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今夏のボーナス予測「プラス1.2%」...だが、物価高はそれ以上! とくに中小・零細業にトホホな結果

   

   ウクライナ情勢悪化に加え、「悪い円安」の進行による物価高......。経済情勢はお先真っ暗に見えるが、今夏のボーナスはいくら出るのだろうか?

   そんななか、シンクタンクの第一生命経済研究所が2022年4月8日、「2022年・夏のボーナス予測~前年比プラス1.2%と増加を予想も、物価上昇には追い付かず~」というリポートを発表した。

   昨年(2021年)冬のボーナスより上昇率はいいが、物価高がそれを上回るトホホな結果になりそうだという。

  • ボーナスが少し上がっても…
    ボーナスが少し上がっても…
  • ボーナスが少し上がっても…

春闘の一時金交渉では増額回答が目立ったが...

   調査をまとめたのは、同研究所シニアエグゼクティブエコノミストの新家義貴氏だ。

   新家氏はズバリ、「民間企業の2022年夏のボーナス支給額を前年比プラス1.2%と予想する」とした。主な根拠にしたのは、4月1日に発表された日本銀行の「全国企業短期経済観測調査」(日銀短観)で、こう続ける。

「21年冬のボーナスは前年比プラス0.1%とほぼ横ばいにとどまったが、夏のボーナスでは伸びが高まるだろう。背景にあるのは企業業績の改善である。21年度の経常利益は前年比プラス32.0%と、20年度の大幅な落ち込みから明確に持ち直している(日銀短観ベース)」
「一度引き上げると削減が難しい月例給与に比べて、ボーナスは業績に応じて比較的柔軟に変動させることが可能であるため、業績さえ良ければ経営側も引き上げへのハードルは高くない」

   実際、今年の春闘の一時金交渉では増額回答が目立った。ベースアップは、昨年に比べると改善したが、伸びは限定的なものにとどまったと思われる。しかし、「大手企業のボーナスは比較的はっきりとした増加が見込まれる」というのだ。

コスト増で収益悪化の中小企業はボーナスも伸び悩みか

   一方で、不安が残るのが中小・零細企業だ。新家氏はこう指摘する。

「中小・零細企業は組合組織率が低く、労使交渉自体が実施されないことが多い」「資源価格上昇の影響が足元で一段と強まりつつあることは懸念材料だ。中小企業ではコスト増を価格に十分転嫁することは容易ではなく、収益が圧迫される可能性が高いため、ボーナスの伸びも抑制されやすいだろう」

   大手企業を中心にボーナス増加が見込まれるのに、中小・零細企業を含めた全体としてみると大幅な増加は見込みがたい、というわけだ。

賃金の伸びが物価上昇に追い付かない?!
賃金の伸びが物価上昇に追い付かない?!

   そんななか、大きな懸念になっているのが生活必需品価格の上昇だ。新家氏は

「エネルギー価格の上昇に加え、足元では食料品価格の値上げが加速しており、22年度の物価上昇率は大きく高まることが予想される」

として、22年3月上旬時点でのエコノミストコンセンサス(民間エコノミストのアンケート調査)の「プラス1.51%」という数字をあげる。これは、新家氏が予想してみせた今夏のボーナス上昇率「プラス1.2%」より0.31%高い、ということになる。

   それだけに、新家氏はこう結ぶのだった。

「小幅とはいえベースアップが実現し、ボーナスも伸びが高まることで名目賃金については増加が見込まれるものの、それでも賃金の伸びは物価上昇に追い付かない可能性が高く、実質賃金でみればマイナスが予想される。コロナ禍からの持ち直しが期待されている個人消費だが、その期待が裏切られる可能性があることに注意したい」

(福田和郎)