イオンモールアプリ」「AEON WALLET」「ダイエー特売クーポンアプリ」「イオンの子育て応援アプリ」...... といった関連アプリが次々表示される。50種類以上存在するとも報じられている。

   リアル店舗ではセブン&アイ・ホールディングスと並んで「流通2強」と称されるイオンではあるが、デジタルとの融合が喫緊の課題だ。コロナ禍では、大型商業施設の営業が制限されて売り上げが落ち込む一方、アマゾンのようなインターネット通販は空前の伸びを示している。

   コロナ禍の長期化と次の感染症が起きる可能性を踏まえると、デジタルシフトのこれ以上の遅れは許されず、そのためには消費者との接点となるスマホアプリの充実が不可避だ。そこでイオンが打ち出したのがアイイオンだった。

わかりにくい!? 「イオンペイ」と「WAON」の決済機能

   ただ、PayPay(ペイペイ)のような主力スマホ決済が志向している、一つのアプリの中にさまざまな機能を搭載する「スーパーアプリ」とは方向性が異なる。

   グループ企業のアプリは存続しながら、アイイオンが「入り口」としての役割を果たす形となる。現にアイイオンのサービスが始まってから5日後、グループのコンビニエンスストア「ミニストップ」が初の公式アプリの提供を始めた。こうした使い勝手が利用者にどれだけ支持されるかは未知数で、使いにくいと判断されればそれまでだ。

   アイイオンの機能に「モバイルWAON」を加えた点も利用者を戸惑わせている。イオングループが2007年に始めた電子マネー「WAON」をスマホに搭載して、店舗の端末にタッチして決済できるようにするのが「モバイルWAON」だが、一つのアプリに、イオンペイとWAONという二つの決済機能を併存させる狙いのわかりにくさは否めない。

   結局、アイイオンが広く受け入れられるには、イオングループをお得に利用できるクーポンなどの特典をいかに提供するかが鍵になりそうだ。

   バラバラだったクーポンを一括して利用できる利便性に加え、アイイオンだけで提供するクーポンも打ち出して、アイイオンを使うかどうか迷っている利用者を地道に引き込んでいくしかない。中途半端に終われば、イオン関連のアプリがまた一つ増えるだけになりかねない。(ジャーナリスト 済田経夫)