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過去最高益ではあるが...週刊ダイヤモンド「絶頂トヨタ」 週刊エコノミスト「利上げ」、週刊東洋経済「デジタル仕事術」を特集

   「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパースンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする。

  • 「デジタル仕事術」のヒントがここに(「週刊東洋経済」の特集から)
    「デジタル仕事術」のヒントがここに(「週刊東洋経済」の特集から)
  • 「デジタル仕事術」のヒントがここに(「週刊東洋経済」の特集から)

トヨタで今、何が起きている?

「週刊ダイヤモンド」(2022年3月5日号)
「週刊ダイヤモンド」(2022年3月5日号)

   2月28日発売の「週刊ダイヤモンド」(2022年3月5日号)は、「絶頂トヨタの真実」と題し、巨大組織が抱える問題を特集している。過去最高益レベルの決算の背景で何が起きているのか?

   トヨタ自動車は2020年以降に最高幹部10人体制となり、経営幹部の若返りを図った。ところが、最高幹部で豊田章男社長に意見を言える人間はほぼいないという。

   毎週火曜日、主要プロジェクトの進捗を社内で共有する「大規模ミーティング」には200人以上が参加するが、重要な決定がされることはない。意思決定機関としての会議体は形骸化している、と同誌は指摘する。

   豊田章男社長のトヨタの持ち株比率は0.17%と低く、豊田家全体でも2%程度と見られる。それなのに、オーナーのような立ち振る舞いをしていることに対する批判的な声もあるようで、豊田本家による支配力強化がガバナンス不全を招きつつあるというのだ。

   昨年(2021年)末、トヨタ自動車は2030年に電気自動車(EV)350万台の大方針を掲げた。エンジン搭載車からEVへのソフトランディングがうまくいくのか、編集部が8年後の業績を試算した。

   その時点でも利益の多くはハイブリッド車に依存していると予測され、EVシフトが急激に進むと、トヨタの収益性が悪化しかねない。EVシフトは「進むも地獄、退くも地獄」と書いている。

   パート3では、トヨタとサプライヤーの間の不協和音に触れている。昨年(2021年)10月、日本製鉄がトヨタなどを特許侵害で訴えた後、どうなったか。トヨタが韓国鉄鋼大手のポスコに約10万トン分を乗り換えしようとしたが、断られたという。需給がタイトになっており、トヨタ以上に高く鋼材を買ってくれる顧客はいくらでもいるからだ。

   日本製鉄が強気なのは脱炭素製品で勝ち、トヨタなど旧来の顧客に依存せず新規顧客を開拓する心積りがある、と見られている。

   帝国データバンクが昨年実施した「トヨタ自動車グループ」下請け企業数で、東京都が7800社(全国シェア18.8%)、愛知県が7586社(同18.3)%となり、愛知が初めて他の都道府県に追い抜かれた。おひざ元が敗れた背景にはソフトウェア関連企業の集積度があったという。

   トヨタの下請け企業の業種分類で、昨年、「ソフト受託開発」がトップに躍り出た。東京に比べて、愛知はソフト人材の「受け皿企業」に乏しいことを露呈してしまった、と指摘している。EVシフトが進む中で、「ケイレツ」再編が進むものと見られる。

   一方で、創業家の「世襲ありき」の人事施策が人材流出に拍車をかけているという。章男氏の長男である豊田大輔氏が経営の表舞台に立つ機会が増え、「改革は豊田家の世襲のため」とシラけている向きが多いらしい。東大卒、エース人材の流出が相次いでいるほか、東大大学院修了者の採用数も減少している。記事はこう結んでいる。

「章男氏の独裁体制が長期化すればするほど、有能な若手人材はトヨタから、ベンチャーなどアクレッシブに働ける環境がある企業へと流れてしまうだろう」

   この原稿を書いている3月1日(2022年)、トヨタ自動車の国内14工場すべてが停止する異常事態が発生した。愛知県豊田市にある取引先の部品メーカーがサイバー攻撃を受けたためだ。1つのサプライヤーへの攻撃が、全トヨタの生産をストップさせる――。巨大企業グループの弱点はその足元にも潜んでいた。

ウクライナ侵攻で利上げがくる?!

