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「職場の若い人にスマホのことを聞くのはそんなに迷惑?」50代女性の投稿が大炎上!「ショップに行けよ」「教室に通ったら」と怒りの声殺到

「職場の若い人にスマホのことを聞いただけなのに、嫌がられてしまいました」

   50代女性の投稿が大炎上している。携帯ショップに行くとお金がかかるし、若い同僚はショップの元店員だからスマホに詳しい。そこで何度も聞いているうちに、「私にはわかりません!」とプッツンされてしまった。

   「ちょっと教えてくれてもいいのに、そんなに迷惑でしょうか?」という女性に対して、

「非常識!」
「スマホ教室に通いなさい!」

という怒りの声と、

「うちの職場にも『教えて魔』がいて、大迷惑をしている」

という嘆きの声が殺到している。専門家に聞いた。

  • スマホ操作がよくわからない年配女性(写真はイメージ)
    スマホ操作がよくわからない年配女性(写真はイメージ)
  • スマホ操作がよくわからない年配女性(写真はイメージ)

「ショップに行くと、結構な金額がとられるので...」

   話題になっているは女性向けサイト「発言小町」(2021年10月30日付)に載った「若い人にスマホの事を聞いただけなのに」というタイトルの、50代事務員の女性からの投稿だ。

「スマホを持ってみたくて最近、携帯電話(ガラケー)から機種変更をしました。勤めている会社では、スマホのことがよくわかる若い人がその女性しかいません。スマホはわからないことだらけで、若い人に聞かないと正直前に進めないです。
アプリのこともわからないし、わからない通知がパニックになるし、電子マネーの残高表示がおかしくなったり、フリーのWiFiスポットで電波が入らなかったり...。アカウント設定云々もさっぱりわからず、ショップでやってもらうと結構な金額を取られるので、その女性にお願いしてやっていただきました」

   その女性は、携帯電話ショップの元店員だったので、さすがにプロだけあった何でもできた。ところが最近、職場で頼んでも無視して、「冷たい態度」に出るようになった。

「『私にはわかりません!』と、冷たく引き離されます。先日も聞いたら『すみません、後でいいですか?』と、かなり強く言われました。相手の仕事中に話しかけた私も悪いですが、そんなに怒られることだったのかな...と。いつか人に聞かなくても済むようにスマホを使いこなしたいだけなのです。スマホの使い方を聞かれるのがそんなに迷惑なのでしょうか」

と訴えるのだった。

   職場の仕事や御礼をしたのか気になるが、投稿者の女性によると、勤務中にスマホを見ていても注意されない。また、その日にやらないといけない重要な仕事が特にあるわけではないと、ゆるい職場らしい。

「スマホの使い方くらい教えてくれてもいいのになあといった感じ」

で、御礼も自身が作った漬物や野菜を頻繁に渡しているという。

「若い人の仕事の時間を奪わないで!」

職場の若い人に聞くとスイスイと解決した(写真はイメージ
職場の若い人に聞くとスイスイと解決した(写真はイメージ

   この投稿には、多くの人から「呆れた」「若い人の仕事の時間を奪っている」「非常識」という猛批判が殺到した。

「怒られるというより、嫌われるといったほうが正しいです。スマホの説明本はたくさん出ていますが、買いましたか。どのキャリアも無料で教室を開いていますが、行きましたか。わからないことをネットで調べましたか。いつまで聞くのですか。いつになったら覚えるのですか。手近な人を使ってタダで済まそうなんて卑しいです。最後に強く言いたいです。年齢を言い訳にしないでください」

「若い女性の気持ちがよくわかります。私も元ショップ店員だからか、職場でよく聞かれます。みんな私に聞けば何とかしてくれるだろう感がありありです。スマホを私に渡しながら『これがわからない』。これってどれ、何、何がわからないの! アプリはショップでサポートしているわけではないので、わかりません。だから料金が発生するのです。『私が触って何かしてしまったら嫌だから』とはっきり断っています。正直、面倒です。お昼の休み時間を取られるし」

   職場の若い人に「御礼」に渡している、自家製の漬物と野菜についても「返って迷惑。非常識の二乗です」という批判が多かった。

   投稿主と同じ50歳代、あるいはそれ以上の年代の人々から「自分は努力してスマホを覚えた」という声が多く寄せられた。

「70歳台の母がスマホを初めて持って、同居の孫たちに使い方を聞いていました。でも、なかなか教えてもらえないと母が嘆いていました。孫たち曰く『同じことを何度も聞かれるからヤダ』。母はスマホ教室に通い始めましたよ」

