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なぜ「社員満足度」重視の経営を貫くのか? 時短&在宅で女性も活躍 オデッセイ、ライフ&ワークス秋葉尊社長の思い

   来る2022年4月、「育児・介護休業法」の改正がスタート。男女ともに仕事と育児や介護を含むワークライフバランス重視のスタイルは加速していきそうだ。

   そんな中、いち早く「働き方改革」を取り入れ、社員の働きやすさを大切に、「社員満足度」重視の経営方針を掲げる企業がある――。

   人事領域に特化したITコンサルティングを手掛ける、オデッセイ(東京都千代田区)だ。オデッセイは2017年、出産・育児などを機に退職した元コンサルタントを中心に雇用するグループ会社、ライフ&ワークス(東京都千代田区)を立ち上げ、「女性活躍」推進の面でもリードしてきた。

   なぜ「社員満足度」重視の経営を貫くのか? 両社の代表取締役社長をつとめる秋葉尊(あきば・たける)さんに聞いた。

  • オデッセイ、ライフ&ワークス社長の秋葉尊さん
    オデッセイ、ライフ&ワークス社長の秋葉尊さん
  • オデッセイ、ライフ&ワークス社長の秋葉尊さん

仕事が有意義になれば、充実した人生につながる

   企業のヒト・モノ・金・情報の「経営資産」を管理して、業務の効率化を図る統合基幹業務システムを、「ERP(Enterprise Resource Planning)パッケージ」と呼ぶ。そして、EPRの中でも世界トップクラスのシェアを誇るのがドイツに本社を構えるSAPのシステムだ。

   オデッセイとライフ&ワークスでは、SAPに特化して、各システム導入のコンサルティングを手掛けている。オデッセイは、SAPの中でも人事が専門。ライフ&ワークスは、SAPの人事以外でも、会計や販売などの領域も請け負う。

――オデッセイとライフ&ワークス共通の社是として掲げるのが「仕事にやり甲斐を、人生に豊かさを」です。ここには、どのような「思い」が込められているのでしょうか。

秋葉尊さん「人生において仕事に費やす時間は、睡眠時間と並んで多いのではないでしょうか。それだけに、仕事が有意義になれば、充実した人生につながるはずです。逆に言うと、嫌々仕事に取り組む毎日を送れば、つまらない人生になってしまうでしょう。
   そこで、会社として、社員が充実した人生を送れるよう、仕事にやりがいを常に感じながら取り組める環境を整えることが重要だと考えています。くわえて、経済的にも豊かな生活を送ることができたら、人生の充実度はさらに高まると思います。そのため弊社では、一般的な企業よりも高めの給与水準の設定、昇進/昇給のはやい評価制度を導入しています。
   なお、『仕事にやり甲斐を、人生に豊かさを』という社是は、創業者で、現在は会長の秋葉忠夫が唱え、私たちが大事にする『社員環境満足度重視の経営』の基本になっています」

――「社員環境満足度」重視の経営方針を掲げていますが、具体的にはどのような取り組みを推進していますか。

秋葉さん「3つポイントがあります。(1)報酬の高さ(2)昇進/昇給の早さ(3)公平な評価です。

   報酬については、たとえばオデッセイの新卒の初任給は、大学卒が月40万800円、大学院卒が月41万200円と、日本企業の中では高いほうではないかと自負しています。就活生へのアンケートでは、これだけの給与がもらえたら『やる気』が出る? と聞くと、ほぼ全員が『やる気が出る』との回答。報酬の高さはモチベーションにつながると考えています。

   昇進、昇給の早さについては、年功序列の概念を排除した実力、成果主義の『JOB型人事制度』と、『目標管理制度』の活用を通じて年2回の昇進、昇給する仕組みを取り入れています。
   『JOB型人事制度』では、勤務年数や年齢に関係なく、職務や生産性を成果として出せたか否かで評価しています。一方、『目標管理制度』を活用した人事評価を年2回おこない、その都度、昇進や昇給を決めています。つまり昇進、昇給のチャンスが年2回ある、ということです。こうした制度により、新卒入社3年後の春には、一人前のコンサルタント(年収では650万円~700万円程度)にまで成長して、昇給する社員が何人も出ています。

   公平な評価では、コンサルタント業務の生産性を数値によって把握した定量的な評価を導入しています。定量評価にあたっては、コンサルタントのランク、等級別に、会社が求める生産性を明確に決めています。また、評価に必要なデータの把握および分析には、独自開発の仕組み(PIMS=Project Information Management System)を活用しています。
   仕事の生産性を数字でとらえて評価することには、あいまいさがなく、誰が評価しても同じ結果になることを意味します。また、社員にとっても、自分の実力が定量的に把握できるということは、会社の評価に対して納得感も生まれやすく、不平、不満などにつながりにくいのかと思います。
   一生懸命に取り組んだ仕事の成果が適切に評価されれば、社員もやりがいを感じ、『また次も頑張ろう』という気持ちになるもの。こうした仕組みを通じて、社員環境満足度を高めているのです」

