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「お安くなりますよ」電力やガスの切り替え勧誘詐欺にご注意! 検針表を見せたら一発アウト

   2016年に電力小売りの全面自由化が始まって5年半、その翌年にはガス小売りの全面自由化が始まり4年半が経ったが、「大手から切り替えると安くなりますよ」と言って強引に勧誘したり、「マンション全体で切り替わっていますから」と騙したりするケースが後を絶たない。

   あまりに悪質なケースが目立つため、国民生活センターと消費者庁、経済産業省の3者が合同で2021年12月17日、「電力・ガス自由化をめぐるトラブル速報」を発表。警鐘を鳴らしている。

  • うかつに契約書にサインしてはダメ(写真はイメージ)
    うかつに契約書にサインしてはダメ(写真はイメージ)
  • うかつに契約書にサインしてはダメ(写真はイメージ)

「マンション全体の電力プラン変更です」

   経済産業省によると、いずれも家庭用で、新電力が占める割合は2020年末で約20%(約700社)、新ガスは約16%(約80社)になっている。ともにシェアは毎年増えているが、それとともに大手電力・ガス会社からの契約変更の勧誘をめぐるトラブル相談も急増している。

   国民生活センターなどによると、電力は昨年1年間で7059件だったのに、今年は9月末までに1万2611件。昨年に比べ2.4倍のペースだ。

   ガスも、昨年1年間で782件だったのに、今年は9月末までに1733件。こちらは3倍のペースだ。

   こんなトラブルのケースが多い。

【事例1】勧誘を断っても帰らないので、仕方なく契約してしまった

夜20時過ぎに事業者が訪れ、電気とガスの契約先変更を勧められた。「乗り換えるつもりはないので帰ってほしい」と伝えたが、「料金が安くなるのになぜ契約しないのか!」と言って帰ろうとしない。「じゃあ後で検討する。契約する場合は連絡するのでパンフレットと名刺をください」と言うと、「パンフレットは契約者にしか渡さない」と断られ、仕方なく契約した。名刺に記載された住所宛に追跡ができる形でクーリング・オフ通知を出したが、まだ受け取られていないようだ。(2021年9月)

   このように強引に契約を迫るケースが後を絶たない。契約の意思がない場合ははっきりと断ること。曖昧な返答をするからトラブルに巻き込まれる。万が一、自分の意思にかかわらず契約手続きが進められた場合でも、法定の契約書面を受け取ってから8日以内なら原則としてクーリング・オフが可能だ。

   また、強引で引き下がらない悪質業者や、聞き取った電話番号につながらないなど、自分でクーリング・オフができない場合は、経済産業省電力・ガス取引監視等委員会の相談窓口(03-3501-5725)に連絡しよう。

「検針票を見せると勝手に契約させられる」

【事例2】マンション全体のプラン変更とだまされて契約してしまった

事業者が訪問し、「マンション全体で電気の契約を変更している」「料金が安くなる」と言われた。現在契約している電力会社が新たなプランを開始したのだと思って承諾し、検針票を見せて申込書に記入した。しかし、その後、「新しい契約ありがとうございます」という電話が女性からあり、別の電力会社の勧誘だったことがわかった。検針票を見せてしまったが、どうしたらよいか。(2021年8月)
検針表を見せるのは命取りに!
検針表を見せるのは命取りに!

   大手電力・ガス会社を名乗って勧誘をするケースや、マンション全体の供給契約が変わるかのような説明を行うケースが非常に多い。マンションの場合、どこの電力・ガス会社と契約しているのか、知らない人が意外に多く、騙されやすい。ふだんからどこと契約しているのか、しっかり把握し、記録しておくことが必要だ。

   また、検針票の記載情報はくれぐれも慎重に取り扱うこと。氏名(契約名義)、住所だけでなく顧客番号、供給地点特定番号など検針票の内容は重要な個人情報になる。検針票を見せたために勝手に契約書を結ばれたケースが非常に多い。電話勧誘や訪問販売の際、検針票の情報を聞かれても、絶対に教えてはいけない。

【事例3】電話で契約先変更を勧められ、承諾しなかったのに請求書が届いた

4か月前に「電力会社を変えると料金が安くなる」という電話勧誘があった。「電話もセットで契約するとさらにお得になる」とのことだった。話は聞いたが承諾せず、個人情報も伝えなかった。その後、電話勧誘をしてきた電力会社から支払方法などの届出の書面が届いたが、契約したつもりがないため放置していた。 すると、2週間前に電気料金として約9000円の請求書が届いた。訳がわからず、もともと契約していた大手電力会社に問い合わせると、契約先が変わっているため詳細は新しい電力会社に聞くように言われた。契約先を元に戻したい。(2021年8月)

   電力・ガス会社には、契約を締結するときに、事業者名やその連絡先を含めた契約内容を記載した書面を交付する義務がある。こちらに契約したつもりがなくても、向こうは契約が成立したと思い込んでいるため、そうした書面はしっかり確認することが重要だ。

   契約を切り替えた覚えがないのに、契約が切り替わっていた場合は、経済産業省電力・ガス取引監視等委員会の相談窓口に情報提供をしよう。

引っ越し業者に任せたら電力会社が替わっていた

訪問販売の調子のよい口車に乗せられないように(写真はイメージ)
訪問販売の調子のよい口車に乗せられないように(写真はイメージ)

【事例4】引っ越し業者の比較サイトから電力の契約先変更をしたことになっていた

1か月前、同市同区内で引っ越した。その数日後、電気の契約先変更の書面が新居に届いた。引越し前に旧居と同じ電力会社で住所変更の手続きをしており、契約先の変更はしていない。書面を送付してきた電力会社に電話し、解約したいと伝えると、キャンセルすると言われた。
しかし、その後電話があり、「解約には違約金がかかる。契約申込みは引っ越し業者比較サイトからされている」と言われた。引っ越し業者を決めるためにサイトに登録し、最初に電話をかけてきた引っ越し業者に依頼したが、電気の契約申込み画面を見た覚えはない。契約先を元に戻したいが、どうしたらよいか。(2021年8月)

   契約情報は何事もきちんと控えて管理しておくことが大事だ。電力・ガスの契約を切り替えるうちに、どこの電力・ガス会社と契約しているか、わからなくなってしまったという人が非常に多い。

   特に、引っ越しの際には不動産業者や契約代行サービス事業者に任せたままでいると、知らないうちに別の電気・ガスと契約したことになっているケースがある。しっかり確認することが大切だ。

   これは、携帯電話やインターネット、ケーブルテレビなどのほかのサービスの契約をした際にもよくあることだから、併せてどこかの電力・ガス会社に切り替えていないか確認しよう。

(福田和郎)