J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

努力しているのに成果が出ない! 営業は「準備が8割」の理由

   自分では努力しているつもりなのに、実績が上がらないと悩んでいる営業マンに勧めたいのが、本書「即決営業の超準備」(秀和システム)である。営業についての考え方が変わるくらいインパクトのある本だ。

「即決営業の超準備」(堀口龍介著)秀和システム

   著者の堀口龍介さんは、株式会社即決営業代表取締役。1976年、大阪生まれ。訪問販売の最大手に入社し、翌年セールスマン1000人以上の中で、年間個人売上1位の成績を収める。その後、訪問販売会社を渡り歩き、29歳で起業。現在、オリジナルな営業手法を教える、一般に向けた講演会やセミナーを開催している。

   NGな営業技法とOKな営業技法を対比しながら、効果的な50の営業技法を説明するスタイルで書かれているのがユニークだ。冒頭は次のように始まる。

NG なんとなくの感覚で営業をおこなう
OK 理論にもとづいて営業をおこなう

   営業がイヤになって辞めていく人の多くは、売上が安定せず、心が安定しないという。どんなに不調なときでも最低限の売上をキープする営業マンは、感覚に頼らず、理論にもとづく営業をおこなっているのが共通している。

   感覚で営業をおこなうNG営業マンの特徴は「なんとなく」が好きなことだ、と指摘する。「営業の本質は、買ってもらうことでも売ることでもなく、お客様の問題解決です」と堀口さん。商品やサービスを使ったお客様から、結果的に「よかった」「助かった」「ありがとう」と言われるためのゴールから逆算思考する習慣をつければ、理論にもとづく営業ができる、と説明する。

  • 効果的な50の営業技法とは
    効果的な50の営業技法とは
  • 効果的な50の営業技法とは

相手をリサーチして、好きになろう!

   そこで大事なのが準備だ。堀口さんは、営業は準備が8割、と説く。しかし、それはミスを防ぐための準備ではなく、ラポール(信頼関係)を築くための準備だ。事前に相手をリサーチして、その人を好きになるようにする。親近感がわけば、無意識にお客様の役に立ちたい気持ちが芽生え、信頼関係の基盤になる。

   第2段階では、お客様の役に立つために想像力を働かせて仮説を立てることだ。どんな悩みがあるかをイメージする。「そもそも営業マンは、悩みや目標のないお客様の役には立てません。商品とお客様の唯一の接点が、ニーズだからです」という指摘は、新鮮だ。

   第3段階では、いよいよ商談の場で、相手に仮説をぶつけてニーズを検証していく。気を付けなければならないのは、仮説はあくまで「フック」ということ。会話の中で本当のニーズを探らなくてはならない。売りたい一心ではなく、親身になっているかどうかは伝わっているものだ。

   第4段階では、営業マンの誠実さに対して、お客様の「好意の返報性」が働く。お客様もしっかり話を聞こうとする。こうした流れでラポールが形成される、と説明する。

商品を売る後ろめたさを解消する「未来思考」

   多くの営業マンは、商品を売ることに後ろめたさを感じている。それは自分が扱っている商品の価値を、本気で理解しようとしていないからだ。ようは、ただの勉強不足だ、と堀口さんは断言している。商品の価値を正しく知っていれば、迷っている相手の背中を押すこともできる。

   一方、自分がいいと思っていない商品を強引に売ろうとすると、押し売りになる。「背中を押す」と「押し売り」の違いは、商品の力を信じているかどうかだ。後ろめたさを感じながらのセールスは絶対にNGだ。まずは自分の商品に惚れ直し、そのうえで、お客様の背中を堂々と押すように、と勧めている。

   売上をつくる数字を把握しておくことも大切だ。基本の3数字を挙げている。

アポ設定率=アポ数÷コール数
契約率=成約数÷商談数
平均単価=売上÷成約数

   これらの数字を自己管理する。たとえば、アポ数は平均的なのに、売上が低いとしたら、原因は契約率が低いか、単価が低いかだ。数字を分析すれば、やるべきことがあぶり出される。

   トップセールスと詐欺師には共通点がある、という項目には驚いた。説得力を増すのは、熱意ではなく技術だというのだ。3つのポイントとは、1権威、2同意、3ストーリーだという。

   営業マンが権威を見せるには、まず外見を整えることだ。もう1つが「実績」だ。有名会社と取引がある、受賞歴など、探せば必ず出てくるので、いくつか準備する。2つ目の同意とは、商談の序盤では、相手の話にすべて同意すること。人は好きな人の意見は受け入れやすいので、同意を徹底すれば説得力が上がる。3つ目のストーリーとは、お客様に響く自身の体験談だ。

   お客様の断り文句を切り返すための「クッション話法」も参考になる。「YES BUT」が基本だが、その応用編を披露している。言葉を復唱、承認したうえで、否定するのではなく、会話の中に「そのうえで」とか「もし」、「どのような点で」などの言葉を盛り込み、切り返すのだ。

   コロナ禍でオンライン営業も広がっている。堀口さんは、慣れればオンライン営業は、いいことずくめだ、と書いている。なぜなら、移動時間ゼロ、交通費ゼロ、荷物ゼロ、天候の影響ゼロ、遠距離の影響ゼロだからだ。じつはオンライン商談は画面の中に、お客様のプライベートのヒントが詰まっているため、ラポールをつくりやすいそうだ。

   商品を売ることからスタートし、今は「売る技法」を売っている堀口さん。自身の体験談もところどころで披露している。営業は「お客様の問題解決のためである」という前向きな哲学が、さまざまな手法の原点にあることがわかった。営業以外の仕事にも共通するものだろう。

(渡辺淳悦)

「即決営業の超準備」
堀口龍介著
秀和システム
1650円(税込)