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建設業のコロナ破たんジワリ増加...スーパ-ゼネコンも業績悪化の兆し

   新型コロナウイルスに関連する資金繰り不安や、工期のズレ込みや長期化などによる建設業の経営破たんが増加の兆しがある。東京商工リサーチが2022年3月6日、レポートを発表した。

   2021年の建設業の倒産は1065件で、前年比14.5%減と過去30年で最も少なかった。しかし、法的手続きの準備中などを含む、新型コロナウイルス関連の経営破たんはジワリと増加している。工期の長期化などに加え、資材高騰や人手不足などの要因が複層的に絡み合い、小康状態にある倒産件数が反転する兆しも見えはじめた。

  • 建設業のコロナ破たんがジワリ増加している(写真はイメージ)
    建設業のコロナ破たんがジワリ増加している(写真はイメージ)
  • 建設業のコロナ破たんがジワリ増加している(写真はイメージ)

2月の倒産、23件で過去最多 リフォーム工事の破たん顕著

   建設業のコロナ破たんは2020年4月に初めて発生。それ以降も月間10件前後の低水準にとどまっていた。ところが、日本より先に新型コロナウイルスの感染拡大が発生した中国やアジアなどの海外工場の操業が停止したり、港湾荷役がストップしたりすると、たちまち建材や部材などのサプライチェーン寸断の影響が日本に押し寄せた。

   納期のズレは工期に影響して、体力のない事業者のコロナ破たんが発生。2020年12月は月間20件に達し、21年初めには日本でも感染拡大が本格化。「三密」の回避で工期が長期化していった。また、コロナ禍で予定していた工事の中止も増え、21年6月と11月は月間最多の22件のコロナ破たんが判明した。追い討ちをかけるように、鋼材など建設資材や燃料の高騰。人手不足も重なり、22年2月の倒産件数は23件と最多を更新した。

   ちなみに、全業種の新型コロナ関連破たんが3000件に達した3月2日。業種別の最多は、飲食業の517件。次いで、建設業が318件と全体の1割を占めていた。昨年2月のコロナ破たん(1000件)で、建設業は83件(構成比8.3%)だったことから、コロナ破たんの広がりがわかる。

   建設業のコロナ破たん(318件)を業種別に細分化すると、最多は建築工事の66件だった。コロナ禍で分譲マンション開発が鈍ったほか、資材高騰などの影響も響いた。次いで、建築リフォーム工事の35件、内装工事の32件と続いた。建築工事の落ち込みに連動して付帯工事の破たんも目立った=上の図表参照

   一般個人を対象とした小規模の工事業者は、もともと経営体力が乏しかった。そこに新型コロナウイルスの感染拡大で、工事の中止や減少で資金繰りを維持できないケースが増えてきたという。

   資本金別でみると、1000万円未満(個人企業含む)が191社と全体の6割を占め、小規模な工事業者が多いことがわかった。しかし、負債額別(判明分)でみると負債1億円未満の小規模倒産は165件、1億円以上は150件とほぼ拮抗。なかでも、1億円以上5億円未満は125件と約4割を占めた。

   コロナ関連支援の「副作用」で金融債務が膨らみ、過剰債務に陥った企業が増えたほか、「ゼロゼロ融資」(コロナ禍による売上減の企業に実質無利子・無担保で融資する仕組み。21年3月末に受付終了)などの資金繰り支援効果も薄れたためとみられる。

上場スーパーゼネコンも減益に

   業績の悪化は、鹿島建設や大林組、大成建設、清水建設のスーパーゼネコンも例外でない。これら4社の2022年3月期連結の連結業績予想は、売上高は4社とも増収見通しだが、利益は資材価格の高騰や受注環境の悪化などで、4社合計は前年から約3割減と大幅な減益を見込んでいる。

   東日本大震災から11年を迎え、潤った復興工事が一巡。コロナ禍の影響で、景気回復の遅れが建設業にも及んでいることもある。

   東京商工リサーチは、法的倒産などの準備中を含む「破たん」をみると、経済産業省が推進する価格の転嫁はできても、上昇する人件費などの自己負担分は重く圧しかかり、ジワジワと「破たん」を押し上げている。事業規模が小規模の事業者ほど、息切れが鮮明になってきた、とみている。

   資材仕入や労務管理などを徹底しているスーパーゼネコンですら減益に追い込まれたところに深刻さが隠れている。中小建設業者の利益環境は、さらに厳しそうだ。