「還暦過ぎです。Androidを普通に使っています。私は、人に聞かず全部自分でやりました。いろいろ触っていると、慣れてできるようになります。わからないからと、詳しい人に丸投げでしてもらう人が周りにいますが、未だに使えないようです。使いこなしていない機能があるとは思いますが、充分楽しく便利です。わからないことは調べれば、スマホの中で答えが見つかります。どんどん触って試してみてください」

「60歳以上でもデジタルの学び直しに挑戦する人は多い」

   J‐CASTニュース会社ウォッチ編集部では、「スマホのことを職場の若い人に聞いただけなのに」という女性の投稿をめぐる論争について、女性の働き方に詳しいワークスタイル研究家の川上敬太郎さんに話を聞いた。

――今回の「スマホのことを聞いただけなのに」という投稿をめぐる大反響を読まれて、率直にどのような感想を持たれましたか。

川上敬太郎さん「投稿者さんとしては決して悪気があるわけではない。ただスマホを使えるようになるために少し教えて欲しいだけという気持ちなのだと思います。しかし、聞かれる側の同僚はまったく別の印象を受けているのではないでしょうか。 スマホの使い方を聞かれる側は、投稿者さんが思われている以上に負担を感じています。投稿者さんご自身が、スマホの使い方を理解していないために、聞かれる側の負担の度合いについてピンときていないように感じます」

――論争の背景には、投稿者のようにデジタルに弱くてスマホを使いこなせない、いわゆる「情報弱者」の問題があると思いますが、川上さんが研究顧問をされている、働く主婦層の実情を探る調査機関『しゅふJOB総研』で、「情報弱者」のことを調べたことがありますか。

川上さん「しゅふJOB総研と理系学生採用支援を行う株式会社テックオーシャンと共同で、『DXと人材』に関する調査を行ったことがあります。
【DXに関する意識調査】主婦層と国立大理系学生の比較

主婦層と国立大理系学生それぞれに、『あなたはDX人材になれると思いますか?』と質問したところ、主婦層は『思う』が10%、『思わない』が32%だったのに対し、国立大理系学生は『思う』が29%と主婦層の3倍、『思わない』は16%で主婦層の約半分でした。
主婦層は、『DXの名前も内容も知らない』という人が6割以上で、デジタル周りの情報に対する関心や知識、自信の低さが表れているように思います。フリーコメントでも『何のことだかさっぱりわからない』『興味がない』という人が目立ちました。
しかし、60歳代でも『年齢に関係なく前向きに挑戦したい』『自分はアナログ人間だが、デジタルに適応できる人は憧れです。学び直しをしたい』という人がいました。人それぞれなのだと思います」

――回答者たちの意見は投稿者の批判ばかりで、擁護する人は皆無です。過去に取り上げた論争では、多少なりとも投稿者の理解者がいましたから、これほどの一方的なバッシングは珍しいです。投稿者のしたことはそれほど断罪されるべき内容でしょうか。ちょっと「情報弱者ハラスメント」さえ感じられますが。

川上さん「投稿者さんご自身が、同僚に負担をかけていることに対して無自覚であることが、擁護者がいない大きな原因ではないかと感じます。ただ、投稿者さんからは悪意を感じません。無邪気と言うと語弊があるのかもしれませんが、無自覚な行為で責められてしまう状況は投稿者さんご自身にも理解しがたく、『情報弱者いじめ』のような印象になっている面もあると感じます。
しかし、それは元を正すと、投稿者さんがスマホに疎いことが原因というよりは、コミュニケーションの取り方に起因する部分が大きいように思います」

「スマホのトラブルを調べるのは医者の診察と同じ」

――投稿者が批判される点は、第一に「自分でショップに行ったり、スマホ教室に通ったり、本やネットで調べたりすればよいことを職場の同僚に聞いたこと」、第二に「同僚の働く時間を奪ったこと」、第三に「自家製の漬物や野菜を贈ってお礼の代わりにしたこと」というものです。それぞれの理由について、どう思いますか。

川上さん「まず第三については、同僚も漬物が好きで、スマホの件の御礼だと受け取っているなら問題はないように思います。しかし、漬物が嫌いで、返って迷惑だと受け取っているならば問題ですが。
第一と二は、一体的なものです。そのことが投稿者さんには今一つ理解しがたいのだと思います。スマホについて聞かれる側は、まずどんな質問なのかを理解する必要があります。たとえば、『スマホが動かない』と聞かれても、それが深刻な故障なのか、充電のし忘れなのか、指でスライドさせることが分からないのか、などいろいろな可能性があります。 しかし、ただ『スマホが動かない』と聞かれてしまうと、まずどんな症状なのか、何をしてどうなったのか、などを探ることから始めることになります。医者の診察のような感じです。その結果、単に充電のし忘れだったとわかった場合、『なんだ、そんな簡単なことか』で終わってしまいそうです。しかし、その結論を見出すまでに5分かかったとしても、その5分は同僚にとってフルに頭を回転させた5分なのです」
「もうスマホのこと聞くの、やめて!」と怒る若い女性(写真はイメージ)
「もうスマホのこと聞くの、やめて!」と怒る若い女性(写真はイメージ)

