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ローソンも参入、まだまだ増える「ゴーストレストラン」に見えてきた課題

   「ゴーストレストラン」と呼ばれる新しい調理事業が急増している。

   客席を持たず、デリバリー専門で食事や飲み物を提供する業態だ。新型コロナウイルス禍で外食離れが進んだことが背景にあるが、今や飲食店ばかりか、コンビニエンスストアなど異業種も参入、市場は急速に拡大している。

   そんなゴーストレストランに、コンビニエンスストア大手のローソンが参入。2022年1月末に発表した。

  • 急増するゴーストレストランを下支えするフードデリバリーサービスの存在(写真はイメージ)
    急増するゴーストレストランを下支えするフードデリバリーサービスの存在(写真はイメージ)
  • 急増するゴーストレストランを下支えするフードデリバリーサービスの存在(写真はイメージ)

参入続々... 街の飲食店から大手外食チェーンまで

   ローソンが手掛けるゴーストレストランは、お客から注文を受け、コンビニの店舗内に設置されている調理場で料理を作り、「ウーバーイーツ」などのフードデリバリーサービスを使ってお客の自宅や職場に届ける。

   すでにローソンは、店内に調理場を設けて、作りたての弁当などを提供する「まちかど厨房(ちゅうぼう)」を展開している。コロナ禍によって多くの人が家で食事をするようになったタイミングをとらえ、ゴーストレストランなら調理場を有効に活用できるうえ、他社との差別化も図れると判断したとされる。2023年2月末までに関東圏で100店舗、25年度には全国で1000店舗に導入する計画だ。

   コロナ禍が広がり始めた2020年春以降、感染予防のため飲食店のお客は激減し、各店の経営は悪化した。企業信用調査の帝国データバンクによれば、22年2月半ばの段階で、コロナ禍の影響で倒産した企業は累計2800件を超え、飲食店の倒産はその2割弱に当たる468件と最も多い。

   そういった苦境に立たされている飲食店が、打開策の一環として相次ぎ乗り出したのがゴーストレストランだ。客席を設けず、宅配だけに絞れば、店の維持費を削減できるうえ、感染リスクも抑えられる。こうして、中小の飲食店をはじめ、大手チェーンでも参入の動きが加速。カジュアルイタリアンレストランの「カプリチョーザ」がデリバリーに特化した事業を始めたほか、ファミリーレストランの「デニーズ」も宅配専門の調理場を作ったり、宅配と持ち帰り専用の小型店を都心にオープンしたりするなどしている。

最大のカギはデリバリーコスト

   こうしたゴーストレストラン事業が可能なのは、コロナ禍を機にウーバーイーツや「出前館」などフードデリバリーサービスの利用が急速に普及し、それと同時に宅配事業に従事する人が増え、宅配網が強化されたことが大きい。

   宅配のために人を雇えばコストはかかるし、そもそも人材を確保するのが難しいが、宅配を外注できれば、調理場さえ持っていれば事業展開はかなり容易になる。

   このためローソンのように、すでに調理場を確保している企業なら、飲食店でなくても参入は可能だ。「今後はコンビニをはじめ、他の小売業者の間にもゴーストレストラン事業の動きが広がるのではないか」と見る流通業界の関係者は少なくない。

   一方、飲食店などが宅配業者に支払う手数料の負担は軽くないともいわれており、

「フードデリバリーサービスの利用料がゴーストレストランの今後を占う最大のカギになる」

と、ある業界関係者は指摘する。(ジャーナリスト 済田経夫)