衆院選での勝利を受けて、晴れて第101代の内閣総理大臣に選出された岸田文雄氏。安定多数の議席を手に入れた岸田内閣の船出は安泰かと思いきや、いきなり「10万円給付」という新たな火ダネに直面しているようです。
もともとは、コロナ禍での支援策として公明党が選挙公約にうたっていたものですが、対象や支払い方法をめぐって賛否両方の声が聞こえてきます。「バラマキ」批判もつきまとうこの「10万円問題」を、英語で話してみましょう。
岸田文雄首相の最初の打ち出しとなった「10万円給付」。どちらかと言うと、公明党に押し切られる形で、異例のスピード決着となりました。
Japan to give children aged 18 or younger 100,000yen in cash, vouchers to boost economy
(日本政府は、経済政策として18歳以下の子どもを対象に10万円の現金とクーポンを給付することにした:ロイター通信)
本来であれば、新政権の「目玉政策」となるはずの「10万円給付」ですが、先日、日本経済新聞社が実施した世論調査によると、「18歳以下への10万円給付」を「適切ではない」と回答した人が67%にのぼるなど、第2の「バラマキ配布」を懸念する声が高まっています。
こうした批判を打ち消すように、親の年収が960万円以上の子どもを給付対象から除く「所得制限」を設けると発表されました。
Japan coalition agree on income cap for stimulus payments
(日本の連立政権は、給付金に所得制限を設けることで合意した:ロイター通信)
「blanket」(大判振る舞い)な給付金の先輩と言えば、「アベノマスク」に代表される安倍元首相のコロナ対策が思い浮かびますが、そこは海外メディアも忘れていない様子。今回の「10万円給付」報道でも、
「Prime Minister Shinzo Abe gave a 100,000 yen blanket handout」(安倍晋三首相は10万円を広範囲に配布した)
と、しっかり押さえていました。
誰にでも一律10万円を支給した安倍元首相に比べたら、一応「960万円の年収」で「cap」をかける岸田首相の方が賢明に映るかもしれません。
今のところ、「10万円」は年内に現金(cash)で5万円を先行給付し、来春の入学シーズンに向けて5万円分のクーポン(coupon、voucher)を配布するようですが、この二段階方式についても、海外メディアは「it comes ahead of an upper house elections next summer」(来年夏の参議院選挙に向けて)支払われると報じています。
欧州を中心に新型コロナウイルスの感染が急激に再拡大するなか、国民の困窮よりも選挙や景気対策を優先するように映る岸田政権。コロナ対策で失脚した安倍・菅内閣の二の舞は避けてもらいたいものです。
(井津川倫子)