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「契約を結ぶ取引先は3割だけ」立場の弱いフリーランスの反撃が始まった! 生き残る秘訣はコレだ

「取引先としっかり契約を結ぶ人は3割以下」
「仕事上のトラブルに巻き込まれる人も4割」

   近年、「自由に働きたい」と、自らフリーランスの仕事を選ぶ人が増えているが、日本労働組合総連合会(連合)が2021年11月18日に発表した「フリーランスとして働く人の意識・実態調査2021」(埋込リンク:https://www.atpress.ne.jp/news/286141)では、まだまだ弱い立場に追い込まれている人が多いことが明らかになった。

   フリーランスの人がもっと働きやすくなるにはどうしたらよいのか――。

  • エンターテイメント業界では契約がずさんだ(写真はイメージ)
    エンターテイメント業界では契約がずさんだ(写真はイメージ)
  • エンターテイメント業界では契約がずさんだ(写真はイメージ)

契約が最もずさんなのはエンタメ業界

   調査の結果で際立ったのは、しっかりした「契約」を結ばずに仕事をすることを余儀なくされているフリーランスの人が多いことだ。主要な取引先からは書面(メールを含む)による契約内容の明示があるか聞いたところ、「必ず明示がある」が29.9%にとどまり、「明示がない時もある」(45.5%)と「明示があったことはない」(24.6%)を合わせると、7割以上の人が曖昧な契約関係のまま業務を行っていた=図表1参照

図表1:取引先から契約内容の明示があるのは3割以下(連合作成)
図表1:取引先から契約内容の明示があるのは3割以下(連合作成)

   仕事内容別にみると、契約関係が一番しっかりしているのはIT関連で、47.3%が「必ず明示がある」と答えている。次にコミュニケーション関連(45.2%)、暮らし・学び関連(36.8%)、からだ・健康関連(35.3%)と続く。

   逆に契約関係が最もずさんなのがエンターテイメント関連だ。「必ず明示がある」と答えた人は19.7%しかいなかった。次は事務・ビジネス関連で24.0%、クリエイティブ関連の24.4%と続く=図表2参照

図表2:仕事上のトラブルを経験した人の割合(連合作成)
図表2:仕事上のトラブルを経験した人の割合(連合作成)

   このように契約関係がはっきりしていないと、当然、仕事上のトラブルも多くなる。この1年間で仕事のトラブルを経験したかを聞くと、4割近い39.7%の人が「経験した」と答えた。

   どんなトラブルだったのか、複数回答で選んでもらうと、トップ5は「報酬の支払いの遅延」(29.5%)、「一方的な仕事内容の変更」(29.5%)、「不当に低い報酬額の決定」(26.4%)、「一方的な継続案件の打ち切り」(25.7%)、「報酬の不払い・過少払い」(23.4%)となった=図表3参照

図表3:トラブルの内容で多いものは......(連合作成)
図表3:トラブルの内容で多いものは......(連合作成)

4人に1人がトラブルを抱えたまま仕事

   ここでもトラブルを経験した人の多さを仕事内容別にみると、コミュニケーション関連(47.6%)とクリエイティブ関連(47.4%)がダントツに多く、ともに半数近くに達している。逆にトラブルが一番少ないのが営業・販売関連で24.3%だった。

   こうしたトラブルが起こったとき、どう対応・解決したのだろうか。解決方法で一番多かったのが「発注者と直接交渉」(40.1%)で、次いで「交渉せず自ら取引を中止」(18.1%)、「フリーランス仲間に相談」(17.1%)、「フリーランスではない友人・知人に相談」(13.4%)と続く。しかし、「何もしなかった・できなかった」という人が3割以上(31.2%)もいた=図表4参照

図表4:トラブルをどうやって解決したか(連合作成)
図表4:トラブルをどうやって解決したか(連合作成)

   そして、トラブルが解決しているかを聞くと、「解決した」が43.3%となった一方、「完全には解決していない」と答えた人が6割近く(56.6%)に達した。結局、全回答者のうち22.5%の人が未解決のトラブルを抱えていることになる。これは、約4人に1人の割合だ。

