ドル円は、昨年(2020年)の新型コロナウイルスの感染拡大前の高値、1ドル=112円22銭を突破。長年続いたもみ合い局面を上抜けして、新しい円安トレンドに入りました。
執筆時点では、ドル円は114.46円まで上昇しましたが、他の円クロスも軒並み上昇しています。
しかし、どうして今、円安なのか? 何か特別な変化が起こったのか?
今ひとつ納得できない人も多いのではないでしょうか。さまざまな理由があると思いますが、一つひとつ説明してみたいと思います。
金融引き締めに最も遠いところにいるのが日本です(その次は欧州)。引き締め局面に入った通貨を買い、遠いところにいる円を売るのは自然なことでしょう。
(3) 岸田氏が新総理・総裁に就任「分配」重視であれば、成長力は削がれ、株主への分配は低下していくことになるでしょう。外人投資家があえて日本株を買う理由を見つけることが難しくなりました。
(4) 再生可能エネルギーへのシフトが過度に進んだことの弊害で、天然ガスをはじめ、エネルギー価格が急騰したこと直感的には、再生可能エネルギーへのシフトが進めば、原油や石炭などの化石エネルギーの消費は低下するので、価格は下落するはずです。将来的にはそうなるのでしょう。しかし、現状では再生可能エネルギーはあまりにも不安定なので、バックアップとしての火力発電が必要です。
ところが、脱炭素「原理主義」に傾いている昨今の資本市場は、化石エネルギーへの投資を強制的に制限しています。新しい油田開発はストップし、火力発電所への投資は止められ、古い石炭発電所は次々に閉鎖されています。
ところが、そこに風力発電の不調がやってきました。欧州では想定以上に風が吹かず、発電のため天然ガスを急遽調達しなければなりませんでした。そのため、天然ガスの値段は瞬時に6倍となりました。欧州エネルギー政策の失敗です。
通常、原油のほうが天然ガスより価格は高いのですが、6倍となると原油換算で1バレル140ドル程度、代替性のある原油への需要が高まっています。原油価格は現状80ドル台ですが、さらに上昇しそうです。
少し前であれば、米シェールオイルが増産され、原油価格は落ち着きました。しかし、米国が環境を重視するバイデン政権となり、シェールオイルの生産には事実上の制限がかかっています。シェールの増産が止まっていることで、原油の価格決定権はOPEC(石油輸出国機構)プラスに移っているといえます。
OPECプラスは、事実上サウジアラビアとロシアによって価格が決定されています。天然ガスは世界最大の生産国であるロシアの影響力が強い。つまり、原油・天然ガスともにプーチン大統領が価格決定権を握っているという状況なのです。
OPECプラスはコロナ禍後にかなり減産しました。その意味では、増産余力はかなりあります。参加国が一斉に増産に動けば、原油価格はいくら需要が強くても落ちるでしょう。しかし、そうした状況をサウジとロシアが容認するとは思えません。少々増産するより、価格維持に動くでしょう。
再生可能エネルギーシフトが続くことから、世界のエネルギー需要は混乱するでしょう。冬場になれば天然ガスへの需要が高まり価格が高騰する、そうしたことが今後何年も続きそうです。
エネルギーを100%輸入に頼る日本経済にとって、エネルギー価格上昇は打撃でしかありません。強制的に税金を産油国に払っているようなものです。エネルギー価格だけならまだしも、銅やニッケルなどの需要も今後高まり、資源価格全般が高騰するでしょう。
円はかなり安い。現状の114円台は、購買力平価の推移を考慮すると、すでに6年前の125円レベルと同じ程度です。それでも、資源価格の上昇で交易条件は悪化、資源価格上昇=貿易赤字の拡大で、円安圧力がさらに高まることになります。しかも、その資源価格の決定権がプーチン大統領にあります。
簡単に資源価格は下落しないでしょう。円安局面が続くことになります。安い円がさらに安くなります。
(志摩力男)