仕事と家庭の両立が労働力確保、世帯収入増加につながる

――多様な「働き方」の面では、2017年にグループ会社のライフ&ワークスを立ち上げるなど、ユニークな取り組みをされています。同社では、出産や子育てで一時退職した女性コンサルタントが、時短勤務や在宅勤務で活躍。また、シニア世代のコンサルタントも所属し、一人ひとりのライフステージに合わせた職場環境があるそうですね。設立には、どのような経緯があったのでしょうか。

秋葉さん「ライフ&ワークスの設立のころは、政府が『働き方改革』に本腰を入れ始めた時期でした。背景には、やはり労働人口の急速な減少があり、日本経済への影響を考えると、企業における業務の生産性向上などが急務だと、私はとらえていました。
   そして、オデッセイでは創業以来、人事ソリューションの提供を通じて、クライアント企業の業務の効率化、従業員の生産性向上による『働き方改革』の推進、企業力の維持や向上を支援してきました。
   その一方で、もっと直接的に、『働き方改革』を支援できないか、という思いがありました。そこで設立したのがライフ&ワークスです。具体的には、コンサルティング市場の潜在的な労働力を活かすことはできないか、と考えていました」

――詳しく教えてください。

秋葉さん「当時、コンサルティング業務は、比較的ハードワークで勤務時間も長く、時短勤務やテレワークなどの在宅勤務は現実的ではない、と考える人が多かったように思います。それと、出産を機に退職して、いまは育児中心の生活だけれども、もう一度やりがいを感じたコンサルタントとして活躍したい女性は一定数いる、と想定されました。しかし、育児をしながらでは、以前のようにフルタイムで働けず、復帰を断念しているケースは想像に難くありません。そこでぜひ、元コンサルタントのみなさんに、時短勤務やテレワーク勤務による『働き方』で再び輝いてもらいたい、と。そしてそのような場が必要だと、オデッセイとは別法人で立ち上げたのです。人手不足が常態化していたコンサルティング業界のためにもなると考えました」

――こうした取り組みによって、GTPW2022年度「働きがいのある会社」(※)認定、東京都認定「TOKYOテレワークアワード」受賞など、公的な機関でも評価されました。

秋葉さん「GTPWの『働きがいのある会社』認定は、日頃、社員環境満足度に注力する企業として、従業員の声をもとに第三者がどのように評価するのか興味がありました。それだけに、認定を受けて安堵するとともに、今後はGPTWからさらに高く評価していただけるように努力していきたいと思っています。
   また、『TOKYOテレワークアワード』では、テレワークを先駆けて導入しただけでなく、前述した定量的な評価や人材育成を行うことで、テレワーク環境下でも従来と変わらない評価を実現し、生産性も向上させた点を評価していただきました。不慣れなテレワークが始まり、多くの企業には『仕事ぶりが見えないので評価が難しい』『テレワークは仕事の生産性が落ちる』などの課題感もあったかと思います。その中で、弊社の取り組みが第三者に認められたことには喜びを感じました」

※GTPW(=Great Place to Work)は、「働きがいのある会社」の調査や評価、支援などを行う専門機関。世界約60か国に展開。

――どうして、オデッセイおよびライフ&ワークスでは、社員環境満足度にこだわるのでしょうか。

秋葉さん「お客様に満足いただけるサービスを提供したいからです。そもそも社員環境満足度の向上を取り入れたのは、経営理念の『信頼できるサービスをより安く、より早くお客様に提供する』を実現する目的でした。そのためには、社員のコンピテンシー(能力や力量、適性)を高める必要があります。その成長をサポートするのが、働く環境への満足度の向上です。社員環境満足度を高めるには、『仕事と家庭の両立』させていくこともポイントだと考えています」

――近く、「育児・介護休業法」の改正もスタートしますから、仕事と家庭の両立は、多くの企業や職場にも広まってほしいですね。

秋葉さん「おっしゃるとおりですね。繰り返しになりますが、今後、日本における労働人口は急減します。その労働力を確保する対策を講じない限り、日本の経済力も衰退するでしょう。そんな日本の未来を迎えないためにも、多くの職場で『仕事と家庭の両立』が実現できれば、企業側にとっては労働力確保になります。また、働き手にとっては世帯所得の増加につながり、日本経済にプラスに働くと考えています。
   最近、『ウェルビーイング』という言葉が、人事関係者の間ではトレンドです。これは肉体的、精神的、社会的すべてが満たされた幸福な状態を意味します。そのウェルビーイングな企業を実現するうえでも、時間や場所にとらわれない働き方は今後ますます重要になると考えています」

――ありがとございました。