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ウェブ3.0の最前線とは...東洋経済「テクノロジーの未来地図」、エコノミスト「世界エネルギー大戦」を特集

   「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパースンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする(※「週刊ダイヤモンド」は、先週が今週との合併号だったため、今週は休刊)。

  • 「テクノロジーの未来地図」を取り上げた(「週刊東洋経済」の特集から)
    「テクノロジーの未来地図」を取り上げた(「週刊東洋経済」の特集から)
  • 「テクノロジーの未来地図」を取り上げた(「週刊東洋経済」の特集から)

GAFAMの寡占体制を脅かす「WEB3.0」とは?

「週刊東洋経済」(2022年4月16日号)
「週刊東洋経済」(2022年4月16日号)

   4月11日(2022年)発売の「週刊東洋経済」(2022年4月16日号)の特集は、「GAFAMとWEB3.0で読み解く テクノロジーの未来地図」。GAFAMの寡占体制を脅かす「WEB3.0」とは何だろう?

   インターネットの歴史は、ホームページや電子メールを中心としたウェブ1.0、SNSや検索、EC(電子商取引)を中心としたウェブ2.0と進んできた。そして今、GAFAMがデータやユーザーを囲い込みすぎているとして、中央集権型から分散型への移行を目指すのがウェブ3.0だ。

   前提となるのが、分散型台帳であるブロックチェーン。そのうえに、トークン(暗号資産の呼称)やNFT(非代替性トークン)が発行される。

   ウェブ3.0は今、投資マネーの巨大な集積地になっているという。ブロックチェーン関連のスタートアップによる資金調達額は2021年に前年比約8倍の252億ドルとなった。

   デジタルデータに価値をつけることを可能にしたNFTに、多くの企業が群がっている様子をリポートしている。米国発のブロックチェーンゲーム「ザ・サンドボックス」の空間には約1万6000の区画に分かれた「ランド」と呼ばれるNFTの土地がある。ここに、建物などを自由につくれる。

   この空間の可能性に注目したのが、大手音楽レーベルのエイベックスだ。傘下のエイベックス・テクノロジーズが3月、サンドボックス上の6×6区画の土地を取得。年内にも「エイベックスランド(仮称)」という拠点をつくり、配信ライブやファンイベントを開くという。

   土地の取得に合わせ、土地と所属アーティストをアイコン化したNFTアイテムと、初回イベントのチケットをセットにして110組に販売し、総額1.7億円が1時間ほどで完売した。

   ウェブ3.0のインパクトについて、千葉工業大学変革センター長の伊藤穣一氏は以下のように語っている。

「今までのウェブ2.0のプレーヤーは、ユーザーの個人情報を使ってビジネスを拡張していたが、ブロックチェーンが主体になればユーザーは大手のサービスに依存せず、自分でデータを管理できる。アプリケーションからブロックチェーン、つまりプロトコル(情報をやり取りするための規格やインフラ)に力の源泉が移ることで、ユーザーの囲い込みがしづらくなる」

   その一方で、NFTは数千万円で取り引きされるものもあり、アート市場のお金持ちが流れてきていて、誰もが参加権を得られるウェブ3.0の概念とは遠くなっている、と懸念している。

   ウェブ3.0をめぐっては、ルールが未整備な面も多いようだ。法人が保有するトークンの期末課税の問題がその一つだ。含み益に対して法人税が課されるため、トークンの発行を前提に起業するスタートアップは、日本でビジネスを行うことができず、シンガポールなどに流出しているという。

   もう一つが、ウェブ3.0企業に対する投資の規制だ。日本ではLPS法(投資事業有限責任組合契約に関する法律)によって、ベンチャーキャピタルなどの投資事業有限責任組合が投資できる対象は株式などに限られる。

   ウェブ3.0ではトークンによる出資や資金調達が当たり前だが、日本のベンチャーキャピタルや投資機関家はそれに参加できない。自民党のプロジェクトチームが改革案をまとめたが、日本には暗号資産が流出した「コインチェック事件」のトラウマがあり、ウェブ3.0の波に乗り切れないようだ。

   ウェブ2.0までは多くの人がついてきたが、ウェブ3.0になると、相当な勉強も必要なようだ。ゲームなど大衆化へのフックはありそうだが、「メタバース(仮想空間)」というプラットフォームもあり、両者の綱引きが始まるかもしれない。

