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続落する日本株...エコノミストは「金融相場から業績相場への転換」に注目

   日本株の下落が続く――。米FRB(米連邦準備制度理事会)の金融引き締め政策表明に端を発した米国市場の下落に引きずられるかたちで、2022年1月28日、2万6700円台にまで下落した。

   昨年(2021年)1年間かけて引き上げた分が、全部吹き飛んだかたちだ。オミクロン株の急拡大に加え、中国経済の減速、ウクライナ危機、さらに足元に忍び寄るインフレ懸念......。

   いい材料はほとんどなさそうだが、大丈夫か。エコノミストたちの見立ては?

  • 株価はどう動く?
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大幅下落の中でも、値上がりした銘柄とは?

   2022年1月27日、米国と日本の株式市場は大きく下落した=図表参照。これは、日本のエコノミストたちにとっても大きな衝撃だったようだ。

   ニッセイ基礎研究所のチーフ株式ストラテジスト井出真吾氏も困惑を隠さなかった。井出氏のレポート「パウエル・ショックで株価急落 今後の展開は?」(1月28日付)のなかで、記者たちからの「どこまで下がるか?いつ落ち着くのか?」という電話が絶えず、明確に答えられなかったと明かしたうえで、こう説明した。

(図表)急落した日米の株価指数(ニッセイ基礎研究所作成)
(図表)急落した日米の株価指数(ニッセイ基礎研究所作成)
「世界中の投資家がFRB(米連邦準備制度理事会)に対して疑心暗鬼になっているとみられ、悲観的な投資家の売り注文が一巡するまで幅広い資産の下落基調が続く」「東京都などに緊急事態宣言が再び発動される可能性が指摘され始めたことも、投資家の不安心理を増幅させる」

   しかし、井出氏は1月27日、日経平均が841円(3.1%)の大幅下落となったなかでも、値上がりした銘柄もあったと、東証REIT指数が1.9%上昇したことに注目した。REIT指数とは、東京証券取引所に上場している不動産投資信託(REIT)の全銘柄を対象にした指数だ。井出真吾氏はこう続ける。

「通常、負債を抱えるREITにとって金利上昇は逆風だが、米国の金利が上がっても日本の金利上昇は限定的とみた投資家の買いが向かった」「REIT収益源であるオフィスなどの賃料は短期的に下落する可能性が低いことを考えれば、分配金利回りに魅力を感じるのも頷ける」

   そこで、井出氏は「金利上昇局面で『質への逃避』が始まった」として、こう結ぶのだった。

「1月27日はPER(株価収益率)が高いハイテク株が軒並み下落したことも含めて、共通するのは『利回りの質への逃避』だ」「米国金利の上昇が想定される中で、相対的かつ実質的に高い利回りを確保できそうなところに投資資金がシフトした」「相場全体の底入れがいつか、そしてイールド・ハンティング(利回り物色)でどの銘柄が選好されるか注目したい」

「株価反転に備え、冷静に下値を拾う局面に入った」

   ここまで下がれば、「日本株が反転する時に備えるべきだ」と強調するのは、野村アセットマネジメントのシニア・ストラテジスト石黒英之氏だ。石黒氏のレポート「日本株の自律反発に備える局面へ」(1月28日付)のなかで、「日本株の自律反発局面は近づいている」としてこう指摘した。

日本経済はどうなるのか(写真はイメージ)
日本経済はどうなるのか(写真はイメージ)
「中長期的な視点でみても、日本株は投資妙味が高まっている」「日本株の時価総額トップであるトヨタ自動車の2022年度の自動車生産計画が過去最高の約1100万台となる報道が伝わるなど、日本企業を取り巻く環境は決して悪くない」「長期的な視点に立てば、現在の日本株は業績面での割安感が強まっているといえ、株価反転に備えて、冷静に下値を拾う局面に入ってきた」

   一方、こういう時こそ、目先の利益にとらわれず、「SDGs」(持続可能な開発目標)や「ESG」(環境・社会・ガバナンス)の観点に立った企業への投資に注目しているのが、りそなアセットマネジメントのチーフ・ストラテジスト黒瀬浩一氏だ。

   黒瀬氏の「鳥瞰の目・虫瞰の目:新春レポート~2022年の市場見通しについて~」(1月27日付)によると、未曽有の政策転換の時期には、市場は不安定になりやすい。そのため、こういう時に大事なことは「『金融相場』から『業績相場』への転換だ」として、こう指摘するのだった。

「去年までのような株価の急上昇は見込みにくいものの、業績の拡大に応じた9%前後の安定的な上昇が見込まれる」「2022年は、この大きな変化に付いていけるかどうかで、景気拡大と株価が順調な国とそうでない国で明暗が分かれる」

   つづけて黒瀬氏は、こうした変革期、さらにはアフターコロナの時代とあいまって、地球環境保護の機運の高まりを取り上げ、「企業は単に利益ではなく、ESGの観点での存在意義が問われる時代になっている」と、変革のチャンスを生かす企業に目を向けるのだった。

(福田和郎)