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増えた山岳遭難、減った海・河川の水難事故 その原因はコロナ禍にあり! 50代、60代の登山者多く(鷲尾香一)

   今夏(2021年)、山岳遭難と水難は新型コロナウイルスの感染拡大により、明暗が分かれた。

   警察庁が9月9日に公表した夏期(7、8月の2か月間)における山岳遭難と水難の概況によると、遭難者が増加した山岳に対して、コロナ禍の影響で海水浴場が閉鎖されていたことなどにより、水難は減少した。

  • 秋の行楽シーズン、登山・ハイキングは計画的に!(写真はイメージ)
    秋の行楽シーズン、登山・ハイキングは計画的に!(写真はイメージ)
  • 秋の行楽シーズン、登山・ハイキングは計画的に!(写真はイメージ)

山岳遭難、この5年間は減っていたのに......

   今夏の山岳遭難は、前年比63件(13.4%)増加の533件、遭難者数は同56人(10.3%)増加の597人となった。このうち、死者・行方不明者数は1人減少の46人だった。無事に救出されたのは、33人(12.3%)増加の300人となった。 過去5年間の夏期における山岳遭難の発生状況をみると、発生件数、遭難者数とも減少傾向を辿っていたが、今年は増加に転じた。

   一方、水難は前年比53件(10.5%)減少の451件発生、水難者数は同51人(8.2%)減少の565人となった。このうち死者・行方不明者数は50人(19.0%)減少の212人だった。 ただ、残念なことに中学生以下の子供の水難発生件数は7件(11.6%)増加の67件、水難者数は9人(8.9%)増加の110人 となった。このうち死者・行方不明者数は16人で前年と同数であった。無事に救出されたのは、5人(1.7%)減少の276人。このうち、子供は9人(12.8%)増加の79人だった。

   過去5年間の夏期における水難の発生状況をみると、発生件数、水難者数とも最小となった=下の表1、表2参照。

秋に増える登山 的確な計画と万全の装備品で!

   山岳遭難者597人の目的では、登山が454人(76.0%)と最も多く、次いでハイキング46人(7.7%)となっている。遭難の理由では、道迷いが179人(30.0%)と最も多く、次いで転倒が121人(20.3%)、滑落が99人(16.6%)の順。年齢では50歳代および60歳代がともに123人(20.6%)と最も多く、次いで70歳代が109人(18.3%)、40歳代が81人(13.6%)となっている。

   都道府県別の発生件数では、最も多かったのが長野県の88件、次いで北海道の40件、富山県の39件だった。

   一方、水難では海で295人(52.2%)、河川で203人(35.9%)が発生している。このうち、海では94人、河川では87人の死者・行方不明者が出ている。また、水遊びで142人、水泳で86人、魚とり・釣りで80人な水難に遭っている。

   ただ、いずれも前年に比べて減少しており、特に魚とり・釣りは前年比で50人減少した。

   子供の死者・行方不明者16人のうち、河川では9人(56.3%)、海では4人(25.0%)で、水遊びで6人(37.5%)、水泳で4人(25.0%)となっている。

   なお、新型コロナウイルスの感染症対策により、不開設となった海水浴場での水難者数は52人で、このうち死者・行方不明者数は13人だった。

   都道府県別の発生件数では、最も多かったのが静岡県の35件、次いで北海道、沖縄県がともに22件、茨城県が21件だった。

   夏期を過ぎたことで、今後、水難は減少し、山岳遭難が増加する時期に入ってくる。特に、コロナ禍の中にあっては、「密」を避ける意味もあり、余暇を野外で過ごす人たちが増加しており、登山やハイキングは一種のブームとなっている。

   警察庁では山岳遭難の防止策として、的確な登山計画と万全の装備品を準備したうえで、信頼できるリーダーを中心とした複数人による登山とすること、登山計画を家族や職場等と共有しておくこと、さらに道迷い防止、滑落・転落防止に注意することを呼び掛けている。(鷲尾香一)