   連合の山根木晴久副事務局長は記者会見で、

「コロナ禍で日本のセーフティネットの脆弱性が浮き彫りになった。フリーランスとして働く多くの人が安心して働き続けることができるよう、新たな法律の整備が必要だ」

   と語った。

   なお、この調査は2021年10月1日~5日に実施。全国のフリーランスとして働く20歳~59歳の男女1000人から回答を得た。

「取引先とのやりとりは証拠を残しておこう」

   この調査に、ヤフーニュースのヤフコメ欄にはフリーランスの人たちから多くの意見が寄せられている。まず、しっかりした契約を結ぼうとしない取引先が多いことには――。

「契約書自体を作らない会社が多い。口約束や暗黙の了解で進めると危険。お金を請求すると、『これってお金発生するのですか?』と平気で言ってくる人もいる。相手に面倒くさがられても必ず契約書は作成しましょう。あとは横のつながりを持つようにしましょう。トラブル防止に有効な情報を共有できたりします」
「フリーランスにとって契約書は生命線。絶対に交わすべき書類だ。そしてフリーの人ほど法律を勉強しなきゃいけない。フリーの人は、会社が自分を守ってくれることはない。盾になり守ってくれるのは契約書という証明書だけ」

   トラブルについては、こんなケースも。

「100時間で契約させ、実際は180時間くらい稼働。でも、『100時間契約で、あなたが勝手にやったのだから損害賠償を請求したいくらい』と言われた。勝手になんてやっていないし、現場担当者から『総務には追加発注をしておく』という伝言を受けたからやったのにあんまりだった。翌月もシレッと80時間の契約書を持ってきたので、追加条項を求めると、『使わない』と言われた」
フリーランス仲間は情報交換が盛んだ(写真はイメージ)
フリーランス仲間は情報交換が盛んだ(写真はイメージ)

   トラブル対策にはこんな注意を払っている人が多い。

「言い掛かりを付けて報酬の支払い拒否、支払い遅延を実際に経験しました。可能な限り証拠を残してください。たとえ面倒でも電話の音声はすべてボイレコで録音し、相手にメールを送るときはBCCで、できるだけ第三者にさらしてください。さらには自分宛に空メール送信して、そのBCCに報酬に関する資料、言質を取った音声をファイルに添付して、できるだけ沢山の人にさらすようにしましょう。幸い私は支払い遅延があっても、取りっぱぐれはなかったです。もし報酬を受け取れない最悪の事態が起きても、戦った事で精神上の衛生を保持できます。絶対あきらめてはいけません」
「フリーランスでサバイブする鍵は、自分の能力の向上に尽きる。『この条件ではおたくとは仕事できません』と言えるレベルになればフリーランスはかなり楽。あとは健康管理です。組織に属すると、時間の7割程度は部下の面倒見や調整業務だからね。フリーランスはそれがないのがありがたい」
「フリーランスはいかに良い取引先と仕事ができるか。これに限るかな。必要以上の値切りや、約束にない業務の追加など、一方的な要求をするところとはお付き合いしない。ただし、嫌な取引先とのお付き合いを断れる勇気があればだけど」
「フリーランスだと仕事がなくなる恐怖でつい悪条件の仕事を受けちゃいがちだけど、自分のなかで『どこまでいくらでやるか』みたいな働き方の線引きをしっかりしないと病む。あと、契約をする前の段階で、コミュニケーションにちょっとでも『おや?』って感じたら、だいたい地雷案件。見かけの条件の良さに騙されちゃ絶対ダメ!」

   最後にこんなアドバイスを紹介したい。

「私も経営者兼フリーランスとして活動しています。自分一人の力ではたかがしれているのでフリーランスのネットワークを作りました。一緒に仕事をするだけでなく、こんな会社、こんな仕事の内容だった、という情報共有のネットワークも兼ねています。やはり、〇〇社の案件だけは受けないようにしようとか、いくつも言いたくないような契約や労働内容の情報が入ってきます。
発注する側に言いたいのは、情報というのは良くも悪くもだんだんと広まっていきます。良くない発注者の仕事を受ける人が減っていくということです。また、正社員になれないからフリーをやっているなんて、ひと昔前の話。優秀な人は仕事を選んでいくつも同時にこなしていますよ」

(福田和郎)