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キユーピー社員の平均給与、コロナ禍で減収続きも前期から25万円増のなぜ?

   上場企業の財務諸表から社員の給与情報などをさぐる「のぞき見! となりの会社」。今回取り上げるのは、調味料を主力とする食品会社のキユーピー(東証一部)です。

   キユーピーは1925年に日本初のマヨネーズを発売。戦後もドレッシングや、ミートソースやホワイトソースの缶詰、家庭用介護食など、日本初の商品を開発提供してきました。現在は国内需要の縮小を見越して、海外市場での成長を目指しています。

  • キューピーは日本で初めてマヨネーズを発売した(写真はイメージ)
    キューピーは日本で初めてマヨネーズを発売した(写真はイメージ)
  • キューピーは日本で初めてマヨネーズを発売した(写真はイメージ)

コロナ禍で減収続きだが直近の利益率は改善

   それではまず、キユーピーの近年の業績の推移を見てみましょう=下表参照。

   キユーピーの売上高は、ここ数期減少を続けています。2019年11月期は、前期に行った事業譲渡の影響に加え、コロナ禍で外食関連の業務用食品の出荷物量が減少しました。

   2021年11月期には一気に4000億円台まで減っていますが、これは21年1月に連結子会社のキユーソー流通システムと同社の子会社14社を持分法適用関連会社に移行した影響です。

   一方、2021年11月期の営業利益率は前期比1.54ポイント増と大幅改善。物流を除いた遡及後の業績は、売上高・営業利益・最終利益ともに増収増益を果たしています。

   2022年11月期の業績予想は、売上高が前期比2.0%増の4150億円、営業利益が同7.0%減の2600億円と見込んでいます。決算短信は、コロナ禍に加えて「国際的な穀物相場高騰の影響を受け、厳しい経営環境が続くものと予想」と記しています。

   ちなみに、キユーピーの連結から外れたキユーソー流通システムの2021年11月期決算は、売上高が前期比2.8%増の1759億67百万円、営業利益が同39.9%増の36億38百万円と、増収増益になっています。

利益率が高い「海外」事業に期待

   キユーピーの事業セグメントは「市販用」「業務用」「海外」「フルーツ ソリューション」「ファインケミカル」「共通」の6つ。2021年11月期から区分けを市場視点で見直しました。

   「市販用」の内訳は、調味料、惣菜、カット野菜などで、「業務用」の内訳は調味料、タマゴなど。市販用の惣菜は調味料に迫る規模で、業務用の売上高の6割はタマゴが占めています。

   「フルーツ ソリューション」は、ジャム類やフルーツ加工品などを製造販売する子会社のアヲハタ(東証二部)によるもので、ヒアルロン酸などの「ファインケミカル」はキユーピーが、「共通」は食品製造機械を販売する芝製作所が担っています。

   2021年11月期の売上高構成比は「市販用」が42.4%と最も高く、次いで「業務用」が36.8%、「海外」が13.1%を占めています。「フルーツ ソリューション」は4.1%、「ファインケミカル」は2.2%です。

   セグメント利益構成比(除く全社費用)は「市販用」が50.8%と過半数を占め、「業務用」が18.6%、「海外」が21.3%、「フルーツ ソリューション」が2.1%、「ファインケミカル」が3.2%、「共通」が3.9%です。

   セグメント利益率は、「市販用」が9.95%、「業務用」が4.20%、「海外」が13.5%、「フルーツ ソリューション」が4.25%、「ファインケミカル」が12.3%、「共通」が24.0%。「業務用」と「フルーツ ソリューション」の低さが気になります。

   「海外」は高利益率を維持しながら売上高を増やしていければ、収益の柱に成長しそうです。

平均年齢41.2歳で平均年間給与613万円

   キユーピーの2021年11月期末の従業員数は、連結1万719人、単体2394人。連結従業員数は、2017年11月期の1万4924人から2020年11月の1万6003人へと右肩上がりに増加していましたが、前述のキユーソー流通システムが連結から外れたことで大幅に減りました。単体では前期比32人減と微減にとどまっています。

   キユーピーの平均年間給与(単体)は、2021年11月期は613万1534円で、前期から25万円余り増えています。平均年齢は41.2歳、平均勤続年数は16.0年です=下表参照。

   キユーピーの採用サイトは新卒採用向けで、「生産部門」「営業部門」「研究開発部門」が紹介されています。正社員の採用は「総合職コース」と、転居を伴う異動のない「地域職コース」に分かれているようです。

   転職サイトには、正社員の中途採用求人が1件あり、茨城・五霞工場でのファインケミカル事業の製造・品質管理でした。初年度の想定年収は300?350万円。年収例として30歳(入社8年目)で440万円というケースが例示されています。

「海外を成長ドライバー」の可能性と懸念

   キユーピーは「2030ビジョン」として、中国・東南アジアを中核に北米を強化した「海外を成長ドライバー」とする事業方針を明らかにしています。重点領域は「サラダ(調味料を含む)とタマゴ」。ROE(自己資本利益率)8%以上、営業利益率7.5%、海外売上伸長率 年率10%以上の目標も掲げています。

   2021年11月期は、流通子会社を連結から外して食品事業に集中し、事業セグメントを再編するなどにより事業戦略の明確化と推進強化を図ってきました。これまでプロダクトアウト的な色合いの濃かった組織も、マーケットの視点で再編していくようです。

   会社の課題に対して的確に手が打たれているという評価もできますが、一方で中国を中心とする海外市場に賭ける部分は、不透明な要素が残されているのかもしれません。

   なお、株価は2021年9月21日に2813円の年初来高値を記録しましたが、現在は2300円近辺を推移しています。(こたつ経営研究所)