――なるほど、医者の診察と同じですか。投稿者はその苦労が全然わかっていない、ということですね。

川上さん「投稿者さんからすればちょっとした質問のつもりでも、聞かれた側には意外と負担がかかっているものです。その負担が侮れないから、携帯電話会社はわざわざショップを構えたり、教室を開いたりしているのです。それらの背景を理解せずに、何度も気軽に聞いているとしたら、それを不快と感じる同僚は決して心が狭いわけではなく、本当に負担になっているのです。投稿者さんが、その負担に気づいていないことに批判が集まっているように感じます」

「スマホに弱い人」がドンだけ多くの人を困らせているか

――投稿者がこれほどバッシングを受ける背景には、現実に身近に父母や姑など、投稿者と同じように「スマホに弱い人」がいて、迷惑をこうむっている人が多い面があるのですね。

川上さん「似た経験をしたことがある人が非常に多いのではないでしょうか。さらに年配者から聞かれると、立場が上であることから、なかには横柄な物言いをされる人もいると思います。年配者からすれば、使い方がわからない時点でイライラしていたりするものです。つい口調がキツクなってしまうかもしれません。
また、普通にスマホを使っている人をみると、簡単に教えてもらえそうな印象を受けてしまいます。しかし、教える側は、どう伝えればわかってもらえるだろうかと頭を悩ませながら対応することになります。そんな、聞き手側と聞かれる側との間にあるギャップが、感情的な摩擦を生み出す原因になっているように思います」

――しかし、年配者の中には携帯ショップ代わりに職場の若い同僚からタダでスマホを教えてもらおうという打算とは別に、若い人からスマホやパソコンを教わることを一種のコミュニケーションのきっかけと考える人もいます。「いい関係を築けた」と思ったという年配者もいますが、そうした考えは独りよがりだということですか。

川上さん「正直、かなり個人差があると思います。同僚がIT機器をスイスイ使っている姿を見て、『ちょっと教えてくれるくらいいいだろ』と押し付けるようなスタンスだと、疎まれてしまうように思います。一方で、IT機器を使いこなす同僚の腕を見込んで教えを乞う、頼る、というスタンスだとむしろ喜んで教えてくれる人が多いように思います。
その点、『私にはわかりません』と拒否の言葉を投げかけられている投稿者さんは、同僚とあまり良い関係を築けてないように映ります」
携帯ショップに行って聞くべきだという声が多い(写真はイメージ)
携帯ショップに行って聞くべきだという声が多い(写真はイメージ)

――一般論として、「情報弱者」の人は職場ではどういうことに気を付けるべきでしょうか。

川上さん「相手の負担度合いを想像することが大切だと思います。これは、IT機器の使い方に関することに限らず、○○さんの連絡先を教えて欲しい、などちょっとした質問の際にも共通することだと思います。 もし、○○さんの連絡先を確認するために、倉庫の奥にある段ボールをいくつもひっくり返さなければならないとわかっていれば、気軽に聞くことはしないでしょう。IT機器の使い方では、聞かれる側の大変さが把握しづらいのが難点です。そのため、こういうことが知りたいのだが、答えるのは結構大変そうかな? と負担度合いを確認しながら聞くのがよいのではないでしょうか」

――投稿者は、これから仕事をするうえで、どういうことに気を付けるべきでしょうか。川上さんなら、ズバリどうアドバイスをしますか。

川上さん「投稿内容を見る限り、『うちの会社は厳しくないのでスマホを見ていても注意されない』『スマホの使い方くらい教えてくれてもいいのに』『私が家で作った漬物や野菜を頻繁に渡している』など、投稿者さんはご自身の目線からの情報が唯一のモノの見方であるかのように、物事を断じてしまうところがある印象を受けます。
うちの会社はスマホを見ていても注意されない、というのは単に注意をしないだけであって、しっかりした上司であれば、きちんと見ています。注意されないから仕事中にスマホを見てもよいという考え方も褒められません。同様に、漬物や野菜がどれだけ自信作であっても、『ご迷惑じゃない?』と一声かけて確認することで、相手側の気持ちを知ることができるはずです。
スマホの使い方を聞く際に、相手の状況を確認しながら上手にコミュニケーションをとりながら教えてもらっている人もいます。投稿者さんは決して、同僚を困らせてやろうとか思っているわけではないので、疎まれてしまうきっかけではなく、新たな親睦の機会となるようコミュニケーションをとっていただきたいと思います」

(福田和郎)