ウクライナ侵攻が電力ひっ迫の日本に追い討ち

「週刊エコノミスト」(2022年4月12日号)
「週刊エコノミスト」(2022年4月12日号)

   「週刊エコノミスト」(2022年4月12日号)の特集は、「世界エネルギー大戦」。ロシアによるウクライナ侵攻が電力ひっ迫の日本に追い討ちをかけている。

   福島県沖で2022年3月16日に起きた最大震度6強の地震は、日本のエネルギー危機が現実になろうとした瞬間だった、と同誌は指摘している。

   東京電力管内に送電する火力発電所が停止したことで、首都圏を中心に電力供給がひっ迫。他の電力会社から融通を受けるなどして、何とかブラックアウト(大停電)を乗り切った。

   日本の電源構成で、LNG(液化天然ガス)は37%まで増加している。日本はロシア極東のサハリン州で石油・ガス開発事業「サハリン2」に参画し、LNGを日本に輸出している。サハリン2からの撤退はしない方向だが、ロシア産LNGの輸入が難しくなれば、日本のエネルギー危機はより深刻になる。

   ロシアのウクライナ侵攻は、エネルギー戦争だけではなく、通貨戦争の様相も呈しているという。ロシアへの経済制裁への対抗策として、米欧日などの「非友好国」への債務の返済にルーブル建てを認めたことなどを契機に、ルーブルは反発。4月に入って、侵攻前の水準まで戻している。

   中東各国が対露経済制裁に前向きでない現状から、米ドルの影響力低下を指摘する専門家もいる。今後、米ドルに依存しない新たな経済圏が生じる可能性もあり、世界経済は歴史的な転換点にあるかもしれないというのだ。

   では、日本のエネルギー戦略は、どうあるべきなのか――。国際大学副学長の橘川武郎氏は「短・中期は石炭火力を再評価。長期でガス田開発に取り組め」と提言している。

   原子力については、長期的にはその存続を含めてあらためて真剣に議論すべき時が来た、としている。ロシアは今回、ウクライナの原子力施設に関して、軍事的な攻撃対象とした。軍事標的になるというまったく新しいタイプのリスクが顕在したのだ。

「原子炉建屋を狙ったミサイル攻撃を防ぎきれるのか。たとえ、自衛隊を原発に配置したとしても、周辺の送電設備まで守りきれるのか。これらの点について、改めて検討し直す必要がある」

と、橘川氏は書いている。

   熱効率が高く、二酸化炭素排出量が相対的に少ない超々臨海圧の石炭火力発電所の新設工事が、4カ所で2024年には完了する予定だ。短・中期的には、それらが電力の安定供給に貢献するという。

   だが、長期的には、石炭火力そのものを停止しなければならない。そこで、アンモニア火力への転換が必要だ、としている。

   石炭火力発電所の既存設備を使いつつ、燃料の石炭にアンモニアを混ぜ、徐々にアンモニアの比率を高めていく。やがては、アンモニアだけとなり、二酸化炭素の排出量をゼロにするものだ。エネルギー政策を根本的に見直す必要に迫られている、と問題提起している。

※※※

   同誌のもうひとつの特集が「マンション管理新時代」。マンション管理のあり方を大きく変える2つの制度が4月から始まったという。

   改正マンション管理適正化法が施行され、全国の自治体が分譲マンションに対し、管理状況を助言・指導したり、是正を勧告したりすることができるようになった。「アメ」と「ムチ」が用意された。

   「アメ」になるのが「管理計画認定制度」だ。管理組合の運営や長期修繕計画など17項目で合格すれば、管理が適正なマンションだと「認定」され、さまざまな優遇制度が設けられる。住宅金融支援機構は「フラット35」で認定マンションを購入する場合、ローン金利を当初5年間、0.25%引き下げる制度を始めた。

   一方の「ムチ」となるのが、自治体の助言や指導・勧告の制度だ。現時点で強制力はないが、行政が関与できる道を開いた意義は大きいという。

   その先に、老朽マンションの建て替え問題がある、と専門家は指摘している。一連の法改正の真の狙いは「マンション版の空き家対策特措法への環境整備ではないか」というのだ。マンションを所有することの責任が問われる時代になりそうだ。

(渡辺淳悦)