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話題のNFTはどこで買える? 豊富なイラストで解説!NFTビジネス全体像

   デジタルデータを資産に変えるものとして、2021年ごろから、にわかに注目されるようになったNFT。「Non-Fungible Token」の略で、非代替性トークンを意味する。多くの入門書が出ているが、本書「NFTビジネス見るだけノート」(宝島社)は、豊富なイラストでNFTビジネスの全体像をわかりやすく解説している。

「NFTビジネス見るだけノート」(増田雅史監修)宝島社

   監修者の増田雅史さんは、弁護士・ニューヨーク州弁護士。経済産業省メディア・コンテンツ課での勤務経験や金融庁におけるブロックチェーン関連法制での立案経験を持つ。日本暗号資産ビジネス協会NFT部会法律顧問を務めるなど、日本におけるNFT関連の法務をリードする存在だ。

  • NFTビジネスの全体像とは
    NFTビジネスの全体像とは
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NFT取引に必要な暗号資産を買う手順とは?

   ビットコインなどの暗号資産が代替可能なのに対し、NFTはそれぞれが世界に1つだけの固有価値を持つため、入れ替えは不可能だ。「1点もの」としての性質をいかし、ゲーム内アイテム、オンラインチケット、デジタルアートなど幅広い分野で活用が期待されている。

   本書では、NFTビジネスの大前提となるブロックチェーンの基礎知識を説明したあと、いよいよ「NFTで利益を生み出す最短ステップ」の章に入る。まず、NFTはどこで買えるのか? 主要マーケットプレイスは9つほどあり、その中から先頭を走る2つを詳しく紹介している。

   1つは、ニューヨークを拠点にする世界最大手、OpenSea(オープンシー)だ。2017年創業で、取り扱うNFTは、アート、音楽、ゲームアイテム、仮想空間の土地、ドメイン、トレーディングカード、イベントチケットなど多種多様。出品者は最初に登録料を支払えば、それ以降は何点出品しても手数料は不要だ。ここから始める人が多く、出品点数、取引高もナンバー1だという。

   もう1つのRarible(ラリブル)は2019年創業で、OpenSeaに次ぐ取引高を持つ。売買によって独自の暗号資産「RARI」を手に入れることができ、「RARI」を所有することでユーザーは運営上の投票に参加できるため、組織運営の透明性が高いのが特徴だ。

   NFTを取引する全体像はというと、OpenSeaの場合、まず取引に使う暗号資産イーサリアムを、暗号資産取引所や暗号資産販売所で購入する。購入の際、国内の取引所の口座開設に必要なのは、メールアドレスと電話番号、運転免許証などの本人確認書類だ。1~2週間で口座を開設できる。

   実際にイーサリアムを購入するには、株などと同様に「板」というものを使って取引する。指値注文と成行注文がある。

   さらに、イーサリアムの「ウォレット」とも言うべきMetaMaskを導入する必要がある。MetaMaskは暗号資産の管理、送金、受け取りを行う財布のようなものだ。これをパソコンにインストールし、サインインしたら準備完了だ。

   そうしたら次に、オンライン上で購入したいNFTを検索する。決まったら「今すぐ購入」「チェックアウト」を選択する。その際、「ガス代」と呼ばれる手数料が必要になる。あとは自分のウォレットに購入したNFTが入っていることを確認すれば終了だ。

紛らわしい「アートNFT」と「NFTアート」の違いとは?

   本書では、弁護士の増田さんらしく、トラブル回避のための法律と会計の知識にも多くのページを割いている。

   NFT化されたことで固有性が認められ、希少性に付加価値を見出されたデジタルアート作品だが、その概念の法律的解釈が問題となるらしい。「アートNFT」と「NFTアート」という紛らわしいものについて、こう説明している。

「アーティストとしては、アート作品それ自体の独占権を譲るつもりまではなく、実際に取引されているものも、アート作品それ自体というよりは、それと紐付けされたトークン、すなわちNFT(アートNFT)です。しかし購入者の中には、NFT化されたアート作品それ自体(NFTアート)を購入したのだから独占権を得たのだ、と誤解する人もいるでしょう。取引されているものはトークン(アートNFT)、アーティストが引き続き独占権を有しているのがアート作品(NFTアート)、と区別して考える必要があります」

   さらに、デジタルアートを含むデータは「有体物」ではなく「無体物」なので、民法上は所有権の対象にはならないことにも注意が必要だ。もっとも、NFTについての法整備や見解の統一はいまだにできておらず、トークンで著作権委譲は可能か、という問題も論じている。

   著作権に基づいてNFT保有者に一定の利用許諾を与えるという方法であれば実務的には可能であり、実際にそのようなやり方は多く見られるという。

   増田さんはアートNFTを保有することの本質は、アーティストの芸術活動を支援する「パトロン」のようなものかもしれない、と説明している。

   所有権がないという点では絵画などのパトロンとは違うが、NFTアートは、ブロックチェーン上に保有者を記録していくので、保有者が替わっても名前が消えることはない。「そこに名前を連ねたすべての人を著作者のパトロンと認識することもできます」と書いている。一時保有しただけでも、永遠に名前は残るということだ。

   ほかにも、NFTとメタバースを組み合わせたビジネスの活用など、さまざまな利用法も紹介している。面白いと思ったのはファッション業界との組み合わせだ。ファッション産業が排出するCO2は全産業の10%を占める。仮想空間でのファッションに関心をシフトさせることで、現実世界のファッションの経済活動を緩やかにし、CO2の排出量を減らすこともできなくはない。また、新しいデザインにNFTを付与することで、希少性も高めることもできそうだ。

   10年後にはブロックチェーン上で動く分散型金融「DeFi」が可能になれば、銀行の形が変わるかもしれない、と予測している。ゲームやアートなどに有用と思っていたNFTだが、将来は生活の一部になる可能性がある。使うには暗号資産が必要だから、まずは暗号資産について勉強しようと思った。

(渡辺淳悦)

「NFTビジネス見るだけノート」
増田雅史監修
宝島社
2180円(税込)