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世界人口は急増! 食料危機は喫緊の課題 日本は子どもの7人に1人が貧困状態(鷲尾香一)

   「SDGs(持続可能な開発目標)」のグローバル週間(Global Goals Week、2021年9月17日から26日)が開催されて以降、メディアでは毎日のようにSDGsの話題が取り上げられている。

   10月にはSDGsの目標の一つでもある食品ロス削減推進法が施行されて2年が経過した。 農林水産省の2018年度の推計では、日本では年間に2531万トンの食品廃棄物が発生している。このうち、本来は食べられるのに捨てられる食品、いわゆる食品ロスは年間600万トンにのぼる。

  • 日本は子どもの7人に1人が貧困状態にあるらしい(写真はイメージ)
    日本は子どもの7人に1人が貧困状態にあるらしい(写真はイメージ)
  • 日本は子どもの7人に1人が貧困状態にあるらしい(写真はイメージ)

世界人口の10人に1人が栄養不足に陥っている

   2015年9月に国連サミットでSDGsが採択され、その目標の一つとして「2030 年までに小売・消費レベルにおける世界全体の 1人当たりの食料廃棄物を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品の損失を減少させる」ことが盛り込まれた。

   国連食糧農業機関の2011年の推計では、世界で廃棄された食料品は13億トンにのぼる一方で、2020年の推計では栄養不足の人口が7億6800万人と、世界人口の10人に1人の割合で栄養不足に陥っている。

   国連によると、世界人口は急速に増加し、2050年には約97億人に達すると見られている。食料危機は目前に迫った喫緊の課題だ。

   日本は食料を海外からの輸入に大きく依存している。2019年の日本の食料自給率は38%にとどまる。こうした状況の中で、日本もSDGsの採択を受け、食品ロス削減の取り組みが活発化した。

   政府は、2000年度に980万トンだった食品ロスを2030年度には半減し489万トンとする目標を掲げている。しかし、食品ロス削減ペースは順調とは言えず、単純計算では今後、年間9万トン以上の削減が必要となる=表1参照

   日本の年間600万トンという食品ロス量は、毎日10トントラックで約1640台分の食料を廃棄していることになる。1人当たりでは47キログラムとなり、これは1人当たりの米の消費量約54キログラムに近い。

食品ロスの削減は「経済の効率性を高める」ためにも重要

   食品ロスには、食品製造業や外食産業などから排出される「事業系」と家庭から排出される「家庭系」がある。600万トンの内訳では事業系が324万トン(54%)、家庭系が276万トン(46%)と約半分が家庭から排出されている。

   事業系の食費ロスは、食品製造業から126万トン(39%)、外食産業116万トン(36%)、食品小売業66万トン(20%)、食品卸売業16万トン(5%)が排出されており、家庭系では123万トン(44.6%)が食べ残し、消費期限切れなどの直接廃棄が96万トン(34.7%)、食材の食べられる部分を捨ててしまう過剰除去が57万トン(20.7%)となっている。

   日本は食料を海外からの輸入に大きく依存していることは前述した。豊かそうに見える日本だが、じつは貧困率の基準となる等価可処分所得の中央値の半分である122万円に満たない世帯員の割合では、子どもの貧困率は13.5%となっている。子どもの7人に1人が貧困状態にある。

   近年、活発化しているのが、貧困家庭や養護施設などに、企業や家庭から提供された食品を提供する事業だ。フードバンクなどと言われるこの事業は、食品ロス削減推進法にも国の支援が盛り込まれており、事業団体は増加している。

   食品ロスの削減には、さまざまな取り組みが行われている。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大により、外出自粛やテレワークが普及していることを要因に、家庭ごみの排出が増加傾向にあるという現実もある。

   2019年度に、し尿処理を除いた一般廃棄物の処理(ごみ処理)には2.1兆円が使われている。食品ロスの削減は、食料問題だけではなく、経済の効率性を高めるためにも重要な課題だ。