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オンライン就活で学生は大助かり! スーツ代、交通費浮いて費用負担がコロナ禍前から半減

   2022年卒業予定の大学生が、就職活動にかかった費用がコロナ禍の影響で大幅に減ったことがわかった。

   人材情報サービスのディスコのキャリタスリサーチが、就活費用について、「リクルートスーツ代」「交通費」「宿泊費」「備品代」「有料講座受講費」「その他諸経費」の項目ごとに金額を聞いたところ、各項目の平均額の合計は6万1212円となり、2年連続で前の年よりも大幅に減少した。

   昨年の21年卒では、2009年(10年卒)に就活費用を調査しはじめてから、初めて10万円を切ったが(9万7535円)、そこからさらに3万6000円あまり減少した。

就活費用の地域格差も縮小

   調査によると、就職活動の費用(平均)はコロナ禍前の2020年卒の学生は13万6867円だったが、昨年(21年卒の学生)が9万7535円、22年卒は6万1212円だった。コロナ禍前からほぼ半減した。

   就活費用を項目ごとにみると、これまでの活動で最も多くを占めてきた交通費が、この2年で6万円台から1万円台へと大きく減少(6万2407円 → 1万4370円)して、全体の金額を引き下げた。宿泊費も大幅に下がり、オンライン化の進行によって移動に伴う費用が一気に縮小したことがわかる。

   リクルートスーツ代も減少しているが、減り幅は緩やか。キャリタスリサーチは、企業を訪問する機会が減ったとはいえ、オンラインでの選考もスーツで臨むケースが多いため、とみている。交通費が激減したことで、いまや就活費用で最も多くを占める項目となった=下のグラフ参照。

   なお、オンライン回線料は大学の遠隔授業のためにすでに整備していたことなどから、就活費用に含まなかった学生が多かった、としている。

交通費の負担が激減した
交通費の負担が激減した

   かかった就活費用を地域別にみると、合計額が最も高いのが「中国・四国」で、8万6696円と8万円を超える。続く「東北」は7万5626円。全体の金額が最も低いのは「関東」の5万4405円で、「中国・四国」との差は3万2000円あまり。コロナ禍前の2020年卒業の学生では、最も多い地域と少ない地域では10万円以上の差があったが、交通費・宿泊費の占める割合が下がったことで、地域差が緩和された格好だ。

   金額の減少に伴い、就活費用をアルバイトなどで「全額自分で工面した」という学生は46.2%で、やや増加傾向にある(20年卒は41.9%)が、「親に出してもらった」(46.1%)が依然として半数近くにのぼる。

   ただ、全体額が下がったことで、親の負担する金額も徐々に減少。親の負担額(平均)は、2022年卒は4万7466円にとどまったが、21年卒は6万3634円、コロナ禍前の20年卒は8万2059円にのぼった。

費用はオンライン環境に整備に使った

   就職活動のために支払った費用について、学生から寄せられた声には、

「今年度はオンラインでの選考が主流であったため、予想以上に交通費を抑えることができてよかったです」(九州沖縄、文系女子/総額 5万5000円)
「リモートでの面接や説明会が多かったため、交通費や外食費などは聞いていたほどはかからなかった。しかし、リモート面接を円滑に進めるための通信環境や設備を整えるのにはかなり費用をかけたため、交通費や外食費が浮いた分を使ったのではないかと感じています」(関東、文系男子/総額19万円)
「Uターン就職をしたので、交通費が多くかかった」(東北、文系女子/総額 19万9000円)「オンライン就活が主だったので、交通費が浮いて助かった。自粛期間に体型が変わったため、スーツを新調し直し、大金がかかった」(関東、文系女子/総額15万8700円)
「オンラインで就活が完結したのでお金はそれ以外かかっていない」(東北、理系男子/総額 2万3000円)

など、通信費用とパソコンや照明器具といったオンライン就活のための環境整備にお金がかかったようだ。

   また、就職活動で大変だったことをすべて選んでもらい、コロナ前の2020年卒業の学生と比べると、1位が「エントリーシート」(60.5%)、2位「自己分析」(58.3%)、3位「就職情報の収集」(53.0%)と上位3項目は半数を超えており、かつそれぞれ2年前よりも増加したことがわかった。

   「企業研究」「業界研究」など多くの項目で増加しており、コロナ前に就職活動をした学生よりも苦労の度合いが増しているようだ。

   キャリタスリサーチは、なかでも「就職情報の収集」はここ3か年で約10ポイント(43.5% → 53.0%)増えており、大学や就職活動などがオンライン化したことで、情報収集が難しくなっている様子がうかがえる、としている。

   就活生からは、

「オンラインでの集団面接はお互いに空気感がわからず苦労した」(理系男子)
「コロナ禍で友達にも会うことができず、孤独を感じながら就職活動に取り組んだことがつらかった。友達とオンラインで会話したり、大学の就職センターを利用したりすることでモチベーションを保った」(文系女子)

といった声があった。

   なお、10月1日現在の内定率は88.4%で、前回調査(7月調査=80.1%)から3か月で 8.3 ポイント伸びた。ただ、前年同期実績(88.6%)はわずかに下回った。

   就職活動を終えた学生は全体の85.7%。文系が理系を上回った。一方、就職先が決まっていない学生に今後の予定を聞くと、54.7%が「就職先が決まるまで就職活動を続ける」と回答。前年調査の58.7%より減少した。

   調査は2022年3月に卒業予定の大学4年生(理系は大学院修士課程2年生を含む)を対象に、10月1日~7日に実施。1116人(文系男子347人、文系女子330人、理系男子308人、理系女子131人)が回答した。