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イオンモールが打ち出した「全電力再エネ化」計画 注目される「非化石証書」を使わない取り組み

   温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルを2050年までに目指すと国際的に表明した日本。実現するには、メーカーの生産工程や自動車などの輸送手段、家庭といったさまざまな分野における温室効果ガスの削減が必要になってくる。

   企業にとって、脱炭素はもはや避けられない課題となっており、大型商業施設を展開するイオンモールは国内の約160か所で使う電力のすべてを2040年度までに再生可能エネルギーに切り替えると表明した。どうやって実現するのか――。

  • 企業にとって、もはや「脱炭素」は避けられない(写真は、太陽光発電パネル)
    企業にとって、もはや「脱炭素」は避けられない(写真は、太陽光発電パネル)
  • 企業にとって、もはや「脱炭素」は避けられない(写真は、太陽光発電パネル)

イオンモール、「PPA」に活路

   イオンの上場子会社であるイオンモールは、「イオン」などの総合スーパーを中核店舗にして、服飾や家電、スポーツ用品などの専門店を配置した「イオンモール」などの大型商業施設を国内外に展開している。

   このうち国内では約160か所を手掛けており、そこで消費する電力量は年間約20億キロワット時。年間1兆キロワット時前後で推移している日本全体の0.2%程度を占めている。

   イオンモールは目標を達成するため、多様な手法を念頭に置いている。その一つが「PPA」(Power Purchase Agreement=電力販売契約)と呼ばれる手法だ。電力小売り事業者と長期で契約して、企業(イオンモール)は発電設備を保有せずに専用の発電所から電力供給を受ける。

   商業施設の屋上に加え、施設周辺の遊休地や農地などに設ける太陽光発電施設のほか、周辺地域の小型水力発電や風力発電、水素発電、バイオマス発電を想定している。

   国内の再生可能エネルギーは、家庭や発電事業者から大手電力会社が価格や期間を定めて電力を買い取る「固定価格買い取り制度(FIT)」によって普及が進んだ。最終的に電力消費者が料金として負担する仕組みであり、料金負担が過大になってきたため、当初は高めに設定されていた買い取り価格が抑えられるようになった。

   こうしたFITの買い取り価格抑制に加え、太陽光発電パネルの価格下落などによる発電コスト低下もあり、PPAがビジネスとして成立するようになった経緯がある。

カギは電気自動車?

   他にイオンモールの特徴的な手法として、家庭で発電した余剰電力の買い取りがある。FITによって屋根に太陽光発電パネルを設置した戸建て住宅が増えたが、FITの買い取り期間が過ぎれば、太陽が照っている日中に余剰となる電力の行方が課題となってくる。そこで導入しようとしているのは、住宅の余剰電力を家庭の電気自動車(EV)に充電して、そのままイオンモールまで運転していって、EVから施設の大型蓄電池に放電するという手法だ。協力した来店者は、放電した電力に応じてポイントなどを進呈される。

   企業が調達する脱炭素の電力を巡っては、大手電力会社などの小売電気事業者が化石燃料による電力ではないことを証明する「非化石証書」と合わせて販売するプランが、現状では主流となっている。

   この非化石証書は、小売電気事業者が非化石電源比率を算定するために作られたもので、電力を消費する側にとっては使いにくいとの指摘もある。

   イオンモールが打ち出した計画は、非化石証書を使わない点でも注目される。こうした大口の電力消費企業による取り組みは、カーボンニュートラルの目標達成に向けて動き出した日本企業にとって指針となりそうだ。(ジャーナリスト 白井俊郎)