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サボり癖のある問題社員、テレワークどうする?【テレワークに役立つ一冊】

   11月は総務省の「テレワーク月間」。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、一気にテレワークが浸透したが、新規感染者の減少とともに再び職場に通勤する人が増えてきた。とはいえ、テレワークの大きな流れは止まらないようだ。今月は、テレワークや電話、コミュニケーションに関連する本を紹介しよう。

   テレワークについて、さまざまな本が出ている。本書「Q&A いまさら聞けないテレワークの常識」は、社会保険労務士として10年以上にわたり1000社以上の企業からテレワークの相談を受けてきた二人が執筆。在宅でかかる費用の分担、就業規則の記載法、新入社員や高齢社員の対応など、実際によく受ける相談をもとにしているので、実践的だ。

「Q&A いまさら聞けないテレワークの常識」(武田かおり・中島康之著)日本経済新聞出版
  • コロナ禍でテレワークの普及が進んだ!
    コロナ禍でテレワークの普及が進んだ!
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テレワークは業務改善に役立つ

   著者の武田かおりさんは、社会保険労務士。社会保険労務士法人NSRテレワークスタイル推進室CWO。一般社団法人日本テレワーク協会客員研究員。総務省地域情報化アドバイザー。

   もう一人の著者、中島康之さんは特定社会保険労務士。社会保険労務士法人NSR代表。一般社団法人日本テレワーク協会アドバイザーだ。

   Q&A方式で書かれているので、企業のテレワーク担当者は自社で問題になりそうな箇所を拾い読みするだけで、いちおうの対応が取れるだろう。最初の質問はこうだ。

「仕事が遅い、納期が守れない、サボり癖など問題のある社員だけをテレワークさせないことはできる?」

   微妙な質問だが、実際に多い質問だという。答えは「Yes」だ。こうした自律して仕事ができない従業員が「テレワークしたい」と申し出てきたのであれば、指導・教育のチャンスだととらえ、具体的に「〇〇ができるようになったらテレワークができるよ」と目標を与え、自律して仕事を行えるようになるためのモチベーションにつなげるのだという。

「サボるかもしれない従業員」への対応策は?

   テレワークでは業務プロセスや成果の見える化を進めざるを得なくなり、さまざまな気づきが生まれる。これを面倒に思うのではなく、「今後の業務改善に活かすことで、企業全体の発展にもつなげていただきたい」とアドバイスしている。

   関連して、「サボるかもしれない従業員」への対応策も書いている。WEB会議システムの常時接続をはじめ、パソコンのログによる操作の分析や顔認証など、さまざまなツールが開発されている。たとえば「Fチェア」という勤怠管理ツールでは、パソコンの場面をランダムに撮影記録する機能があり、後から管理者は従業員の働きぶりを確認できる。

   「在宅勤務手当」「テレワーク手当」など一律に取り入れるべきか? という質問に対しては、「No」と答えている。設備機器や水道光熱費の負担が生じ、頻度が高くなるとその負担も増えるため、多くの企業が「在宅勤務手当」として、ある程度の支弁をしているのが実態だが、必須ではないという。

   だが、設備機器や水道光熱費を従業員の負担とする場合は、その旨を就業規則に記載しなければならない。就業規則に定めがない場合は企業負担となる。

   いくつかの企業の例を紹介している。富士通は各々の業務内容に合わせて自宅やハブオフィス、サテライトオフィスなどから自由に働く場所を選択できる勤務形態にするとして、コアタイムのないフレックス勤務の国内グループ全従業員へ適用を拡大。月額5000円の在宅勤務の環境整備用補助を支給。通勤定期代の支給を廃止した(2020年7月)。

   ドワンゴは、在宅勤務対象の正社員・契約社員には、在宅勤務手当として月額2万円の支給を決め、これまで支給していた電気代・通信費等手当(週551円)を廃止、出社時の交通費は定期代ではなく経費精算での支給にした(2020年6月)。

マネージャーが心がけること

   マネージャーがテレワークで心がけるポイントを5つ挙げている。

   1 マネージャーから率先してテレワークを利用する
2 業務の指示は、成果や期日など通常よりも具体的に行う
3 チームでの仕事なら、1日1回はオンラインで顔を合わせる
4 「簡単な連絡はチャット、長期保存はメール」等、連絡ルールをつくる
5 雑談でメンバーの不調を見逃さない

   また、長時間労働を防ぐため、マネージャーからのメールは勤務時間内を心がける、深夜・休日はシステムへのアクセスを制限する、テレワークでの時間外・休日・深夜労働を原則禁止する、などの注意も必要だという。

   テレワークに反対する人や、すぐには導入できない職場もある。本書では、「いまは対象部門や対象者を絞っているけれど将来は全従業員を対象にする」と表明することを勧めている。「製造業なので全従業員はできない」という企業もあるが、味の素のように、製造部門でも従業員が月に1回テレワークができる仕組みを導入した企業もあるという。

   また、「半日テレワーク・半日休み」を月1回以上実施することで、年間6日の年休の取得が無理なく実現するなど、現実的な導入策も紹介している。

   テレワークに関しては、社会保険労務士のアドバイスが有益であることを痛感した。まずは就業規則がどうなっているのか。その点検と見直しを総務担当者は始めるべきだろう。(渡辺淳悦)

   「Q&A いまさら聞けないテレワークの常識」
武田かおり・中島康之著
日本経済新聞出版
990円(税込)