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じわり浸透? ビール市場の新ジャンル「微アル」 先行するアサヒ、サッポロにキリン、サントリーはどう出る!

   ビール市場の新しいジャンルとして、「微アル」(微アルコールビール)市場が立ち上がってきた。サッポロビールは2021年9月14日、「サッポロ The DRAFTY」を発売。先行するアサヒビールの「BEERY」を追撃する。

   ビール系飲料の売り上げの減少傾向が続くなか、ビール業界は新たな飲用機会の創出を探ってきた。微アル(低アルコール)市場は、欧州で売り上げを伸ばしており、アサヒビールやサッポロビールは、この市場を新たな飲用機会を創出するチャンスと捉え、育てていきたい考えだ。

  • 「ビール離れ」が叫ばれて久しいが……
    「ビール離れ」が叫ばれて久しいが……
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「ビール」「ノンアル」、それとも「微アル」?

   国内のビール類市場規模は1994年をピークに、若者のアルコール離れや飲酒人口の高齢化、ハイボールやチューハイなどの酒類の多様化などが重なって、2005年から14年連続で市場が減少。今後も厳しい状況が予測されており、ビール業界にとって新たなジャンルの確立は急務といえる。

   その一方で、コロナ禍による「家飲み」需要や昨今の健康志向の高まりによって、注目されていたのが、アルコールの量が極端に少ない「微アル」(微アルコール)市場だ。

   これまでは「ビール」か「ノンアルコールビール」かの2択しかなかったが、その中間の選択肢を用意。アサヒビールとサッポロビールが新商品を投入している。

   じつはコロナ禍以前から、欧州などでは「低アルコール嗜好」が広がっている。健康志向の若者を中心に、スモールビール(アルコール度数2~3%)やノンアルコールのカクテルがヒットしはじめていた。低アルコールビール(アルコール度数が0.5%以下の飲料)市場の売上金額は、2013年の58億ドルが18年には80億ドルと、わずか5年で20億ドルも伸ばしている。これに目をつけた。

アサヒ「BERRY」の狙い

   先行したのはアサヒビール。2021年6月、国内で初のアルコール度数0.5%の「BEERY」を発売した。ターゲットは、若年層やふだんお酒を飲まない人でビール離れを食い止める狙いがある。

   9月に発売されるサッポロビールの「The DRAFTY」のアルコール度数は、0.7%で、ビールテイストを生かした微アルコールで、いわゆるビール好きをターゲットに捉えている。ビール好きの選択肢を広げて、飲用機会を創出していくのが狙いだ。

   「微アル」市場について、

「アルコール度数を含めたさまざまな選択肢を用意することで、多様なビールの楽しみ方を広げ、新たなビール文化を作り上げていきたい」

と、サッポロビールは話す。

   すでに数多く発売されているノンアルコールビールだが、「味がおいしくない」と思い込んでいる消費者は少なからずいる。同社によると、「微アル」ビール市場はそういった消費者の意識、イメージを変えていき、新たなジャンルを確立する狙いがあると意欲的。将来的には、1300万函の市場規模(発泡酒が5000万函規模)になると予測している。

キリンとサントリーは様子見、そのワケは......

   一方、キリンビールとサントリービールは「微アル」ビール市場の参入について、今のところ「様子見」のスタンスだ。

   キリンホールディングスは、「生活スタイルの変化に伴い、お酒の楽しみ方も多様化している。すぐに追随するものではないが、今後の市場の状況を注視していく」と話し、「当社としては活性化しているノンアルコールカテゴリーでの商品拡売や、Slow Drinkに代表されるような、お酒の楽しみ方の啓発活動を続けていく」とコメント。サントリーホールディングスも、「現時点で決まっていることは特にありません」と言う。

   両社が様子見する背景には、「微アル」ビールがアルコール度数1%未満の商品のため、酒税法上は酒類に含まれず「炭酸飲料等」に分類されていることにある。

   「微アルコール」とはいえ、大量に飲めばアルコールの摂取量も増えてしまうから、妊産婦や授乳期の女性や子どもを含む未成年者、クルマを運転する人などへの積極的な飲用は勧めにくい。

   売り場を確保する量販店なども、他の炭酸飲料と同じ棚に陳列するわけにはいかず、とはいえビール棚に置けば、数あるビールやノンアルコールビールに埋没しかねないなど、消費者への売り込み方は、なかなか難しいようだ。