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後世はどう評価? 麻生太郎「財務相」 戦後最長も財政悪化、赤木ファイル、舌禍など疑問符多く......

   岸田文雄政権の発足に伴い、2012年12月の第2次安倍晋三政権発足から8年9か月にわたり財務相を務めてきた麻生太郎氏が政権から去った。

   財務(大蔵)相としての在任日数は3205日となり戦後最長。戦前を含めても歴代3位で、高橋是清・元蔵相の3214日を目前にしていた。在任期間だけ見れば間違いなく歴史に名を残したと言えるが、その実績をめぐっては批判も渦巻いている。

  • 戦後最長の8年9か月、財務大臣を務めた麻生太郎氏(2007年撮影)
    戦後最長の8年9か月、財務大臣を務めた麻生太郎氏(2007年撮影)
  • 戦後最長の8年9か月、財務大臣を務めた麻生太郎氏(2007年撮影)

アベノミクス支えた立役者の「ウラ」の顔は?

「(当初)予算編成9回、補正予算は14回やらせていただいた。消費税率を2回上げたが、倒閣にならず、支持率が上がった」

   財務相として最後の記者会見となった2021年10月4日。在任期間中の自己評価を問われた麻生氏は、消費増税や経済成長の実現、ベアを含む賃金の改善など、数十分間にわたって自身の実績を誇ってみせた。

   確かに安倍政権は、民主党政権時代に成立した改正消費税法に従い、2度にわたって消費税率を引き上げた。一方で積極的な財政拡大を「アベノミクス」の3本の矢の一つに位置づけ、拡張路線を推し進めた政権でもあった。

   本来は日本銀行が担う金融政策にも事実上、政府が関与してコントロールし、大規模な金融緩和を実現。そうして生まれた低金利環境を利用して国債を大量発行し、実効性に疑問符が付く事業にまで予算を大盤振る舞いし続けた。

   麻生氏が財務相に就任した2012年度末時点の国の長期債務残高は700兆円台だったが、20年度末には1000兆円を突破している。

   財務省内には「麻生氏でなければ安倍氏に消費増税を働きかけたり、他省庁や与党の歳出拡大圧力に抵抗したりすることは難しかっただろう」と評価する声が強いが、客観的なデータだけを見れば、アベノミクスを財政面から支えた麻生氏が国の債務状況を一段と悪化させたと言わざるを得ない。

麻生氏は辞任しないことで安倍政権を守った

   批判を浴びるのは、経済・財政政策だけにとどまらない。

   2018年に発覚した森友学園への国有地売却をめぐっては、同省の指示で公文書が改ざんされていたことが発覚。当時の理財局長だった佐川宣寿氏が主導したとされ、佐川氏は辞任に追い込まれた。

   この問題で財務省は省内調査を実施したものの、改ざん指示を受け自殺した近畿財務局職員、赤木俊夫さん(当時54)が残した文書「赤木ファイル」の公開に抵抗するなど真相究明には終始、消極的だった。麻生氏の指導力も見えず、財務省批判が拡大する一因となった。

   そもそも、これだけの問題が起これば、大臣が引責辞任してもおかしくないところだが、第1次安倍政権の「辞任ドミノ」による崩壊の教訓から、麻生氏は辞任しないことで安倍政権を守ったといわれる。

   さらに、麻生氏自身の発言もたびたび物議をかもした。就任当時から問題発言を繰り返し、その発言内容がインターネット上で炎上するなど「トラブルメーカー」といえる状況でもあった。戦後最長任期という自らの輝かしい実績を、自らの舌禍で曇らせた恰好だ。

   「任期は長く、存在感もあったが、その実績となると『?』マークが付く。岸田政権はアベノミクスの負の側面を指摘し路線転換をはかっており、アベノミクス路線を支えてきた麻生氏の評価はますます難しくなる」。霞が関の現役官僚は、こう指摘する。

   麻生氏の「実績」は後世、どう評価されるのだろうか。(ジャーナリスト 白井俊郎)