「週刊エコノミスト」(2022年3月8日号)
「週刊エコノミスト」(2022年3月8日号)

   「週刊エコノミスト」(2022年3月8日号)の特集は、「利上げが来る!」。コロナ禍を契機とした空前の金融緩和が終わり、先進国を中心に世界は利上げへと舵を切りそうだ。世界経済や金融市場への影響を予測している。

   米連邦準備制度理事会(FRB)は2022年3月にも利上げをすると見られており、金融市場の動揺が収まらない。3月15、16日開催の米連邦公開市場委員会での利上げが確実な情勢だという。

   金融市場ではFRBの利上げペースに関心が移っている。編集部が国内の主要エコノミスト6人にアンケートしたところ、FRBによる利上げ回数の予想は年内4~6回、1回当たりの利上げ幅は0.25ポイント。年末の政策金利の誘導目標は1.25~1.75%だった。

   みずほリサーチ&テクノロジーズ首席エコノミストの安井明彦氏は「今秋の中間選挙を前に、インフレがバイデン政権のアキレス腱になっている」と指摘している。

   日本の長期金利(10年物国債利回り)上昇は、米長期金利上昇に連動したもので、「FRBの利上げの見通しが前倒しされると、場合によっては0.25%を突破することも十分ありうる」と第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏は見ている。

   日銀には、2%の物価目標以外にも、1000兆円に達しようとする政府の国債残高の利払い負担が、金利上昇によって増えることへの抵抗感があるという。したがって、政府の税収が十分に増えて、利払い費の増加を賄えることを確認しないと長期金利の目標を0%から引き上げることができない、と解説する。そこまではまだ相当の距離がある、と見ている。

   米国株はどうなるのか? 三菱UFJ国際投信チーフエコノミストの荒武秀至氏は、22年初からの米国株相場の急落の理由に、FRBの利上げの可能性などを挙げている。米国を代表するS&P500株価指数は9.2%下落した。ロシア軍によるウクライナ侵攻の予想も織り込み済みだ。

   同氏は本格的な金融引き締めは23年以降だとして、22年末のS&P500は4850ポイント程度まで上昇すると予想している。しかし、ウクライナ侵攻が現実のものとなった今、エネルギー価格は早くも上昇し、インフレは加速する勢いだ。ウクライナがどうなるのか? 世界中の投資家がかたずを飲んで見つめている。

仕事をデジタル化すると、こんなに便利!

「週刊東洋経済」(2022年3月5日号)
「週刊東洋経済」(2022年3月5日号)

   「週刊東洋経済」(2022年3月5日号)の特集は、「スケジュール管理からメタバース活用まで デジタル仕事術」。デジタルが苦手な人も得意な人も、「デジタル仕事術」のための簡単な練習や工夫をまとめている。

   冒頭、シーン別の「やりたいことインデックス」を掲載し、該当ページに進むという構成だ。「予定をデジタルで管理したい」「どこでもファイルを編集したい」「オンライン会議で成果を出したい」「電子契約書を作成したい」など20項目が並んでいる。

   クラウドを活用した仕事術について、作家・ジャーナリストの佐々木俊尚氏は、「あらゆるものをデジタル(データ)化したうえで、クラウドサービスを駆使するのがポイント」と話している。

   佐々木氏の場合、紙で持っている必要がなく、中身さえ確認できればいいものは、すべてドキュメントスキャナーでPDF化してメモアプリに転送しているという。雑務や細かい仕事はスマホで移動中に済ませ、キーボードが必要な仕事だけをPCで行うのが基本。雑務を徹底的にデジタル化したことで、頭の中がクリアになり生産性が上がったそうだ。

   デジタルツールを使いこなすための10の鉄則について、チェックフィールド代表取締役の目代純平氏は、以下のように説明している。

1 食わず嫌いをやめよう
2 スマホ、PC、タブレットはそれぞれできることが違うと知る
3 理屈はすっ飛ばして、まず自分の好きなことから始めてみよう
4 自分が使う(使える)部分だけかじればいい
5 それでも最低限のリテラシーは身につけよう
6 できるだけ自分で調べる
7 データの扱いは慎重に
8 パスワードの管理をきちんとする
9 インターネットの利便性と危険性を理解する
10 ネット上の情報を鵜呑みにしない

   特集では、打ち合わせをチャットでやりながら同時に文書を作成する方法や、紙の文書や表をデータ化する方法なども取り上げている。iPhoneの標準アプリメモでも書類を簡単にスキャンしてデータ化できる。また、手持ちのマイクロソフトOfficeやグーグルのアプリでも、かなりのことができることが分かる。

   ウインドウズ11では音声入力機能が向上した。アイデアをすぐ記録する人は重宝するだろう。たまにはこうした特集に触れて、デジタルのスキルアップすることも大切だ、と思った。

(渡辺淳悦)